力学の理論によると剛体(形を変えない物体)の運動は重心の並進運動
とその周りの回転運動に分解される。重心の運動はニュートンの方程式
f = ma に支配される。fは力、mは質量(重さ)aは加速度(速度の変化
する割合、一秒間に変化する速度).f=0ならa=0、すなわち力が働かな
ければ速度は変化しない。
これが慣性の法則。質量と速度を掛け合わせて運動量というから、慣性
の法則は運動量不変の法則でもある。(実はここまでは省いてもよかった。
本番はこれから。)
重心の周りの回転運動を支配する方程式は、M = I α .Mは物体を回転
させようとする偶力(トルクともいう)を表す。互いに1m 離れた
反対方向の1kgの力が偶力の単位1kgm。Iは慣性能率で、回転軸の周りに
物体がどのように分布しているかを表す。同じ重量の物体では、軸の
近くに物が集中していると慣性能率は小さくなり、軸から離れた所に
物があると慣性能率は大きくなる。αは角加速度といい、回転の速さ
(角速度ともいう)の変化する割合を表す。速度の変化に抵抗するの
が質量であるのに対して、角速度の変化に抵抗するのが慣性能率である。
M = 0 なら α = 0.慣性能率と角速度の積を角運動量といい、上の結果
は偶力が働かないとき角運動量が変わらないことを示しているので
角運動量不変の法則ともいう。
(ご苦労様でした。いままでの話の細かいところは忘れてもよろしい。
これからが本当の本番です。)
スポーツには体の回転を利用するものが非常に多い。一寸数え上げても
野球,ゴルフ、テニス、ボクシング、相撲、投擲競技、体操、フィギュア
(英語figureの発音はフィガーなので気が引けるが、慣例に従う)
スケート等々。体の回転を能率よく行う(回転を加速して早く大きな回転
速度に達するために要する偶力を小さくする)には、慣性能率を小さく
することが絶対である。幸いにも人体は剛体ではなくて変形可能である。
中心軸から遠い可動部分である、手、腕、肩を胸の前に集めて、いわゆる
肩をすぼめて、脇を固めるというのはこういうことなのである。あの
フィギュアスケータのスピンはこの理屈を如実に実証している。
腕や肩を横に張り出した状態から回り始め、回転が始まると可動部分を
体の中心部に集中する。実際には靴と氷の間の摩擦があって、回転を
止めようとするマイナスの偶力が働くが、靴の刃先の品質と滑りの
技術によって摩擦は最小限に抑えられ、あたかも角運動量不変の法則が
成り立つ状態が形成される。慣性能率が小さくなるにの反比例して、
(レトリックとして使われるいい加減な反比例ではなく,数学的
厳密性を持った正真正銘の反比例)回転速度が増しスケーターの
輪郭がぼやけて来るのは見事という外はない。
もう一つ剛体力学の方程式には表されないことがある。体の回転を
能率よく速くするには、中心に近い部分から起動し、それに
よって加速された部分が発動してその直ぐ外側の部分を加速し、。。
という風に中心部に巻きつれられた鎖が次第に巻き戻されて最後に
最先端が速く回転する。この運動を滑らかに、迅速に鋭く行わ
なければならない。それには腰の切れが、そして腰を安定させる
両脚のがんばりが必要である。しかしそれだけでは不十分で、最先端
の速度を最終的に速める、衝撃的な仕上げが要る。これが野球の投手
なら、手首からはじまって指先の弾きに終わるスナップであり、
バッターやゴルファのいうフォロウスルーであり、水泳のバタ足や蛙足
の足首のスナップである。
理屈はこれだけである。各スポーツの名選手はその内容を少なくとも体
で覚えているはずである。それなのに何故好不調の波があり、しばしば
スランプに陥るのだろうか。小文の理論が少しでも役に立たないだろうか。
筆者は選手でもスポーツの専門の評論家でもないが、硬式野球、テニス、
水泳を実践し、以上の理論を身をもって体験した者として一応の自信を
持っている。スポーツのこの種の議論はいろいろあるが、力学の理論
に基づく首尾一貫したものはあまり見あたらないので不遜を顧みず
敢えて発言した次第である。
とその周りの回転運動に分解される。重心の運動はニュートンの方程式
f = ma に支配される。fは力、mは質量(重さ)aは加速度(速度の変化
する割合、一秒間に変化する速度).f=0ならa=0、すなわち力が働かな
ければ速度は変化しない。
これが慣性の法則。質量と速度を掛け合わせて運動量というから、慣性
の法則は運動量不変の法則でもある。(実はここまでは省いてもよかった。
本番はこれから。)
重心の周りの回転運動を支配する方程式は、M = I α .Mは物体を回転
させようとする偶力(トルクともいう)を表す。互いに1m 離れた
反対方向の1kgの力が偶力の単位1kgm。Iは慣性能率で、回転軸の周りに
物体がどのように分布しているかを表す。同じ重量の物体では、軸の
近くに物が集中していると慣性能率は小さくなり、軸から離れた所に
物があると慣性能率は大きくなる。αは角加速度といい、回転の速さ
(角速度ともいう)の変化する割合を表す。速度の変化に抵抗するの
が質量であるのに対して、角速度の変化に抵抗するのが慣性能率である。
M = 0 なら α = 0.慣性能率と角速度の積を角運動量といい、上の結果
は偶力が働かないとき角運動量が変わらないことを示しているので
角運動量不変の法則ともいう。
(ご苦労様でした。いままでの話の細かいところは忘れてもよろしい。
これからが本当の本番です。)
スポーツには体の回転を利用するものが非常に多い。一寸数え上げても
野球,ゴルフ、テニス、ボクシング、相撲、投擲競技、体操、フィギュア
(英語figureの発音はフィガーなので気が引けるが、慣例に従う)
スケート等々。体の回転を能率よく行う(回転を加速して早く大きな回転
速度に達するために要する偶力を小さくする)には、慣性能率を小さく
することが絶対である。幸いにも人体は剛体ではなくて変形可能である。
中心軸から遠い可動部分である、手、腕、肩を胸の前に集めて、いわゆる
肩をすぼめて、脇を固めるというのはこういうことなのである。あの
フィギュアスケータのスピンはこの理屈を如実に実証している。
腕や肩を横に張り出した状態から回り始め、回転が始まると可動部分を
体の中心部に集中する。実際には靴と氷の間の摩擦があって、回転を
止めようとするマイナスの偶力が働くが、靴の刃先の品質と滑りの
技術によって摩擦は最小限に抑えられ、あたかも角運動量不変の法則が
成り立つ状態が形成される。慣性能率が小さくなるにの反比例して、
(レトリックとして使われるいい加減な反比例ではなく,数学的
厳密性を持った正真正銘の反比例)回転速度が増しスケーターの
輪郭がぼやけて来るのは見事という外はない。
もう一つ剛体力学の方程式には表されないことがある。体の回転を
能率よく速くするには、中心に近い部分から起動し、それに
よって加速された部分が発動してその直ぐ外側の部分を加速し、。。
という風に中心部に巻きつれられた鎖が次第に巻き戻されて最後に
最先端が速く回転する。この運動を滑らかに、迅速に鋭く行わ
なければならない。それには腰の切れが、そして腰を安定させる
両脚のがんばりが必要である。しかしそれだけでは不十分で、最先端
の速度を最終的に速める、衝撃的な仕上げが要る。これが野球の投手
なら、手首からはじまって指先の弾きに終わるスナップであり、
バッターやゴルファのいうフォロウスルーであり、水泳のバタ足や蛙足
の足首のスナップである。
理屈はこれだけである。各スポーツの名選手はその内容を少なくとも体
で覚えているはずである。それなのに何故好不調の波があり、しばしば
スランプに陥るのだろうか。小文の理論が少しでも役に立たないだろうか。
筆者は選手でもスポーツの専門の評論家でもないが、硬式野球、テニス、
水泳を実践し、以上の理論を身をもって体験した者として一応の自信を
持っている。スポーツのこの種の議論はいろいろあるが、力学の理論
に基づく首尾一貫したものはあまり見あたらないので不遜を顧みず
敢えて発言した次第である。