よろず放談

日頃見聞きする種々の事柄に対しての独断と偏見による辛口批評

Hはアルファベットの風来坊

2005-06-15 12:47:01 | 外国語
アルファベットの中でH(h)字は元来気音(ハ行音)を表す機能を

持っていたが、現在でもその機能を維持しているのは、英語

ドイツ語などのゲルマン語とラテン語ぐらいで、ラテン語の

子孫のフランス語、イタリア語、ポルトガル語などではすっかり

廃絶して無音の記号となってしまった。日本語の助詞

”へ”が単に”エ”と発音され,助詞を表す記号の役目だけを

果たしているのと似ていて興味深い.折角の文字が

遊休しているのはもったいないというわけで、この字には色々な

新しい役目が割り当てられた。

フランス語:chでシャ行音を表す。

      例;chic シック、chez moi シェモア、chanson シャンソン

イタリア語:ch,ghの次にi,eが来たとき、それぞれカ行音、ガ行音を表す。

      例;Pinocchio ピノッキオ、spaghetti スパゲッティ

スペイン語;chでチャ行音を表す。

      例;muchacho ムチャーチョ、chica チーカ、churro チュロ

一方j,g(次にe,iが来たとき)が喉音を表すようになった。

      例;hija イーハ、virgen ビルヘン,joven ホーベン


ポルトガル語:chでシャ行音,lhでリャ行音,nhでニャ行音を表す.

      例;chavi シャーヴィ,filha フィーリャ,sonho ソーニョ

ギリシャ語:古典ギリシャ語では気音は語頭でだけに存在し、それを表すのは

      気音アクセント記号であったので,h字は母音字H,ηとなった.

      現代ギリシャ語では気音はそのアクセント記号とともに全く消滅した。
   
      例;定冠詞 ̒ο,̒η,το ホ,ヘ,ト→ο, η, το オ,イ,ト

ロシア語:H字はナ行音を表す.

     例;нет ニェート,ничего ニチェヴォ,до свидания ダスヴィダーニャ

日本語ローマ字:母音字の次来ると母音の長音化を表す.ドイツ語を真似たものか.

     例;OH 王,GOTOH 後藤

それから”H”はエッチと読むと色情あるいはさらに性行為も表す。昔「助平」

といっていたのが英語のHELPから、簡略されてHとなったと理解している。

アラビヤ語は母音がア,イ,ウしかなく,子音もp音,g音,v音が欠落しているが

気音(喉音)が多い.サンスクリットやヘブライ語は筆者の射程を越える.





横文字遍歴(ギリシャ語)

2005-05-30 13:24:44 | 外国語
人生のロスタイムの時期に入った。しかし気を付けないと日本チームの

悪癖のさよなら負けの憂き目に逢う。ロスタイムといえども何かに挑戦

していないと認知症になってしまう。という訳でギリシャ語を本腰を

入れて始めることにした。昔から古典ギリシャ語を少し生かじりしていたので

今まで翻訳で読んだプラトンやプルタルコスを原文で読み直してみたいのだが、

まず現代ギリシャ語を見てみることにした。白水社のエクスプレスシーリーズ

現代ギリシャ語を読む。アルファベットは数学記号でおなじみのものが多くて

ほとんど違和感がないが、発音が古典語からひどく変わってしまっているのに

驚いた。β,γ,δの三つの有声子音字の発音の位置が全部前方に移動している。

βはb音からv音へ、γは次にi母音が来るとg音からy音へ、δはd音からth音に

変わってしまい、元々の機能を全く忘れてしまった。古来の言葉は発音が変わる

だけで済むが、外来語などで本来の発音を表すためには、b音はμπで、g音はνκで

d音はντで表さなければならない。母音や二重母音η,ι,ει,οι,υが全部i音を表す

ようになって発音からは区別が付かない。あのうるさい強声、弱声、昇降声

アクセントが強声アクセントだけになり、h音と共に有気、無気の記号

も消滅した。こういう、進化というより退化といいたい、英語的な簡略化の傾向

は不可避であろうか。

今までの西欧語遍歴から多くのギリシャ語源の言葉を知っているので

現代ギリシャ語で原語に出会うと旧知の友のごとく懐かしい。

教科や授業をμάθημαという.数学の数とは関係がない.中世の頃、教科の中で

数学がもっとも教科らしかったので数学をμαθηματικάというようになった.

数のことはαριθμόςといい,算術または数論のことをαριθμητικήという.

大学はπανεπιστήμιο パネスティミオという.直訳すると万学の府

とでもなるか.全学の方が当たっているかもしれないがどうも全学連の方へ

連想がいってしまう.universitas ウニウエルシタスが大学の職員組合の

名前であったのに比べ,大学そのものの名前としてふさわしい.

郵便局はταχυδρομείο タヒズロミオという.速い,走る,場所だから

直訳すると飛脚所となるか.スペイン語のcorreosの中にも走るが入っていて

面白い.

バスのことをλεωφορείοレオフォリオという.どうしてこんなところに

λέων獅子が出てくるのだと思ったらλεωはλαός住民のこと.

busがラテン語の形容詞の複数与格(奪格)omnibusから来ているのは常識.

酒といっても当然葡萄酒のことだが、κράσιという.vinumに通ずるοίνος

はどうなったのだ.新しく買った希和辞典を引くとκράσιはκράσις οίνου

酒の混合から来ているという.さしずめ日本なら酒のことを混合酒の省略

で”混合”というようなものかな?

水はνερόという.hydrodynamicsのύδωρはどこへ行ったのだ.辞典をひくと

νερόはνεαρόν ύδωρ 生水の略.”なま”ということかな?

家はeconomy を生んだοίκοςと思いきや,σπιτίだという.これはなんだか

分からない.hospitiumと同根だという.










横文字遍歴(ローマ字,英語)

2005-05-07 12:59:13 | 外国語
生来横文字が好きである。それは物心がついた幼時から始まる。

父は岐阜県の農家の長男に生まれたが、農夫の生活にあきたらず

同郷の親戚で一宮市に出て織物商で成功した人を頼って丁稚奉公をつとめ、

一人前になって独立し自前の織物商店を開いた。小学校しか出ていないが

どこで覚えたのかいろんなことを知っていた。習字も得意で、巻紙片手に

毛筆ですらすら手紙を書いた。新しがり屋で今でいう七半のAceという

オートバイを乗り回していた。外国産のオートバイのカタログがあったらしく

ハーレーダビットソン、インディアン、エースなどという名前を何時とはなしに

聞き覚え、得意になってしゃべりまくったらしい。”毛唐だ毛唐だ”とからかわれて

真顔になって否定したそうだ。

昭和二年小学校に入学。一年生のときは石版に石筆で字を書いた。二年生から鉛筆

で紙に字を書いた。下敷きはこのごろのようなプラスチックではなくて、ブリキ

製で縁取りがしてあり、長方形の両面にはいろんなことが印刷してあった。

掛け算九九、割り算九九、各種の度量衡単位の変換、そしてヘボン式ローマ字。

割り算九九は算盤をやらない者にはチンプンカンプンでついに覚えなかった。

しかしローマ字は何の抵抗もなく頭に入った。高学年になると日本語の文章を

自由自在にローマ字で書くことができた。

中学校に入って初めて英語に接したが、ローマ字の下地のお陰で少しも違和感

がなかった。英語の時間は楽しくて、進度の遅さにいらいらした。

四年生のときだったか、副読本にジャガイモの話がのっていて、その中に

pomme de terre ポムドウテルというフランス語とErdapfelエルダッペル

というドイツ語が出てきて、その目新しい綴りと発音に興味をそそられ

早くいろいろな外国語を習いたいと思ったことを、しみじみ思い起こす。