
渦巻く激流をホワイトウオーターと呼ぶ。その真っ白な水と泡の中に飛び込む時、身体の上も下もわからず、そして、音さえも消え去る一瞬が訪れる。暴力的な水の流れのなか、舟を制して技を繰り出す競技がカヌーフリースタイルだ。
舟に固定することがないパドルで漕ぐ舟のことを広い意味でカヌーと呼ぶ。カヌー競技の歴史は古く、オリンピック種目になったのは1936年の第11回ベルリンオリンピック大会以降のこと。その多くはスピードを競う競技だがカヌーフリースタイルは45秒という時間内に行う技によって得点を競う。国際カヌー連盟がカヌーフリースタイルを正式競技とし、世界選手権を開催したのは2009年のスイス大会。以来日本代表として国際試合に連続出場しているのが郡上市(岐阜県)生まれの末松佳子さんだ。
長良川で育った彼女は大学卒業後、実家近くのラフト(ゴムボート)を使用したツアー会社に勤める。そこでカヌーに出会った彼女は自由になる時間の全てを川で費やしたという。「目の前が長良川だった」。
13年、アメリカで開催されたカヌーフリースタイル世界選手権大会でスクートクラス銅メダルを獲得、よく14年、フランス、スペインで開かれたワールドカップ全3戦で、スクートクラス一位となり同年のワールドカップ総合優勝を飾る。
長良川から世界へ。今年4月、末松さんを岐阜市のアパレルメーカー「三敬株式会社」が社員として迎えた。「岐阜を元気に」という県内企業の支援を集め10月ブラジル、アルゼンチンで開催されるワールドカップに向けての体制づくりがつづく。
5月27日。末松さんは母校八幡西中学1年生たちと長良川をラフティングで下る。目の前の川が世界の川へとつながっている。世界で知ったその感動を後輩たちに伝えるつもりだ。
(魚類生態写真家)
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