国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

アメリカの劇場って

2009年08月27日 | アメリカ劇場事情
アメリカの劇場は大きく2種類に別けることができます。1つは営利を目的とする劇場で代表的なのがブロードウェー・ミュージカルに代表されるような商業舞台を行う劇場。もう1つは、リンカーンセンターやブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)に代表されるような非営利の劇場です。

商業舞台では、営利を目的としていますから、基本的にはチケット販売を始めとする事業収益でもって制作費を捻出しています。ですから、たとえ制作費に10億円かけようとも、初期投資が回収される見込みがなく、ラニングコストによって、むしろ損益が増大するようなら、開演後間もなくであったとしても打ち切りなんてことが起こります。逆に利潤が発生している限り、公演は継続されます。マジソン・スクエア・ガーデンやラジオ・シティ・ミュージック・ホールのように、開催される公演に関係なく名前が知れ渡っている劇場(会場?)もありますが、多くの場合、劇場名はそれほど問題とされません。例えば、「ライオンキング」の劇場にも名前がありますが、誰も気にしません。あくまで「ライオンキング」が開催されている劇場、としか意識されないのです。つまり商業劇場はあくまで器であって、劇場にキャラクターがある訳ではないようです。

一方、非営利の劇場は、むしろ劇場の存在のほうが意識されることが多いようです。例えば「リンカーンセンターのサマーフェスは何をやっているの?」とか、「BAMに行けば面白い公演が見れるんじゃないか?」あるいは「前衛的な作品を見たければキッチンやPS122に行けばいい。」などです。つまり、非営利の劇場には、上演される演目に特徴や傾向があるように見受けられます。そういった劇場の多くにプログラミング・ディレクターと呼ばれるポジションの人たちがいて、彼らがシーズンごとにそれぞれの劇場のラインナップを決めていることも、そういった特色付けに寄与していると言えます。

多くの非営利劇場において、チケットや物販からの収益が収入全体に占める割合はさほど大きくありません。リンカーンセンターの場合、2008年度のチケット収益が全収入に占める割合は12%、2007年度で14%に過ぎません。一方、寄付金による収益は2008年度で20%、2007年度で19%もあります。これ以外の助成金などの収入がどの程度あったかははっきりしていませんが、寄付金と助成金などの合計は毎年、30%程度になると思われます。(リンカーンセンター・アニュアル・リポートから)

寄付や助成金は、事業体の活動に対して行われるものであって、より多くの寄付金や助成金を集めるには、その活動や存在が社会的に有益であると判断されることが重要であるとも言えます。ですから、非営利の劇場にとってどういう活動を行うか、ひいては劇場にどうゆう個性や特徴を持たせるかが非常に重要であり、プログラミング・ディレクターの手腕も試されるところしょう。