057:鏡（ほにゃらか）

この都会（まち）を万華鏡かと見紛へばぐるりぐるりと天地ゆらめく

056:とおせんぼ（ほにゃらか）

甘さうな水の匂ひに誘はれふらり飛び立つ子をとほせんぼ

055:頬（ほにゃらか）

寝ぬる子のやはらかき頬に触る指はわれのかたへの母性を覚ます

054:虫（ほにゃらか）

鈴虫のかたわれ果つるを知らぬがに「りり…」と鳴く夜ぞ秋は悲しき

053:ブログ（ほにゃらか）

ややこしき母のブログに彩りを添へて娘の写真かがやく

052:舞（ほにゃらか）

いちめんの菜の花ばたけ舞ふ蝶のひらりひらりと春をたのしむ

051:しずく（ほにゃらか）

桃の香の匂ひたつ夏　たぷとぷと甘きしづくをしたたらす木々

050:萌（ほにゃらか）

草も木も萌え立つ春のやさしさに手を合はせつつタラの芽を食む

049:戦争（ほにゃらか）

戦争の勃発したる公園に見て見ぬふりをつらぬく母子（おやこ）

048:アイドル（ほにゃらか）

愛（うつく）しきこの子　わが家のアイドルも人から見ればたぶん悪ガキ

047:辞書（ほにゃらか）

いつしゆんに応ふる電子辞書をして賢き母をよそほひてをり

046:凍（ほにゃらか）

凍てゆるむ朝の空気をふるはせて集ふ子どもの声のあかるさ

045:コピー（ほにゃらか）

＜ド根性大根＞とふてもて映やしそれがコピーを誰（た）がために成す

044:飛（ほにゃらか

いく筋も残されてゆく飛行雲　たれか生きたる証しのごとく

043:曲線（ほにゃらか）

ゆるやかな曲線延ばす新道に見えぬあしたが速度を増して