Wired Vision
米ポトマック川 での話だ。高次の捕食者は環境ホルモンの影響を受けやすいということだろう。
雌雄同体のコクチバスの繁殖の可能性というのはどうだろう?別の意味で気に掛かるのだ。
日本で同じ現象が起こるかどうかは解らないのだが、環境ホルモンの原因物質の一つとされるプラスチック可塑剤ビスフェノールAなどはギジエ(ワーム)に含まれていそうだから、案外大型の歳をとったコクチバスは雌化が進行しているかも知れない。
★テキスト版
米ポトマック川、雄のコクチバスが「ほぼ100%雌雄同体化」
2008年3月 3日
Brandon Keim
Photo: Josh Gross
米国の首都ワシントン市とバージニア州との境を流れるポトマック川流域のさまざまな場所で、雄のコクチバスのほぼすべてが雌雄同体化している。
米国地質調査所の研究者が『Journal of Aquatic Animal Health』に発表したこの事実は、人間の活動による汚染を原因とする生理学的な機能異常の、これまでで最も明確な証拠だ。さらに困ったことに、魚を雌化させたと思われるのと同じ化学物質が、人間の飲料水に含まれている。
水質汚染による魚の雌雄同体化という話題そのものは、何年も前から報告されており、もはやニュースとしての目新しさはない。私がRSSフィードで最初にAP通信の記事の見出しと1段落を見たときも、ちらっと眺めただけだった。
汚染水域で魚の雌雄同体化が頻繁に見られるというニュースなんて驚きでもない。私はこの話題を、『Wired Science』ブログの中で地味で身近な発見を取り上げるコーナー『No @#&!, Sherlock』で書こうと思ったくらいだ。
しかし、Wired Scienceの寄稿者であるAlexis Madrigal氏が、私にコクチバスに関する記事を見たかどうかを尋ねたときに、彼はいくつかの数字を挙げた。ポトマック川の大量養殖の地域や人口の多い場所では、雄の全コクチバスのうち最大で4分の3が、精巣に未発達の雌卵を持っているという。シェナンドア川のいくつかの地域では、その割合がちょうど 100%にまで達する。
こうした数字は、生殖機能に異常のある「いくつかの個体」を示すものではない。「全個体数」について話しているのだ。もし魚のこうした異常な状況についてあまり気にならないというのなら、これを人間に置き換えて、どういう意味があるのか考えてみるといい。
この現象の原因はほぼ間違いなく、人間の性ホルモン作用に類似した作用を持つ内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)だ。これらの内分泌撹乱化学物質は、重工業や農業で生じるほか、さまざまな種類の薬剤や身の回りの製品に含まれている。廃棄物や農業排水から水源へと侵入し、最終的に人間の飲料水に入り込む。
これは人間にどのような結果をもたらすのだろうか?何とも言えないが、実験動物の場合、内分泌撹乱化学物質は癌や生殖障害を引き起こしている[硬質プラスチックの原料で、世界で最も一般的な化合物の1つである『ビスフェノールA』が生殖器の疾患やガンにつながるという研究についての過去記事(日本語版記事)はこちら]。
人間への環境的影響を把握するためには、異常なぐらい複雑な疫学の研究が必要になり、現実的には不可能に近い。
しかし、内分泌撹乱化学物質が全米規模での乳ガンの増加や精子数の減少の原因だと主張する研究者もいる。
雄の魚が大量に雌化し始めている今、この問題にきちんと注意を払うべきだろう。
[この30年間、日本と米国で新生児に占める男児の割合が低下しているという研究についての過去記事(日本語版記事)はこちら。また、男性不妊の発生率が世界的に急上昇しているという研究報告についての過去記事(日本語版記事)はこちら。
なお、下水処理場のミミズを与えられて内分泌撹乱化学物質に高い濃度で汚染されたオスのムクドリが、歌をコントロールする脳の部位(High Vocal Center)に変異が生じてメスにモテるようになったとする研究成果はこちら(英文記事)]
[日本語版:ガリレオ-向井朋子/合原弘子]
米ポトマック川 での話だ。高次の捕食者は環境ホルモンの影響を受けやすいということだろう。
雌雄同体のコクチバスの繁殖の可能性というのはどうだろう?別の意味で気に掛かるのだ。
日本で同じ現象が起こるかどうかは解らないのだが、環境ホルモンの原因物質の一つとされるプラスチック可塑剤ビスフェノールAなどはギジエ(ワーム)に含まれていそうだから、案外大型の歳をとったコクチバスは雌化が進行しているかも知れない。
★テキスト版
米ポトマック川、雄のコクチバスが「ほぼ100%雌雄同体化」
2008年3月 3日
Brandon Keim
Photo: Josh Gross
米国の首都ワシントン市とバージニア州との境を流れるポトマック川流域のさまざまな場所で、雄のコクチバスのほぼすべてが雌雄同体化している。
米国地質調査所の研究者が『Journal of Aquatic Animal Health』に発表したこの事実は、人間の活動による汚染を原因とする生理学的な機能異常の、これまでで最も明確な証拠だ。さらに困ったことに、魚を雌化させたと思われるのと同じ化学物質が、人間の飲料水に含まれている。
水質汚染による魚の雌雄同体化という話題そのものは、何年も前から報告されており、もはやニュースとしての目新しさはない。私がRSSフィードで最初にAP通信の記事の見出しと1段落を見たときも、ちらっと眺めただけだった。
汚染水域で魚の雌雄同体化が頻繁に見られるというニュースなんて驚きでもない。私はこの話題を、『Wired Science』ブログの中で地味で身近な発見を取り上げるコーナー『No @#&!, Sherlock』で書こうと思ったくらいだ。
しかし、Wired Scienceの寄稿者であるAlexis Madrigal氏が、私にコクチバスに関する記事を見たかどうかを尋ねたときに、彼はいくつかの数字を挙げた。ポトマック川の大量養殖の地域や人口の多い場所では、雄の全コクチバスのうち最大で4分の3が、精巣に未発達の雌卵を持っているという。シェナンドア川のいくつかの地域では、その割合がちょうど 100%にまで達する。
こうした数字は、生殖機能に異常のある「いくつかの個体」を示すものではない。「全個体数」について話しているのだ。もし魚のこうした異常な状況についてあまり気にならないというのなら、これを人間に置き換えて、どういう意味があるのか考えてみるといい。
この現象の原因はほぼ間違いなく、人間の性ホルモン作用に類似した作用を持つ内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)だ。これらの内分泌撹乱化学物質は、重工業や農業で生じるほか、さまざまな種類の薬剤や身の回りの製品に含まれている。廃棄物や農業排水から水源へと侵入し、最終的に人間の飲料水に入り込む。
これは人間にどのような結果をもたらすのだろうか?何とも言えないが、実験動物の場合、内分泌撹乱化学物質は癌や生殖障害を引き起こしている[硬質プラスチックの原料で、世界で最も一般的な化合物の1つである『ビスフェノールA』が生殖器の疾患やガンにつながるという研究についての過去記事(日本語版記事)はこちら]。
人間への環境的影響を把握するためには、異常なぐらい複雑な疫学の研究が必要になり、現実的には不可能に近い。
しかし、内分泌撹乱化学物質が全米規模での乳ガンの増加や精子数の減少の原因だと主張する研究者もいる。
雄の魚が大量に雌化し始めている今、この問題にきちんと注意を払うべきだろう。
[この30年間、日本と米国で新生児に占める男児の割合が低下しているという研究についての過去記事(日本語版記事)はこちら。また、男性不妊の発生率が世界的に急上昇しているという研究報告についての過去記事(日本語版記事)はこちら。
なお、下水処理場のミミズを与えられて内分泌撹乱化学物質に高い濃度で汚染されたオスのムクドリが、歌をコントロールする脳の部位(High Vocal Center)に変異が生じてメスにモテるようになったとする研究成果はこちら(英文記事)]
[日本語版:ガリレオ-向井朋子/合原弘子]
きちんと調査された方が貴研究者の為かと思います