つれズレ愚抄

ズレ：「図らずもここんとこスパイものの観賞が続いたところにクレイグ＝ボンド最終作との噂話も目に入ってくればどうにも本家本元の新作を拝見せずにはおられまいとばかりに出掛けていくてぇと、のっけから郷愁溢れる００７の世界観全開で前３作の記憶とはいささか異なる趣の滑り出しだったわな。
 近頃のボンドはガチ過ぎていけねぇとボヤいてる昔気質の諸兄が世界中に多いかどうかは知らねども、かつてのシリーズに比べれば依然として大層カネの掛かったシリアスタッチながら話が進むほどにそういう声に配慮したかのように金を使わず気を使うクスグリが随所に鏤められて、やっぱりスパイ映画はこういう小洒落たおフザケがあればこそと膝を打つ按配だぜ。
 無理矢理感が漂う荒唐無稽なシーン展開も意図したうえでのお約束ならさすが制作陣は００７シリーズのツボをよく心得てらっしゃると感心するところで、いささか公開が早かったものの小難しいこたぁ抜きにして往年のボンドファンが昔日を懐かしみつつお屠蘇気分で楽しむには打って付けだろうよ」