リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

川の名前

2006-05-07 00:21:28 | あなたをわすれない
 15年ほど前のこと、ボクは面識も無いのに、二風谷のご自宅に萱野さんを訪ねたことがある。

 そのころ、川の構造のことで、ちょっとした疑問を抱えていた。
日本中どこへ行っても、瀬、淵という言葉が共通しているのが何故なのかということだ。
 リュウキュウアユの問題で奄美に通っていたころで、奄美、沖縄では、淵に相当する言葉が「こもり」奄美。「ぐむぃい」沖縄。ということを知った。
ならば、アイヌでは何というか。

 どういう経緯で萱野さんを訪ねたのかも忘れてしまったのだが、萱野さんは突然訪ねたボクを自宅に招き入れてくれて、用件を尋ねた。

 ボクは日本中どこへ行っても、川の瀬は瀬。淵は淵というのはおかしいと思う。もっと方言があってもいいのではないかと、話した。

 沖縄では言葉がありました。アイヌ語ではどう言いますか?
 萱野さんは妙な質問に面食らっていたが、答えて言った。

 流れの一番速い部分は「ケッペレッペ」その次は「チャラセ」という。
淵は。「モイ」静かなという意味。大きな淵のことを「ポロモイ」という。

 確認してみたが、ケッペレッペというのは早瀬のこと。チャラセは平瀬に当たるようだ。

 チャラセというのはアイヌの伝統的な船のことですよね。
 ちょうど、木曽川でその船を復元して、北海道まで有志が漕いで運んだ頃のことだった。

 いや。その「チャラセ」は「すべるもの」の意。川の「チャラセ」は違う。

ボクにはどう違うのかはよく分からなかった。そのことをもう少し聞きたかったのだが、萱野さんはこう言った。

「川の名前を研究するよりも、ダムを壊す方法を研究したまえ」

 ちょうど、平取では二風谷ダムが、長良川では長良川河口堰が建設されようとしていた頃のことだ。

 あの「チャラセ」にはどういう違いがあったのか、お聞きする機会を永遠に無くしてしまった。

アイヌ民族初の国会議員、萱野茂さん死去 (読売新聞) - goo ニュース

☆テキスト版
アイヌ民族初の国会議員、萱野茂さん死去

2006年 5月 6日 (土) 23:43

 アイヌ文化の伝承・保存のほか、アイヌ民族初の国会議員としてアイヌ新法の制定などに力を注いだ元参院議員萱野茂(かやの・しげる)さんが6日、急性肺炎のため死去した。79歳だった。

 告別式は12日午前10時から北海道平取(びらとり)町本町88の1、平取町中央公民館で町葬として行われる予定。自宅は同町二風谷(にぶたに)79の1。喪主は妻、れい子さん。

 アイヌ民具など民族資料の収集やアイヌ民謡、民話などの録音に努め、1972年、生まれ育った同町二風谷に、現在の「二風谷アイヌ資料館」を開設し、アイヌ語教室も主宰した。アイヌ語辞典の編さんのほか、75年に菊池寛賞を受賞した「ウエペケレ(昔話)集大成」など、アイヌ民族の口承文学を素材にした著書も多数ある。
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1 コメント

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チャラセ (春小紅)
2006-05-07 22:49:41
萱野さんが、木曽川の船大工さんに建造を依頼したのは和船の川船で、その和船に萱野さんが「チャラセ」と名づけたのですが、その意味は「早く走るもの」だったような気がします。木曽川から北海道の萱野さん住む沙流川のほとりまで、このチャラセを運ぶプロジェクトのお手伝いをしたので、家のどこかにその新聞記事の切り抜きがあるはずなんですが・・。

沙流川で開催された船を川に浮かべる儀式は「チプサンケ」といって、チプが船、サンケは「降ろす」という意味だったと思います。
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