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On a bench ブログ

ようこそ、当ブログへ。ジローと申します。
 毎日毎日、たくさんのCDやLPを聴いて過ごしております。

Meeting: Two Worlds of Modal Music

2018年02月14日 | (旧HP記事)インド音楽
Meeting
 
Harmonia Mundi Fr.

 タイトルは西洋古楽とインド音楽という2つのモード音楽の出会い、という意味だと思う。

 具体的には、クラシック古楽のアンサンブル、アンサンブル・ジル・バンショワ(Ensemble Gilles Binchois)を率い、自身もきれいなテノールで歌うドミニク・ヴェラール(Dominique Vellard)とアリ・アクバル・カーンの弟子らしい白人(だと思う)のインド楽器サロッド奏者ケン・ズッカーマン(Ken Zuckerman)が共演したCDで、まあはっきりって恐らくレアすぎて誰もあまり興味がないかもしれないけど、ぼくにとっては「ドンピシャ!」という1枚です(笑)。

 で、内容としては、ヨーロッパの教会旋法をいくつか取り上げ(ドリア旋法、イオニア旋法、リディア旋法、フリギア旋法の4つ)、そこでヴェラールが中世の歌などを歌い、次にケン・ズッカーマンがその旋法にちょうど当てはまる音階を持つラーガや即興を演奏し、またヴェラールが歌う、というようなことを交互に行うんだけど、それぞれに演奏が清らかに美しいので、つい何回も聴いてしまいます。

 ついでにいうと、ヴェラールの歌の部分ではズッカーマンがリュート(!)やサロッドで伴奏をしていている(それぞれが別々のことをやっているのではなく、ちゃんと共演している)し、ほかにインド音楽のタブラ(太鼓)がいるのは当然として、ペルシャの太鼓ザルブの奏者が参加していて、その乾いた音がなかなか心地よい。 まあ、インド音楽をやっている部分はさすがにヴェラールが入るわけにはいかず、普通といえば普通なんだけど、ヴェラールが歌をやって、そこから途切れずにサロッドの即興に部分に移行するところなどはホントに新鮮な感じだし、特にリディア旋法のところでのジュアン・ド・レスキュレルの曲が美しくて素晴らしい。

 教会旋法とラーガを重ね合わせるとい着眼もたしかに面白いけど、そんな難しいこと抜きにしてただ聴くだけでも、かなり癒しの効果の高いCDだと思います。(2009.11.09)

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(洋書)Raga Guide: A Survey of 74 Hindustani Ragas (英・ニンバス)

2018年02月14日 | (旧HP記事)インド音楽
The Raga Guide: A Survey of 74 Hindustani Ragas
 
Nimbus

 これ、「CD4枚」付きで本とCDとどっちがメインなのか多少まぎらわしいんだけど、やはりこれは「本」。う~ん、もしかしたら本をこのHPでメインで紹介するのは、今回が初めてかも(笑)。

 で、どういう本かというと、それは読んで字のごとく「ラーガのガイド」。具体的にはインド音楽(正確には北インド古典音楽)の主要なラーガを74種類ピックアップし、それぞれ見開き2ページにわたって概説、音階、メロディー・ライン、付属CDの演奏の五線譜による譜例(抜粋)という順で紹介しております。

 インド音楽は、実は民族音楽の中でもぼくにとって思い入れがかなり強い分野。きっかけはもちろん大学の小島美子先生の授業で、すぐに興味をひかれてしばらく分からないなりに聴き始めたんだけど、しかし数年たつうちに徐々に熱が冷めてきて、ついには一度挫折したことがあるのです。そしてその一番の原因は、やはり何といってもそれぞれの「ラーガ」の区別がつかなかったから。

インド音楽っていうのは雰囲気だけでも非常に独特で魅力があるし、他にも色々と面白い要素が多くて、しばらくは「ラーガ」なんて分からなくても楽しめるんだけど、日本で容易に録音が入手できる巨匠たちなんて数が知れているし、その巨匠たちというのははっきり言ってしまうと良くも悪くもスタイルが確立されているから、どういう曲を演奏しているのか分からないと、そのうちどれも同じ演奏(多少メロディーが違うだけ)に聴こえてきてしまう。

 で、これではマズイと思って自分で探求しようにも、CDの解説はいつも短すぎて要領を得ないし、インド音楽の本なんてほとんど出てないし、あっても概説みたいなカタい内容だったりしてCDを聴く際の参考には直結してくれない。とまあ、そうこうするうちに打開策も見出せないまま徐々に興味を失ってしまって、しばらくの間はほとんど忘れかけた時期があったのです(6~7年くらいかな)。

 てなわけで、現在はぼくにとってインド音楽の「第2期」(笑)なわけだけど、そこでついに見つけたのがこの本。「ラーガはこの本さえあれば・・・」なんて大きなことはとても言えないわけですが、これまでぼくが出会った中で「一番マシ」なことは確かです。

 そしてこの本の最大の長所といえば、それはいうまでもなく「付属CD」。「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、やはり音楽に関しては「百読は一聴にしかず」ともいうべきか、一曲あたり数分といえども実際の演奏例が聴けるのが本当に有難い。

 インド音楽というのは、とにかく日本(だけではないけど)では「レア」なので、有名なラーガでもなかなか違う演奏で聴き比べるということができない。それがこの本に載っているラーガだと(ぼくの感じだと、実際にCDを買って来てそこで演奏されているラーガがこの本に載っている確率は半分程度)、最低限の解説と演奏例が分かるので、それをふまえて手持ちのCDやレコードの演奏をある種「客観的」に味わうことができる。そうして、同じラーガを何種類の音源で聴き比べることを繰り返すことによって、演奏家の個性もやっと分かってくる(ものだと思う)。

 とにかく、この本が「ある」と「ない」とでは全然聴き方がちがってくる。できるなら、20代のインド音楽「第1期」にこういう本があってほしかった(まだ発行されてもいなかったし、海外から取り寄せることも容易でなかったと思うけど)。 それにしても、インド音楽の「壁」というのは本当に厚い!「ラーガ」というのはホントに魅力的な音楽の構成で、しっかりと理解されれば今後の世界の音楽の行方にも大きな影響を与える潜在性を秘めているとひそかに思うのだが、インド人のほうでも、それを受け取るぼくたち外国人のほうでも、いまだにその「伝達」に成功していない。

 かつてのラヴィ・シャンカルなどによる一時的ブームも、結局「未消化」なまま「フュージョン」などで中途半端に使われたまま消えてしまったと見える状態に思えるし、現在、ヨーロッパのイギリスやドイツでちゃんとしたレーベルが活動しているのは素晴らしいことだけど、この先「ラーガ」が再び脚光を浴びる日を目にすることが、果たしてできるのだろうか。

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Ali Akbar Khan , Dr. L Subramaniam , John Handy :RAINBOW

2018年02月14日 | (旧HP記事)インド音楽
Rainbow
 
MPS

 サロッドのアリ・アクバル・カーンとヴァイオリンのL.スブラマニアム、それにジャズのサックス奏者ジョン・ハンディという顔ぶれによる、「レインボー」という名のアルバムです(こういうの、ホントはフュージョンと分類すべきなのでしょうが、これはかなりインドの要素が強いので、とりあえずここでご紹介)。

 ラヴィ・シャンカルの世界的な成功以来、インド音楽の巨匠たちというのはけっこう色んなところに顔を出していて、このような他ジャンルのアーティストとの共演盤というのもちょこちょこ目にするわけですが、しかしぼくが聴いた限り、よかったと思うものはあまりない。

 で、このLPも見つけたときにかなり激安だったにも関わらず、アリ・アクバル・カーンという名前でかろうじて拾ったという感じで、しばらくは家で眠ったままだったのです。

 ところが、これがいざ聴いてみると、抜群に面白かった。演奏スタイルは軽めのインド音楽といった感じで、タンプーラが鳴っている中にサロッドとヴァイオリン、それにタブラ伴奏ありと、実はインド音楽で普段目にしないのはジョン・ハンディのサックスだけという構成(ヴァイオリンはインドでもよく使われる楽器)。

 実は、アリ・アクバル・カーンとジョン・ハンディはもともと共演済みで、今回それに L.スブラマニアムが加わってこのようなユニットになったらしいのですが、アリ・アクバル・カーンもL.スブラマニアムも欧米経験が長いうえにジョン・ハンディもインドの音楽がよく分かっていると見えて、演奏にまったく違和感がない。それ以上に、サックスがこんなにインド音楽と合っていいのかと思うほど、よく合っている。

 それに、もうひとつ新鮮だったのは各曲のテーマ部分などでそれぞれの楽器がちょこちょことハモっていることで、これは基本的に和声という概念がないインド音楽では、複数の楽器でラーガを演奏する場合でもふだんほとんど見られないところ。で、そのテーマ旋律もなぜかかなりいい。・・・ということで、これには、かなり予想外にハマってしまったのです。

 ちなみに、ジョン・ハンディという人は、チャールズ・ミンガスのユニットで活躍していた人らしく、ぼくなんかは結果的にミンガスのディスクで何回か知らずに聴いていただけなんですが、今、ちょっと気になっている人のひとり。インド音楽の要素を取り入れたリーダー作なんかがないのかしらん。(2007.04.12)

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Himangshu Biswas & Dulal Roy : JUGALBANDI FLUTE & JALTARANG (EMI CD NF 150153)

2018年02月08日 | (旧HP記事)インド音楽

(曲目:Raga Durga , Raga Bhupal Todi , Dhun)

 その日、中古店でこのCDを見つけた時のぼくの顔のニヤけ具合というのは、ホントにただ事じゃなかったのではないかと思うのです。

 これは、「バンスリ」と「ジャルタラング」という2つの楽器によるジュカルバンディ(デュオ演奏)のディスクで、バンスリ(竹製の横笛)のほうはインド音楽ではすごくメジャーな楽器なんだけど、もう一つの「ジャルタラング」なる楽器については、この時までまったく存在を知らなかった。

 しかし、店でCDのジャケットを一瞥しただけで(実は「ジャルタラング」の奏者(DULAL ROY)の右半分は値札で隠れていて見えなかったんだけど)何が行われているかはあまりにも明らかで、これは何があろうと絶対に逃してはならないと、即座にレジに向かったわけです。

 で、その「ジャルタラング」とは何かと言えば、実は水を張ったたくさんの茶碗を自分の周りに半円に並べて棒で叩くという、恐るべき「根源的」な楽器。こんなこと、誰でも子供の頃に一度はやったことがあるはずで、つまり「箸の国」で育ったぼくたち日本人は、ある意味、ほとんど全員が「経験者」ともいえるような楽器なわけです(ついでにいうと、ステファン・ミカスの植木鉢も、これとまったく同じ発想)。

 で、驚いたのは、ネットで調べてみると、このジャルタラングというのが、実は「インド最古の楽器」だという文章が出てきてしまったのです。

 実はそれまで、ぼくが最古の楽器だと思っていたのは、同じインド音楽にも使われるサントゥールという楽器でした。これは、平たい箱のような胴体の上にたくさん弦を張って小さなバチで叩くという、似たような楽器が世界中に広がっていて、ピアノのもとになったとも言われる楽器なんだけど、これが「リグ・ヴェーダ」にも載っている(文献で確認できるものとしては)世界最古の楽器なのだという説明を、インド音楽の本などで読んだ覚えがあったのです。

 しかし、このジャルタラングは、言われてみるとサントゥールよりも一層単純で、どちらかといえばこちらのほうが古そうに思える。で、あるHPにはこのジャルタラングがサントゥールの祖先だとする説があるというようなことも書かれていて、ということは、ピアノの起源というのは茶碗を箸で叩くという行為にまでさかのぼることになるのかという、もともとピアノ界の住人であるぼくにとっては、何か心穏やかではいられない推論までが導かれてしまったのでした。

 で、このCDのジャルタラング、音色も非常にチャリリンとしておもちゃのような邪念のないかわいさがあり(使う茶碗によって、当然ちがってくると思うけど)、ちょっとした早弾きのワザもほほえましく(なにしろ茶碗を棒で叩いているだけだし)、バンスリともよく合っていて、演奏としてもすごくいい。

 ・・・それにしても、まさか茶碗でラーガを聴くなんて、夢にも思わなかったなあ。(2007.8.25)


(追記)

 うぉお~! これは一体何ナンだ~! 先日(2008年夏)、こんなLPを見つけてしまったのですよ~! 

 ズバリ、上のCDとまったく同じ内容。写真も、背景は差し替えていますが人物の部分は明らかに使い回しです。CDには「C&P 1995」としか書いてないから、まさかこんな古い録音だとは思わなかった。

 まあ、日本中探したってこんなレコードにうれしがるような人間はほとんどいないだろうけど、しっかし、まさかこんなモノに出くわしてしまうとは・・・! しかもこれが目の前に現れたのが、某レコファンの「ジャズ・コーナー」というんだから、これは「何かの因縁」というか、むしろ「向こうからわざわざぼくのところにやって来たんじゃないか?」という考えさえ頭をよぎってしまう。

 いやあ、ホントにビックリしてしまいました。しかもこのLP、裏面の左上に『EXPO’70』『万国博記念直輸入限定盤』なる手書きの紙切れが貼ってあって、これがなぜ日本にやってきたのかという理由が分かってしまう。そして、「インド館(でいいのか?)」では、やっぱりこんなインド音楽のレコードが流れていたり、売られたりしていたんでしょうか。いやあ、ちょっと興味をそそられます。

 このLP、中古としてはちょっと高かったし、日頃CDとLPをダブって買うことなんてまずしないんだけど、しかしこれだけは迷わず買っちゃいました。いやあ~、こんなこともあるんだなあ。

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Kartik Seshadri:Raga Bilaskhani Todi

2018年02月08日 | (旧HP記事)インド音楽
Raga Rasa-That Which Colors the Mind
 
Trad. Crossroads

 これはシタール奏者カルティク・セシャドリによる2枚組のCDですが、今回はその中からラーガ、ビラースカーニー・トーディーをご紹介。

 Todiというラーガのグループの解説にはよく heroic という言葉が出てくるけど、これもそういう雰囲気を感じる演奏。その中でもこの Bilaskhani Todi は悲壮感みたいなものがあって、すごく印象に残ります。

 音階的にはミとラとシに♭がついて基本的に短調なんだけど、ついでにレにも♭がついているのが非常に特徴的で、メロディー上昇時には「ドレ(♭)ミ(♭)ソ」とファが抜けるのに、下降時には「ラ(♭)ファミ(♭)」と今度はソが抜けたりするのも面白い。

 でも、こういう雰囲気のラーガが早朝のラーガというのがまだよく分からない。そんな朝っぱらから、人はシリアスになれるのだろうか(単にぼくが夜型なだけなのか?(笑))。

 でもまあ、これはとにかくカッコよくてお気に入りの演奏です。(2009.12.15)

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Nikhil Banerjee:Raga Jogiya Kalingada

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽
Le Sitar Du Pandit
 
Sonodisc

 で、こちらがバネルジーの録音。

 20代の頃、インド音楽を聴き始めに出会っていたもので、たぶんバネルジーを最初に聴いた盤でもあったと思います(この人は「ベナルジー」と表記されることも多くて、当時ぼくはそっちで覚えていた)。当時はまだインド音楽の何もかもが五里霧中で(今も大して変わってないとも言える)、後半のガットがカッコいいのが気に入っていただけだけど、今聴くと明らかにすでにバネルジー節が全開(当たり前か)。

 それにこの演奏は、その後何度も聴くうちにアーラープの段階で徐々に後のガットの主題の材料が形作られていくのがよく分かってきて、おおっ、こういうことなのかとひとりで合点したりもしました。そしてやっぱり後半のガット。「ラ(♭)~ラ(♭)ソファミレ(♭)ド」と単に下降するだけのシンプルなセンテンスが非常に特徴的で、盛り上がりもすごくあって今でももちろんカッコいい。

 ちなみに、ぼくが持っているLPは同じような図柄のジャケットのフランス発売のシリーズものでした。(2009.07.18)

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Ustad Ali Akbar Khan:Raga Jogiya Kalingra

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽
Signature Series 1
 
Ammp Records

 サロッドの巨匠アリ・アクバル・カーンによる上のCDの中から、Jogiya Kalingra というラーガの演奏を。

 このラーガは同じバイラヴ・タートに属する Jogiya と Kalingra という2つのラーガを結合させて作ったということだけど、西洋音階で言うレ(♭)とラ(♭)の二つのフラットが効いていて、なかなかカッコいい。一応夜明けのラーガということだけど、ただ後半ガットで盛り上がってくると時刻なんてあまり関係なくなるのではないか、とも思ってしまいます(笑)。

 しかし、これはラーガとしてはかなりマイナー。とにかくぼくの知っている限りアリ・アクバル・カーンとニキル・バネルジーの録音しか見たことがない。ていうか、とあるネット情報によると、これはアリ・アクバル・カーンが作曲したなんて書いてあるページがある。まあ、そうすると同門の2人しか演奏がなく、その2人がやっているばかりにこうして日の目を見ている、ということも説明がつくわけだけど。

 ちなみにこれ、国内LP時代は「インド宇宙瞑想 歓喜~朝の瞑想」という2枚組に含まれていたものと同一音源だと思う。まだ中古屋でたまに見かけるけど、今じゃけっこう高めの値段がついている。インド音楽を知っている店員なんてそうはいないはずだけど、どこかのネット市場で高めの値段がついていると、つられて高めにつけてしまう、という感じなんだろうか?(2009.07.03)

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ラーガ:チャンドラカウンス(アーラープのみ)/ニキル・バネルジー

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽
Chandrakaush Khamaj 1967
 
Raga

 巨匠バネルジーによる、「ラーガ・チャンドラカウンス(=Chandrakauns。このCDではChandrakaushと表記されている)」という深夜のラーガの演奏です。

  この「チャンドラカウンス」、音階的には、



 という感じなんだけど、「ファ」が主音(ヴァーディ)なので、まあはっきりいうと誰の演奏でも「5音音階のヘ短調」みたいな印象になるのでありますね。

 で、実はこれ、「マールカウンス」というこちらも有名なラーガと非常に似ているわけですが、「マールカウンス」の場合は「シ」にもフラットがついて「より一層普通のヘ短調っぽい」のに対して、「チャンドラカウンス」は「シ」にフラットがつかない、つまり普通の短音階の第4音が半音高いわけで、これが非常に効果があるというか、ロマンティックもしくは官能的な雰囲気というものを濃厚に醸し出している(とぼくは感じる)のです。


 で、この「たった1音」だけで、この2つのラーガの印象というのがすごく違ってきてしまうのが面白い(「チャンドラ」には「月」という意味があるらしい)。

  

 ↑(ヘ短調にたとえた「マールカウンス」。「シ」にフラットがついているので普通の短調っぽい)。


 で、手持ちの「チャンドラカウンス」の音源の中で最近よく聴くのが、このバネルジー盤。この人、もともとあまり愛想がないというか、けっこう突き放したような発言もする人だったので実は昔はあまり好きじゃなかったんだけど、最近気づいてみればだんだんよく聴くようになってしまった。

 今回の演奏も「アーラープ」のみ(約20分)なので、ふつうにガットを含めて聴きたいという意味からするとちょっと不満にも思うところなんだけど、しかし聴き始めるといつもまにか浸ってしまって定番になりつつある。う~む、こんな感じで結局感化されていって、5年後10年後にはもっと好きになっているのかなあ(笑)。

 (* ちなみに、このCDの後半は「ラーガ・カマージ」のガット中心の演奏が収録されています)。(2008.12.23)

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ラーガ:スハ・カナラ/モニラル・ナグ

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽
シタールの芸術~モニラル・ナグ、マハプルシュ・ミシュラ
 
キングレコード

 あれれ、このCD、もとは『シタール幻想~超絶のラーガ』『シタール幻想~真美のラーガ』っていうタイトルで別々のCDだったのに、いつの間にか2枚組に合体しちゃったみたいだ。

 まあ、どちらも好きな盤だし値段も安いからそれでもいいんだけど、今回は1枚目のメインであるラーガ、スハ・カナラのみをご紹介。これ、日本での録音なので知っている方も多いかと思いますが、ぼくも昔からすごく好きだった演奏です。

 スハ・カナラ(スハ・カナダ)というラーガは、「♪ミファレド」のように旋律が下降するときに音がジグザグ進行するのが大きな特徴の非常に印象に残りやすい(かっこいい)ラーガでかなり聴きやすい部類に入ると思うし、一方、そのスハ・カナラを奏でるモニラル・ナグのシタールも非常につややかな音色でしっかりと腰が据わったスタイルの中にもけっこう華があり、またここでのスハ・カラナはすごく疾走感を感じさせる演奏で、ホントに素晴らしい。演奏時間も十分な長さがあるし、インド音楽の聴き始めにまずは1度ちゃんとラーガというものを聴いてみたい、というような方にもかなりオススメだと思います。

 ただ、素晴らしいのはたしかに事実なのですが、そこから一歩先に進もうとするとモニラル・ナグという人も、スハ・カナラというラーガもいま一つマイナーでよく分からずに困ってしまうという、ある意味ちょっとやっかいな盤でもあります。

 まずもって、「スハ・カナラ(suha kanada)」というラーガがいま一つ分からない。「カナラ」というのは「カナダ」ともいい(英語表記は「karnara」や「kanada」など) 、いつもほかのラーガにくっついて(「darbari kanada」や「kaunsi kanada」など)旋律に「♪ミファレド」みたいな属性を加えるんだけど、この「スハ・カナラ」は中でもけっこうマイナーでCDも少ないし、「スハ」という単独のラーガも見当たらないので、どういう性格のラーガなのかがいま一つ分からない。

 っていうか、そもそもこれは日本盤なんだからそこらへんの解説も最初からぜひつけておいてほしい。インド音楽の情報がほしい人というのは、まずもって解説こそが頼りなんだから。それからモニラル・ナグも、なかなかCDが少なくて手に入らん。ぼくは昔この盤を聴いてすぐにファンになったのに、あちこちのサイトで調べてみてもちょっとしかディスクが出てこない。あまり録音が好きじゃなかったり、出身の流派がややマイナーだったりするせいなのだろうか(ただの推測だけど)。

 ・・・というわけで、この盤のことを考えるといつもこんな感じにストレスが溜まってしまうんだけど、聴き始めるとやっぱりカッコよくていつのまにか引き込まれてしまっている。モニラル・ナグももうだいぶ歳なはずだけど多分まだ現役だと思うから、だれか1度また日本に呼ぶなりして(別に日本でなくてもいいけど)録音を採り溜めしておいてくれないかなあ。(2008.12.11) 

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R. Fahimuddin Dagar : RAGA MARWA ("MASTERS OF RAGA")

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽
Masters of Raga
 
Wergo

 で、こちらが最近ハマっているもうひとつの「マールワー」。

 「ドゥルパド」(声楽)です。「ドゥルパド」っていうとやっぱり出てくるのが「ダーガル・ファミリー」なんだけど、この Fahimuddin 氏は有名な「ダーガル・ブラザーズ」より大分マイナー(というか、普段あまり前面に出てこない人らしい)で、録音もすごく少ないみたいです。

 ・・・しかし、その珍しい録音がなぜかマールワーで、しかもぼくがマールワーにハマっている時に出会ってしまうとは、まさに奇遇。これも「縁」といえば「縁」でしょうか?

 しかしそれはともかく・・・、実をいうとですね、ぼくが曲がりなりにもこうして「インド声楽」が聴けるようになったのは、ホントに近年のこと。そりゃぼくだって、インド音楽の基本は「声楽」だという知識くらいは昔からありました。しかしどうしたって、とっつきにくいものはとっつきにくい。で、過去に何度もムリをしてみたけど、どうしても入っていけなかった。インド声楽の壁は実に厚かった!

 それがここにきて、いつのまにか普通に耳に入るようになってきたんだけど、そうして聴いていくうちに、それどころか、ある種とろけるような「甘味」を伴うような感覚まで芽生えてきてしまった。う~む、一体ぼくの中でどんなスイッチが入ったのか? ということで、この Fahimuddin 氏のマールワーにも、現在陶酔しまくっております(笑)。

 (なお、この Fahimuddin 氏、今回の第一印象では「糖度」はそれほどでなくとも、昔ながらの本来の味を残す規範的なタイプというような感じでしょうか)。(2008.04.04)

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BRIJ NARAYAN : Raga Marwa / Misra Desh (PYRAMID 13495)

2018年01月31日 | (旧HP記事)インド音楽

 何だか、上のプラサンナ兄弟の盤を紹介してから、最近やけに「ラーガ・マールワー」づいているのですよ(笑)。

 「マールワー」は、もともと超有名ラーガだからインド音楽のディスクを買っているうちに自然と増えてくるのももっともなんだけど、それがここ最近、それほどメジャーじゃない演奏家を偶然見つけて、それがなぜか「マールワー」ということが3度くらい続いてしまったので、ちょっと自分でもびっくりしてしまった。

 しかも、そのうちの2つが気に入って今すごく稼動しているのだからスゴい。いや、もうこのところ、ホントに「マールワー」が熱い! のです(笑)。

 で、このCD。「PYRAMID」なんてレーベルも「ブリジ・ナラヤン」というサロッド奏者も知らなかったけど、有名なサーランギ奏者のナム・ナラヤンの息子だそうで、向こうではやはり有名なんでしょうね。  それにタブラはザキール・フセインだし、弾き方も何だか似ているなあと思ったら、解説の中にやっぱりありましたよ「アリ・アクバル・カーン」の文字。

 まあ、この録音(1987年)は35歳くらいで音楽の熟成ということでいえばきっとまだまだなんだろうけど、サロッドといえば日頃アリ・アクバル・カーンやアムジャッドばかりで「う~ん、いつもどおりって感じだなあ」ってことも多いので、この「まったり感」があまりなく(やや)ストレート・アヘッドな印象の演奏はすごく新鮮。

 テクニックもあるし、後半のガットの盛り上がりもいい! いや、またひとり気になる演奏家が増えてしまいました。(2008.03.27)

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プラサンナ兄弟:バンスリ夢幻~ラジャスターンの横笛(ラーガ・マールワー)

2018年01月16日 | (旧HP記事)インド音楽
バンスリ夢幻~ラジャスターンの横笛
ラジャンドラ・プラサンナ,オンカー・ナス,アジャイ・プラサンナ,ラタン・プラサンナ
ビクターエンタテインメント

 これは、けっこう昔に出たCDなんだけど、その当時からずっと大好きな1枚。

 もうとにかくですね、2曲目のメインのマールワーというラーガの演奏が、ホントに素晴らしいのです!! これまでインド音楽というものを、まったくの門外漢ながらけっこう長く聴いてきた中でも、これは最も気に入っている演奏の一つ。で、おそらくこれからもずっとそうだと思います。

 ただ、ここでこの演奏がどう素晴らしいのかを伝えたいと思っても、ズブの素人のぼくには、すごく難しい(というより不可能)。だけど、単に「素晴らしい」といっているだけではあまりにも芸がないので、なんとか少しでもムダな抵抗をしてみたい、と思ってしまうわけです。

 で、この「マールワー」、夕暮れ時に演奏されるラーガなのですが、ラーガにはそれぞれ独自の音階があって、つまりひとつのラーガの中で使う音と使わない音というのが決まっている。 例えばこの「マールワー」というラーガでいうと、

 となる。で、この音の中でも「主音」というのがあって、マールワーの場合、それが「ラ」なので、この演奏も含めて、多くの演奏では「イ調」的に聞こえるのですが、このマールワーですごく面白いのは「レ」の音がフラットであることで、つまり、この音が「#ド」のように聞こえてしまう。

 しかも、「ファ」にもシャープがついているうえ、このラーガは例えば下のように「ド」を飛ばすフレーズが多用されるので、

 と、基本的に「イ長調」みたいに聞こえたりするわけです。ところが一方で、一連のフレーズの最後のほうでは、

 などと、インド音楽ではいつも大切な音である「ド」で終わることが多く、そこでは当然短調っぽく聴こえてくるのですが、しかしそこには、「ド」に調弦されているタンプーラとタブラが背後で終始響いているので、なんだか「ハ調」っぽい雰囲気も同居して、それが独特の浮遊感、というか陶酔感を生み出しているのです!(と、ぼくは思うのです・・・)。

 このマールワー、すごくメジャーなラーガで、ほかの演奏家でもいくつも手持ちの音源があるのですが、このように独特の雰囲気を濃厚に感じるのは、このプラサンナの演奏だけ。

 この演奏、兄弟でのデュエット演奏というのがまず珍しいし、バンスリというと、もちろん最初に出てくるのがハリプラサッド・チャウラシアで、音源的にも自然とそっちばかりがたまってくるのですが、ぼくとしては、最初に知ったということもあり、どうしてもこっちの肩を持ちたくなってしまいます。

 このCDは、基本的にぼくの好きな音楽をただご紹介する、ということでやっているこのHPの中でも、「ぜひ自分が感じている魅力を分かってほしい」と思う点では、最右翼に位置するディスク。

 ただ、インド音楽というのはなにしろ独特で耳慣れないし、手軽に聴ける音源がたくさんあるという分野でもないので、「ハイ、素晴らしいですから聴いてください」とはなかなか言いにくいんだけど、これは国内盤で図書館なんかにもちょこちょこ置いてあったりするので(残念ながら、借りられずに残っていることが多い)、まあ、そういう場面に出くわしたら、 ぜひとも1度だけでなく、何度か気軽に聴いてみてなじんでいっていただけたらと思っているわけです。(2007.11)

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K. Sridhar & K. Shivakumar : Shringar

2018年01月16日 | (旧HP記事)インド音楽
Shringar
 
 

 「Shringar(献身)」というタイトルがついていますが、内容的には「BAGESHRI(バーゲシュリ)」と、「BHAIRAVI(バイラヴィ)」という2つのラーガの演奏です。

 メインは最初の「BAGESHRI」の、47分に及ぶアーラープのみの演奏になると思いますが、初めて聴いた時は、その静けさに満ちた美しさに、思わず息を呑んでしまいました。

 実際、背後にタンプーラの音もまったく聞こえないし、例えるなら、真夜中、山奥の人っこひとりいない湖で、風もなく鏡のような湖面に煌々と月の光が降り注いでいるような、そんなイメージでしょうか。それからしばらくは、ホントにヘビー・ローテーションのCDになりました。

 それにこの「BAGESHRI」、西洋音階で「ソ」にあたるPaの音をあまり使わないラーガで、こういう基本的な音が抜けたラーガは、ほかの演奏では最初から主音ヴァーディ(この場合はMa)中心に、ある種移調するような感じで演奏することが多いと思うのですが(ここらへん、インド音楽をふだん聴かない方には何を言っているかよく分からないと思いますが、説明しようとするとすごく長くなってしまう)、この演奏は、ホントに開始から35分頃までSaを中心に、ということは属音をほとんど使わないで旋律中心の音楽をやっている。こんなこと、インド音楽以外のジャンルではまずあり得ないんじゃないでしょうか。

 それと、このK. Sridhar と K. Shivakumarの2人は(このCDで初めて知りました)、もともと兄弟だったのに同じ道を進まず、Sridharのほうは北インド古典のサロードを学び、Shivakumarは南インドのヴァイオリンを修行したという、ちょっと変わった経歴があって、このフェスティヴァルで初めて共演したのだとか。このステージ上で初めて息のあった演奏ができて、演奏後に興奮してたらしいです。

 でも、本人だけでなく、ぼくも本当に幸せな時間を過ごさせてもらいました。本当に美しかったなあ。(2007.6)

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