国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

FringeNYC フェスティバルって (2)

2009年08月29日 | 海外公演

Photos by Michelle Robin Anderson

やがて、アルビンは漆黒の海底で、かつて見たことのある光の玉に遭遇する。それは亡くした妻の魂であった。魂が鯨に飲み込まれると、鯨の瞳にはかつての妻の姿が。海底深く鯨となった妻と楽しいひと時を過ごすアルビン。鯨の身体を離れた妻の魂はさらにアルビンを海底深くに導いていく。その時、アルビンは横たわる死体のその向こうに海底火山を発見する。同時に残された酸素があとわずかであることにも気付く。

妻の魂は浮遊を続ける。しかしアルビンは妻への思いを断ち切るかのように火山へと向かう。アルビンは岩盤の上にすっくと立つと、特性ウェットスーツの足の部分から伸びる爪で空洞の岩盤をしっかと掴み、地底から切り離す。そして岩盤の頂上に立つと海上へと浮上を始める。凄まじい勢いで海上へと浮上していくが、酸素の残量が底を着く。

海上へと浮上したときには、アルビンはウェットスーツの中で既に死んでいた。

するとアルビンの身体から光る玉が遊離し浮遊しはじめる。その光る玉は海中深く沈んで行き、そこでもうひとつの光る玉と合流する。やがて、二つの光る玉は一つとなり、その中にアルビンと妻の姿が見える・・・・」

号泣。

このお話を50分で、しかも一人で演じています。彼が使うのは、自作のアニメーションのキャラクター、パペット、そしてミニチュアのセットなどです。本人も所々で登場しますし、ウクレレで自作自演の音楽も挿入されます。

アニメーションが投影されるスクリーンは円形の紗幕でできていて、映像だけでなく、背後でパペットが映像とシンクロして演じたりも。またアニメーションでは、その場で即興でイラストを書き加えたり、メッセージを手書きしたり。観客の想像力を引き出しながら、物語へと引き込んで行きます。

面白いのは、どれも非常に簡易なセットで、しかも安価な素材を使いながら、きちんと世界観を観客に伝えられている点です。主人公がウェットスーツを着たときのパペットも非常に簡単で、ソフトボール大の白い玉がヘルメットを装着した主人公の頭で、顔の部分に小さなLED照明が仕込まれています。身体は手術用の薄いゴム手袋をした本人の手だけです。右手で頭を持って、左手で身体を演じます。でも、これが・・・・見ているうちに可愛らしい生物に見えてくるから不思議ですよね。台詞は英語ですが、ほとんどのシーンはヘルメットを装着している海中シーンなので、言葉の台詞はありません。その代わり動物のような鳴き声を発します。そのせいもあって、どんどん手と白い玉が、何かのクリーチャーに見えてきます。

客席も噂を聞きつけた観客で超満員。私もなんとかチケットを確保して見ることができましたが、本当に素晴らしい舞台でした。日本でもこういう小さな秀作が、こういうカジュアルな演劇フェスティバルで、もっともっと見られるようになるといいのですけどねえ、と思いました。

ちなみにチケットは15ドル。つまり1400円程度ということですね。




All Photos are from The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer, by Tim Watts. Photos by Michelle Robin Anderson
(http://www.weepingspoon.com/AlvinSputnik/Welcome.html)


FringeNYC フェスティバルって (1)

2009年08月29日 | 海外公演

from The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer, by Tim Watts


昨日、演劇フェスティバル「Fringe NY」で上演中だったオーストラリアから参加のワンマン・パフォーマンス
“The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer”を見てきました。

日本語に訳すと、「アルビン・スプートニクの冒険:深海の探索」とでも言うのでしょうか。ティム・ワッツさんという白人男性による一人芝居で、会場はHERE Arts Centerに2つある劇場の小さい方、Dorothy B. Williams Theater。


これがもう、本当に良く出来た良い話で、エンディングではちょっぴり涙ぐんでしまうほど!ストーリーは・・・

「地球温暖化で海面が異常に上昇し、人類は絶滅の危機に瀕している。生き残った人類はそれぞれが孤島のように残された高層ビルの残骸などで暮らすのみ。西オーストラリアに暮すスプートニク夫妻も残骸の中で二人っきりの生活を送っていたが、妻が病気になり、やがて死んでしまう。すると妻の身体から輝く魂がふわふわと抜け出し浮遊しはじめる。夫のアルビンは必死でその輝く玉を彼女の身体に戻そうとするが、彼女の魂は窓を飛び出し海中へ。アルビンも追いかけて海中に飛び込むが、光の玉は深海へと沈んで行く。

一人ぼっちになったアルビンは小さなボートで旅に出るが、やがて残された人類の多くが住む残骸へと辿り着く。そこでは人類の存亡をかけた壮大なプロジェクトが進行していた。深海の底にある海底火山。その山中に空洞があり乾いた地表が残されているという。その空洞を岩盤から引き離し、海上に浮かび上がらせようというのだ。これまで何人もが挑戦し失敗している。一人ぼっちになったアルビンは海底への冒険を決意する。

特製ウェットスーツに身を包み、海中深く飛び込むアルビン。やがて光の届かない海中には人類が残したかつての生活の残骸が死体とともに残されている。そこでアルビンは海底に住む生物を遭遇。仲良くなるが、仲間がいることを知り、仲間の中に友人を戻し、さらなる海底の旅を続ける・・・(続く)





All Photos are from The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer, by Tim Watts. Photos by Michelle Robin Anderson
(http://www.weepingspoon.com/AlvinSputnik/Welcome.html)

HERE Arts Center:http://www.here.org/see/now/