027:嘘（ほにゃらか）

泣けぬほど哀しき水と知りながら蜻蛉も嘘を産み付けてゆく

026:垂（ほにゃらか）

うらめしや　枝垂れ柳のさわさわと囁く夜半を水の泣きをり

025:とんぼ（ほにゃらか）

遊び女にあらぬをとんぼ縛られて雄をいざなふ　逃げられぬまま

024:牛乳（ほにゃらか）

牛乳を２リットル飲み吾子のため母乳うみだす身体機能（システム）をかし

023:結（ほにゃらか）

まつすぐに生みだされたる雲たちが緋色の風に結ばれてゆく

022:レントゲン（ほにゃらか）

胸のなか芽生えし恋の病までレントゲンには撮るべくもなし

021:美（ほにゃらか）

はつはるの晴天に立つ富士山（ふじやま）の美に奮ひ起つ大和の魂（こころ）

020:信号（ほにゃらか）

ああすればかうなるらむとて信号が「赤ぞ」「青ぞ」と語りたがつて

019:雨（ほにゃらか）

雨樋をしとしと伝ふ音のなか母より聞きし「雨だれ坊ちゃん」

018:スカート（ほにゃらか）

スカートにかくれんぼする子の背（せな）をそつと押し出す　桜の中へ

017:医（ほにゃらか）

主治医たる＜母＞の見立てを侮らず聞けよ　医療のスペシャリストよ

016:せせらぎ（ほにゃらか）

せせらぎの音流れ出すトイレをば怖がりて泣く娘なりけり

015:秘密（ほにゃらか）

秘密なら道具箱にもこつそりとまろめてあるね　捨てられぬまま

014:刻（ほにゃらか）

どこまでも不可思議なるを侵しゆき人は幾多の轍（わだち）を刻む

013:クリーム（ほにゃらか）

はじめてのリップクリーム選びつつはしやぐ娘に春は桃色