【金賞】
★水着の子太き腕(かいな)で水を切る/飯島治蝶
水を切って泳ぐ子どもの健康でたくましい姿が、明快に詠まれている。腕を上げ、たくましく水を切る場面がクローズアップされ、一枚のポスターを見るようだ。(高橋正子)
【銀賞/2句】
★風立ちて時空を渡す天の川/篠木 睦
天の川の表現として、「時空を渡す」は、よく言われることかもしれないが、この句のよさは、天の川の下に立って、「風立ちて」と感じたところである。天の川の下にあって、風を感じる。そのことが、むしろ時空を感じることになっている。 (高橋正子)
★水平に棚田積み上げ青時雨/おおにしひろし
棚田は、まさに水平だ。「積み上げ」ているから、なお、実感として受け入れたのだ。「青時雨」の抒情が句を整えた。(高橋信之)
【銅賞/4句】
★伸びゆきて山に色なす今年竹/池田多津子
今年竹の色は、万緑の山にあって特別で、あかるい緑を置くことになる。「伸びゆきて」の措辞がうまく働き、伸びやかな句になっている。(高橋正子)
★日暮より向日葵向きを緩めたる/碇英一
向日葵は、たくましい。一日たくましいかというと、そうではなく、日暮れからは、その力を緩める。かっと照りつける日には、力強く真向かい、入日には、ゆるやかに向きを変える。緩急が、太陽とともにある向日葵である。(高橋正子)
★満山の音かき集め西日去る/木村 修
一山のもろもろの音、木々のざわめきなどをすべてかき集めて、西日は静かに、おもむろに沈んだ。音を引き連れて沈んだのだ。日が沈むときの静寂と残照を詠んだ。(高橋正子)
★子らの網風の高さに蜻蛉追う/志賀たいじ
子どもらが、蜻蛉を追って補虫網を振り回す。蜻蛉は、風の吹く高さを飛ぶから、子どもたちは、風の高さに網を振る。高く差し上げられた網と、ひろびろと吹く風を飛ぶ蜻蛉が涼しげである。(高橋正子)