小泉首相は22日夜、NHK改革について「NHKは特殊法人(を維持)とする(政府)方針がある。民営化ではない、ほかの改革が議論されるのではないか」と述べ、NHKの民営化に否定的な考えを示した。
首相官邸で記者団に語った。発言は、2001年12月に決定した政府の特殊法人等整理合理化計画で、NHKの組織形態は「現状維持」としたことを踏まえたものだ。政府の規制改革・民間開放推進会議は21日、受信料制度見直しなどを明記した答申を首相に提出した。
当ブログではかねてより、NHK放送のスクランブル化、およびNHK民営化の推進を主張してきました。改革続行を標榜する小泉首相ならばNHK民営かも現実のものとなるかと期待していたのですが残念です。記事にあるように4年前の「特殊法人等整理合理化計画」で現状維持という結論が出ている、というのが理由とのことでしたが、当時から現在に至るまで放送を取り巻く環境が激変していることを考慮すれば、再度民営化も含めた改革の議論を開始して欲しいところだと思います。
そこで、2001年12月に決定した「特殊法人等整理合理化計画」では、NHK改革についてどのように記載されているのか調べてみました。
p.19
日本放送協会
(事業について講ずべき措置)
【公共放送事業】
○公共放送事業に付随した新たな業務の実施について、インターネット利用については放送の補完としての利用に限定するとともに、子会社等の業務範囲の拡大を抑制するため、子会社等の業務範囲を原則として出資対象事業に限定する等の仕組みを設ける。
○子会社等との取引については、競争契約を原則とするとともに、随意契約による場合については、業務の専門性、特殊性等から他に委託先がない等やむを得ない場合に限定する。(組織形態について講ずべき措置)
●特殊法人
これだけだと、なぜ特殊法人のままという結論に至ったのか判りませんね。そこでさらに特殊法人等改革推進本部の会議で何が議論されてきたか調べてみました。
2001年9月4日に「特殊法人等の廃止又は民営化に関する各府省の報告」が公表されました。NHKの所管の総務省の見解は下記のとおりでした。
p.4
【廃止の可否: 廃止できない】
(事業を純粋に廃止できない理由)
① 我が国の放送は、国民からの受信料を財源とし、放送の全国普及、豊かで良い番組の放送、放送の進歩発達等を目的とする公共放送と、広告料収入等を財源とする民間放送との二元体制の下、互いに切磋琢磨しつつ発展。
② 仮に、日本放送協会を廃止する場合、上記の目的を達成できず、我が国の放送の健全な発展に支障が生じることから廃止することは適切ではない。(事業を他の運営主体に移管して特殊法人等を廃止することができない理由)
③ 日本放送協会の事業を他の運営主体に移管する場合、国、地方公共団体については行政府からの自主性及び政治的中立性の
確保が要求される報道機関としての特殊性から適切ではなく、民間企業については上記①の目的達成が不可能となることから適切ではない。【民営化の可否:民営化は適切ではない。】
(民営化できない理由)
○ 民営化は上記①の目的達成が不可能となることから適切ではない。
んー、なんという貧弱な理由でしょうか。NHKと民放とが「切磋琢磨しつつ発展」とあり、これを継続する必要があるためNHKを民営化できないとしています。しかしNHKと民放とは何をどう「切磋琢磨」してきたのでしょうか?テレビ放送が始まった当初のことはよくわかりませんが、昨今のテレビ放送からはそのようなNHKと民放の切磋琢磨を感じることはありません。
この程度の理由でありながら、これを受けた特殊法人等改革推進本部の会合で事務局はこんな意見を述べています。
p.5
日本放送協会【廃止・民営化の可否(その他)】
不可【その条件等】
(豊かで良い番組の放送等を実現し、放送の健全な発展を図るため公共放送は必要)【事務局の意見】
引き続き整理合理化について検討する。
つまり民営化についてはあっさりあきらめ、「整理合理化を検討する」とだけ記載されているのです。その結果が「特殊法人等整理合理化計画」に反映されているのです。この計画の中にNHK民営化などの根本的な改革は当然盛り込まれておらず、「整理合理化」の一環でNHK子会社の業務範囲やNHK本体と子会社の発注関係について一定の制限を設ける程度に留まっています。
このような経緯で決められた4年前の計画に縛られてNHK民営化の議論をしない、とするのはあまりに消極的だと思います。NHKをめぐる国民の不信感が高まっており、思い切った改革の必要性は4年前とは比較にならないほど増大しています。是非とも民営化も含めた改革に向けて大胆に舵を切って欲しいと思います。