放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

体幹部(主に肺)の定位放射線治療

2008年05月27日 | Stereotactic Body Radiosurgery
大西洋, 体幹部(主に肺)の定位放射線治療, 日本放射線技術学会誌, 62(5), 2006

体幹部定位放射線治療の実際について、詳細かつわかりやすく記された報告です。

ここで、高精度外部放射線治療研究会にて推奨されている照射方法の記載があります。
1. 4-6MV X-ray
2. 非同一平面上の三次元照射
3. 10門以上の固定多門(1日5門以上)
      または5アーク以上(1日1アーク以上)の運動照射
4. 原体照射が望ましい(必須ではない)
5. 1回線量は6-12Gy
6. 総線量: JCOGでのT1N0M0非小細胞肺癌における治験: 12Gy×4

 また、特に参考となるのは線量計算アルゴリズムの違いによる計算線量の差でしょうか。
Clarkson, Convolution, Superpositionと最新のアルゴリズムになるに従ってより肺補正が忠実に行われるようになった結果、同一のMUでは最新のアルゴリズムほど少ない計算線量(cGy)になっています。また、過去に報告された線量と結果はClarksonのような旧式のアルゴリズムで計算されたもので評価されています。線量分布の精度は上位のアルゴリズムの方が高いため、各施設で所有している治療計画装置に搭載された最上位の計算アルゴリズムも併用して結果を残してことを推奨しています。

 効果判定は、1回のCT所見では放射線肺炎との鑑別が難しいが、6ヶ月以上増大する腫瘤様陰影は再発腫瘍である可能性が高いと判定するようです。

 優れた施設・スタッフが行えば、定位照射は手術に比べ、低侵襲で安全な治療といわれています。普及していくか、廃れていくか、今後の動向に注目されますね。