リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

第49回 京で”鷺しらず” 魯山人の愛でた小魚とはなに?

2017-03-27 15:43:43 | ”川に生きる”中日/東京新聞掲載

魯山人が一番といったのはごりの茶漬けだったのだが、それ以外にも京 鴨川の淡水魚として目で炊いた小魚があった。それを 食べに行った話。魚はアユばかりでは無いというお話しの一部です。

 


〇 京の鷺知らず

『ついでに茶漬けとは別な話であるが、京都には「鷺知らず」という美味い小ざかながある。』美食家として知られる北大路魯山人が、茶漬けの王者として紹介した一文「京都のごりの茶漬け」の最後の一行だ。

 ごりはハゼの仲間の淡水魚。カワヨシノボリという魚を指している。ところが、魯山人全集121編のどこにも、その小魚について書いてはいない。魯山人は料理について、精緻に記述をする例が多いのだが、妙な終わりかただ。

 「鷺知らず」は3センチ以下のオイカワという淡水魚。明治の頃には、鉄道唱歌に京都名物として唄われ、鴨川などには、漁師が10名ほどいたという。京都市では京の食文化を見直し、身近な川の環境にも目を向けてもらおうと「鷺知らず」を地域ブランドとして活用しようとしている。市は2014年より賀茂川漁協に依頼して生息場所や漁獲量の調査を始めた。

 「鷺知らず」を食べに、冬の京都に行った。四条河原町から高瀬川沿いに南へ、小さな橋を渡ると湯どうふ「喜幸(きいこ)」という店がある。繁華街からほど近いが、静かな路地にあるその店は、女将さんと女性1人、カウンターの端には水槽がしつらえてあり、魚が泳いでいる。その傍らに、洗って束ねられた極細の投網が4統、下がっていた。女将の浅井貴美代さんは鴨川で唯一人、「鷺知らず」を獲る漁師でもある。

 「鷺知らず」は醤油で炊いたものを食べるという。今年の漁、小型のオイカワは十分獲れなかったそうだ。少し大きくなった魚を白焼きでいただいた。

 ぬるめに燗した日本酒が、ほのかな,小ざかなの苦みと香りを引き出した。

 オイカワは関東平野から西に広く分布している。関東ではハヤ、ヤマベなど、中部ではハエなどその地方に親しまれた名前がある。    

「鷺知らずに」ついて、魯山人は多くを書かなかった。京都のは別もの、ということかと思った。

(魚類生態写真家)

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