自己内観ブログ

自己を信じて大地にしっかり根付いた生き方をするための日々の閃きを綴ります。

眠りから覚める頃

2019-02-28 18:18:00 | 物語
ある人は、自分が眠っていたとは気づかずに毎日を送っていた。

そして、毎日忙しく過ごしていた。
ひとつの物事をやり終えると連鎖するように、次にやることが現れそれを日々、処理するように生きていた。

そんな日々を繰り返しているうちに、そこから抜け出すなどということさえ忘れてしまい、ただ、ひたすらやってくるものの対処をやっていた。

それは、まるで義務のようになり「やらなければならない
」という強迫観念にも近いものになっていた。

そのサイクルに入り込んで数年が過ぎていた。

しかし、その人には時の経過は、感じられずせいぜい1年くらいにしか思えていなかった。

そんなある日、難しい問題を話し合う会議を終えて帰宅してから眠り込み、目が覚めた時にずいぶん長く眠っていたように感じられた。

腕時計の日付を見れば翌日になっていただけだった。

変わったことと言えば、右手の甲に青あざがあり少し痛みがあるくらいだ。
どうして、ついたのかはわからないが、気分は妙に清々しかった。

その時、電話が鳴り何年も会っていなかった人の声がした
。なんでも、自分の夢を見て
気になり電話をしたのだそうだ。

その人と話しをしていると
不思議な気持ちになってきた

自分は、どこか遠い所から帰ってきたようなそんな気がしてきたのだ。

電話をかけて来た人は、あるハーブのことを何回も話してくるのだ。
何でも、最近そのハーブが気になり出して毎日、匂いを嗅いでいたのだそうだ。
でも、そのハーブの香りを好んでいるわけではないのだと話している...

そのハーブは、ずっと忘れていて嗅いでいないが実は、自分自身が好んで楽しんでいたものだったのだ。

そんな話をして電話は切れたが、そのハーブの香りを思い出しながら懐かしさと同時に、胸の奥から熱いものが込み上げてきた。

眠りから覚めるまでは、冷たい血液が体を巡っていたような気がしていたのだが今は、温かい血液が巡り始めたように感じられる。

その時、自分は白雪姫のように毒リンゴのようなものをかじってしまって長く眠っていたのかもしれないと思いはじめるのだった。


そして、いつものように家を出て太陽の光をあびながら
どこか昨日と違う暖かさを感じるのだ。

自分は、永い間、眠っていたに違いないと何故か確信するのだった。


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