
「約束の海」
著者 山崎豊子
めらめら度★★★★☆
20140624TUE-20140703THU
ジムで顏馴染みのエアロビ奥さんは、相変わらず気前が良い。「望郷」に続く11冊目の頂戴物は、去年、亡くなった社会派の巨匠、山崎豊子さんの絶筆作品で、税込み1836円もするハードカバーだ。まだ新しいから古本屋に売れば数百円ぐらいになりそうなのに、タダで譲ってもらって、ホント、有難い限りです。正直、社会派って苦手なんだけど、テーマが興味深かったので、頑張って挑戦してみる事にした。
大学病院、政財界と、様々な社会問題を斬りまくった巨匠が最後に手鰍ッたテーマは、国防である。戦後70年を前に、列島が大陸や半島の怨嗟に侵されつつあるワケで、そういう背景を危惧されたのだろう。世間では、集団的自衛権なんぞで大騒ぎしているが、国防と戦争って、別物だと思うんだよなァ。自衛隊の装備や権限が増強されると、平和ボケのハトどもがクルックーと鳴き出して嫌になるぜ…。
ガリガリのヘナチョコが言う「ケンカが嫌いです」と、ムキムキの武道家が言う「ケンカが嫌いです」では、その意味が、まるで違うでしょ。強い肉体は盾であり、強固な盾の存在が抑止力になるのだ。確かに、強さが敵を作る事もあるかも知れないし、強さに奢って盾が矛になる事もあるかも知れない。でも、だからって弱いままで良いなんて、小賢しいヘナチョコの言い訳じゃん。心身ともに鍛えろよッ!
しかし、反面、愛国心の薄いノンャ竃?Yとしては、島の半分ぐらい分けてやって、ヒステリックな隣国を手懐けるのもアリって気がするんだよねェ。国粋主義者に袋叩きにされそうだけど、それも外交手段でしょ。海面から顔を出した岩の塊を巡って争うなんて、そんなんじゃ来たるべき宇宙世紀に対応できないよ。重力に魂を縛られている人々だ、って赤い人に粛清されちゃうぜ。人類は、進化すべきなのだ。
なんつって、グダグダと下らない事を書いてしまったが、正直、国防なんて難しい問題は良く解りません。でも、自衛隊は、絶対に必要なハズだ。「約束の海」は、3部構想で連載が始まったものの、第1部の連載終了後に著者が亡くなってしまったので、問題提起の段階で終わっている。ここからって所での絶筆だから、どえらい消化不良だ。国防とは、自衛隊とは、家族を愛するとは、一体、なんだろう…。
物語は、ソビエト連邦が解体する数年前の1989年から始まる。かつて海軍少尉だった父を持つ海上自衛隊の若き士官が、潜水艦「くにしお」の乗組員として奮闘するのだが…。主人公は、世間からバッシングを受け、過去を封印した父に想いを重ね、苦しみながらも使命感に目覚めていく。ちょっと恋愛模様が古臭いけど、しなやかで読みやすい文体だった。絶筆ゆえに消化不良だが、胃の腑に落ちる小説だ。
著者の残した構想メモを基にして、その後の粗筋が巻末に記されている。それによると、第2部は、戦時中の父とリンクさせた「ハワイ 編」で、第3部は、潜水艦の艦長となった主人公が東シナ海での緊張に巻き込まれていく「千年の海 編」となる予定だったらしい。最後まで読めないのが残念でならない。意志を継いで、弟子なり、作家仲間なりが続きを書いてくれないかなァ。日本は、どこへ向かうのか…。

新潮社「約束の海」1836円
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