~The Night Shadow Allows You~

月の水面に 映りし君の 愛でき姿は 己が命の 容なるかな

才能の寿命

2007年06月05日 | diary

最近、私の好きなアーティスト達の訃報が続く。
俳優の石立鉄男然り、昨日は羽田健太郎氏の訃報を知った。

石立氏に関しては、私がその活躍をTVで拝見したのは幼児の頃だったが、その個性的な姿と演技は、今でも心に残るものであった。
だが残念な事に、晩年はTVでその才能の発揮を見るに至らなかった。

それは一重に、TV業界の企業的非クリエイティブ体質によって排除されたのか、業界には中間マージンを搾取する構造があるというが、彼はまさにその被害者といえよう。また現在、日本では良い脚本を書ける人が減っているようにも思える(勿論、才能があるものが表に出れないという事であろう)が、これもまた彼を活かせない原因であったであろう。

これは日本のTVドラマを見ていて、いつも思うのだが、仮に日本で「スタートレック」の番組作成の権利の一部を買い取れたとしたら、石立氏のようなベテランでなければ演じきる事は出来ないだろうと思う。
言い方を代えれば、スタートレックのような視聴率も視聴質も採れるような番組がもっと沢山あれば、このような才能を無駄遣いする事もなかったのではと考える。

次は羽田氏についてである。
羽田氏に関して云えば、現在まで「渡る世間」やTVでの活躍がよく知られているが、この方はまさしく己の才能を発揮するに恵まれた環境にあったと云える
ただ単純に、音楽人であり、才能があったからという理由だけではない。

というのも、この方が活躍していた当時はメディアミックスの草創期であり、それは云わば、作品の抱き合わせ販売の方法が確立された時期でもあった。
しかし、そもそも芸術とは見世物的性質を持ち、それは各ジャンルとの総合的産物ともいえる。それを考慮すると、このメディアミックスの波に乗れたというのは、芸術家としての本来の能力を発揮するのに最も幸運な事であったと云えよう。

ちなみに私にとっての羽田氏の作品と云えば、アニメ「超時空要塞マクロス」やゲーム「ウィザードリー・シリーズ」の音楽である。
この2作品に関して云うと、前者は勇ましい軍艦マーチ的なアプローチからメロウなBGM、果てはアイドルソングまで、そして後者に関しては、バロック調の本格的なクラシック音楽が聴く事が出来る。

特に私が心酔したのはゲーム「ウィザードリー・シリーズ」のBGMだった(特に3作目、5作目)。当時のゲーム音源というと、ファミコンの貧弱なものしかなかったが、羽田氏作曲のこの楽曲に関しては、最大三音の発声音楽でも素晴らしかった。
勿論、後にオーケストラアレンジのCDも聴いたが、これほどまでに両者のクオリティーが一致したものはなかったと思った。勿論、それは良い意味である。

それはバロック調という古典的作曲法による作曲だったためかもしれないが、これほど作品のテーマをイメージさせる旋律を創りだすというのは、一重に氏の特筆すべき才能のためであったと思う。そしてこれは、他作品の作曲者に無い要素であったとも云える。

ともあれ、お二方、お亡くなりになられたというのは残念な事である。
そしてこれは、現在業界において大きな痛手であるとも云える。
何故なら、本当に良い先生を失ったようなものだから。

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※羽田氏のウィザードリー楽曲に関して誤解があったようなのでここで訂正しておく。

ウィザードリィの音楽について
ウィザードリー
のオープニングテーマは 実は羽田健太郎の完全なオリジナルでは無い。ヘンリー・パーセル作曲の「アブデラザール」、またはムーア人の復讐 Z.570の第2曲「ロンドー」が原曲である。この曲はベンジャミン・ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』で変奏曲主題としても使われていて有名であり、羽田はおそらくブリテンの作品を聴いてそこから借用したものと見られる(聴き比べてみると非常によく似ている。曲の冒頭はそのまま同じ形で借用している)多くのゲームファンが羽田健太郎の純粋なオリジナル作品と誤解しているがこれは間違いである

(Wikipedia:羽田健太郎中段より抜粋)。

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※2 その後、この項目に関してWikipediaに修正が入っていた。多摩坂さんのご指摘により、それを紹介しておく。

ウィザードリー
ウィザードリーⅤのオープニングテーマは、ヘンリー・パーセル作曲の『アブデラザール、またはムーア人の復讐』Z.570の第2曲「ロンドー」が原曲である。この曲はベンジャミン・ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』で変奏曲主題としても使われている。CD-BOXのライナーでリスペクトしたものと表明している。

(Wikipedia:羽田健太郎中段より抜粋:修正後版)。

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ウィザードリーⅤのオープニング曲に関しては、私もその質の高さに電撃が走る感覚に捉われた事がある。私達に、本来この楽曲を知らしめた意味でも、羽田氏に多大なる賛辞を与えたい。
氏の音楽からは、常にある種の造詣の深さを感じていたが、この記事を読んでそれが確実になった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
羽田氏のウィザードリー楽曲について (多摩坂)
2007-06-07 03:08:32
Wikipediaに修正が入っています。

ウィザードリィVのオープニングテーマはヘンリー・パーセル作曲の『アブデラザール、またはムーア人の復讐』Z.570の第2曲「ロンドー」が原曲である。この曲はベンジャミン・ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』で変奏曲主題としても使われている。CD-BOXのライナーでリスペクトしたものと表明している。
幻想水滸伝
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re:羽田氏のウィザードリー楽曲について (多摩坂) (O∴EL)
2007-06-07 08:14:19
ご指摘有難う御座います。
私も一応、この記事を書いた後に、加筆しておりますが、早速修正させて頂きます。
ときに、CD-BOXの存在はつい最近知りましたが、早く買わないといけないですねw
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