国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

カーネギーホールで開催されたカラオケ大会って

2010年05月20日 | 海外公演




リーマンショック以降、経済の落ち込みは、当然、非営利の芸術団体の運営にも影を落としています。
非営利の劇場や美術館にとって、チケットやその他売上げによる収益は15-20%前後と多くなく、
その他の大多数を助成金や寄付、基金の運用益に頼っています。
しかし、その助成団体の財源となっている基金そのものが目減りしているのですから、
当然、助成金や寄付活動は、経済や株価の落ち込みとともに、激しく落ち込みます。
また、アメリカの非営利の劇場や美術館では、少ないところでも運用資産の30%、
多いところでは45%も消失させています。(ほとんどが有価証券ですからね)
つまり50億の運用資産があって、5%で運用していたとしたら、2.5億の利回りがあるのですが、
仮に40%失ったとすると、基金は30億円となり、利回りは1.5億円になってしまいます。
去年まで2.5億あった基金からの収入が、今年は1.5億になる訳ですから、
その団体は大胆なコストカットに迫られることになります。
しかし、コストカットといっても限界があるので、収益事業に力が入ることになります。
収益事業が法律で制限されている非営利法人にとって、スペースのレンタルは大きな収益の柱となります。
リンカーンセンターでさえ、収益の30%を劇場レンタルに頼っていると言われています。

そんな中、早くからレンタルが活発だったのが、ご存知、“クラシック音楽の伝道”・カーネギーホールです。
以前も書きましたが、カーネギーはシーズン制を取っていて、自主事業で構成されるシーズンが終わると、
劇場をレンタルに出します。基本的には誰でも借りられます。
音大のオーケストラ部の演奏会や、習い事教室の合同発表会のようなイベントも
日本から来てやっているぐらいですから・・・・。


さて、去る5月15日にそんなカーネギーホールで、
(社)日本大衆音楽文化協会なる団体の主催でカラオケ大会が開催されました。
チラシによると「日本大衆音楽の普及、発展、育成、保存に寄与する公益法人です」だそうな。
大衆音楽とは、つまりポピュラーミュージックであって、商業ベースの音楽を指すと思うのですが、
そういうジャンルの音楽を保存、普及させるために“公益”法人があったんですね。ちょっと驚きました。
商業ベースの音楽というのは、つまりは売れてなんぼの世界なんだ、と私的には思っていたので、
それと“公益”だという部分がどうマッチするのか・・・。まあ、様々事情もあるのでしょう。

第一部は「内閣総理大臣賞」「文部科学大臣賞」受賞者の日本グランドチャンピオンの中から
さらに日本一を決める大会で、つまりは壮大なカラオケ大会。
第二部はプロの歌手による歌謡ショーでした。
参加歌手は御大・北島三郎、チェリッシュ、中村美律子といった大物で、司会はアグネス・チャン。
本物の演歌ショーですね。

うーん・・・・・
この複雑な感じはなんなのでしょうねえ・・・・

プロによる歌謡ショーはさておき、カラオケ大会が公益で、大衆音楽の保存と育成に寄与するのでしょうかね。

入場料収入はすべて寄付とのことですが、最初からそんなにチケット収益があるはずもなく
この団体はどうやって事業費を捻出したのかなと思う夜も眠れない・・・なんてことはないのですが。

あと、不思議なのは、普通、カーネギーでコンサートを行えば、日本のメディアがやってきて
“世界の〇〇!NYの芸術の伝道・カーネギーでのコンサートが大成功!”となるのですが、
今回、ウェブでチェックしても全く報道されていませんね。
どうしてなのでしょうねえ・・・。
日本での地方公演の場合、いちいち報道されないでしょうから、つまりカーネギー公演も
そういう位置づけになった、ということなんでしょうかね。

なかなか興味深いですねえ・・・。
どんなコンサートだったんだろう・・・。