Photos by Michelle Robin Anderson
やがて、アルビンは漆黒の海底で、かつて見たことのある光の玉に遭遇する。それは亡くした妻の魂であった。魂が鯨に飲み込まれると、鯨の瞳にはかつての妻の姿が。海底深く鯨となった妻と楽しいひと時を過ごすアルビン。鯨の身体を離れた妻の魂はさらにアルビンを海底深くに導いていく。その時、アルビンは横たわる死体のその向こうに海底火山を発見する。同時に残された酸素があとわずかであることにも気付く。
妻の魂は浮遊を続ける。しかしアルビンは妻への思いを断ち切るかのように火山へと向かう。アルビンは岩盤の上にすっくと立つと、特性ウェットスーツの足の部分から伸びる爪で空洞の岩盤をしっかと掴み、地底から切り離す。そして岩盤の頂上に立つと海上へと浮上を始める。凄まじい勢いで海上へと浮上していくが、酸素の残量が底を着く。
海上へと浮上したときには、アルビンはウェットスーツの中で既に死んでいた。
するとアルビンの身体から光る玉が遊離し浮遊しはじめる。その光る玉は海中深く沈んで行き、そこでもうひとつの光る玉と合流する。やがて、二つの光る玉は一つとなり、その中にアルビンと妻の姿が見える・・・・」
号泣。
このお話を50分で、しかも一人で演じています。彼が使うのは、自作のアニメーションのキャラクター、パペット、そしてミニチュアのセットなどです。本人も所々で登場しますし、ウクレレで自作自演の音楽も挿入されます。
アニメーションが投影されるスクリーンは円形の紗幕でできていて、映像だけでなく、背後でパペットが映像とシンクロして演じたりも。またアニメーションでは、その場で即興でイラストを書き加えたり、メッセージを手書きしたり。観客の想像力を引き出しながら、物語へと引き込んで行きます。
面白いのは、どれも非常に簡易なセットで、しかも安価な素材を使いながら、きちんと世界観を観客に伝えられている点です。主人公がウェットスーツを着たときのパペットも非常に簡単で、ソフトボール大の白い玉がヘルメットを装着した主人公の頭で、顔の部分に小さなLED照明が仕込まれています。身体は手術用の薄いゴム手袋をした本人の手だけです。右手で頭を持って、左手で身体を演じます。でも、これが・・・・見ているうちに可愛らしい生物に見えてくるから不思議ですよね。台詞は英語ですが、ほとんどのシーンはヘルメットを装着している海中シーンなので、言葉の台詞はありません。その代わり動物のような鳴き声を発します。そのせいもあって、どんどん手と白い玉が、何かのクリーチャーに見えてきます。
客席も噂を聞きつけた観客で超満員。私もなんとかチケットを確保して見ることができましたが、本当に素晴らしい舞台でした。日本でもこういう小さな秀作が、こういうカジュアルな演劇フェスティバルで、もっともっと見られるようになるといいのですけどねえ、と思いました。
ちなみにチケットは15ドル。つまり1400円程度ということですね。
All Photos are from The Adventures of Alvin Sputnik: Deep Sea Explorer, by Tim Watts. Photos by Michelle Robin Anderson
(http://www.weepingspoon.com/AlvinSputnik/Welcome.html)