今日は、最近では個性の強いピアニストに属するエフゲニー・ザラフィアンツのCDを聴いてみた。
曲はバッハの平均律だけど、今回の企画は日頃どちらかというと日陰に見られている「プレリュード」に光を当て、「第1集」「第2集」の同じ調の2曲のプレリュードを対にして演奏してみる、というもの。全部演奏するとつまり計24組ということになるのだが、今回選ばれたのは12組。つまり、半分というわけです。
で、それをこの人のいつものようにかなり遅いテンポでロマンティックに演奏するのだが、まだ1,2度聴いただけだけど、予想していたよりはかなり面白く聴けたという感じ。
それに、こういう新奇なことはただやってくれるだけでも有難いんだけど、聴き手にプレリュードについていろいろと考える契機を作ってくれるという意味でも価値があると思う。実際、平均律は昔から興味の対象だけど、プレリュードとフーガではむしろプレリュードのほうがはるかに謎だといつも感じている。
フーガの場合はある程度構造に制約があるので「こういうものだ」と思いながら聴けるけど、プレリュードの場合は、目の前の1曲1曲は特に分かりにくくはないが、24もしくは48のプレリュードを全体としてどうまとめて捉えればいいのか、それぞれの曲はどこから来たのだろうかと考えると、ホントに脈絡がなさすぎるというか、ハタと困ってしまう。
CDのリーフレットでザラフィアンツ自身もバッハの平均律のプレリュードは唯一無二で、他のどんな作品にも似ていないという旨のことを書いているが、言われてみると、たしかにそんな気もしてしまうほど。
・・・とまあ、今日はそんなことを考えながら聴いていた。で、もうひとつ余談なんだけど、こうして2曲続けてプレリュードを演奏した後で、オリジナルなフーガを後ろに続けてみたら面白いかも、とも考えた。たとえバッハの作ったプレリュードとフーガの結合が強固であるとしても、違う組み合わせを試みてみることで、また新たな発見があるかもしれないと思うのだが。