リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

水田魚道のエバンジェリスタ

2005-11-25 18:08:27 | 『田んぼのチカラ』2004-
自宅前の水田に作られた魚道。水田魚道のエバンジェリスタ(伝道者)三塚さんの田んぼだ。

 引用した毎日新聞の記事にもあるように、もともと圃場整備を推進する立場にあった三塚さんは、圃場整備により魚がいなくなっていることに驚いたそうなのだ。そして、自ら自分の田んぼに魚道をつくり、今回その成果をひろく普及しようと、勉強会を地元で開催し全国から水田魚道に係わっている人たちを集めた。

 既製品のポリエチレン製品を使った魚道は一部では特許をとろうという動きも有るそうだ。しかし、三塚さんは特許申請には異議を申し立て、誰もが使えるようにしたいという。

第1回水田魚道勉強会

 ボクは今年の1月、琵琶湖で三塚さんの講演を聴き、是非、その場所を見たいと思った。その誠実な人柄と率直なお話ぶりに心惹かれていた。
 今回連絡をしたところたまたま今回の勉強会に参加する事が出来た。

 水田魚道について、深く知り、広く知古を得た3日間だった。



 毎日新聞の掲載記事から
 削除されているのでグーグルのキャッシュデータの内容を再録してあります。


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2004年12月03日

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生き物たちのシグナル 生き物たちのシグナル:

第5部 共に生きる/9 ナマズ
伊豆沼のナマズ。地域の人は昔、よく食べたものだという
 ◇産卵場所奪った、ほ場整備--木製魚道設け、回復めざす

 宮城県北部の伊豆沼と内沼の周辺に広がる、豊かな穀倉地帯。低地にあり、戦後間もなくまでは、全体が湿地帯のようだった。ナマズの生息には絶好の場所だった。

 40年ほど前に始まったほ場整備が、その環境を変えた。

 ナマズは春、産卵のために沼から水田を目指す。流れもなく、水が温かい水田は、稚魚の成長に適している。

 昔は水路を伝って行き来できたが、ほ場整備で、水門や水田より1メートルも低いコンクリート水路ができた。ナマズは水田に行き着けなくなった。同じように、ドジョウやメダカも産卵の場所を失い、徐々に数が減っていった。

 自然保護活動をしている市民団体「ナマズの学校」の三塚牧夫さん(54)と水田地帯を回った。水田の間をめぐる水路の側面に幅30センチ、長さ3メートルの箱型をした手製の木製魚道があった。水路と水田を結ぶ水田魚道だ。「田んぼに魚を呼び戻そう」と昨年、作った。ナマズやメダカ、ドジョウが上った。

 三塚さんの本職は宮城県農地整備課の技術担当補佐だ。県職員として30年間、先頭に立ってほ場整備をしてきた。「水田から生物を追いやってきたことにやっと気付き、反省を込めて魚道を作った。めったに見かけなくなったナマズも上り、うれしかった」と話す。これからも、魚道を増やしていくつもりだ。

 ナマズがいることは、農薬の影響のない水田だと宣伝でき、米が高値で売れるという期待もある。

 伊豆沼で取ったナマズを見せてもらった。体長45センチの中型で、黒い体、大きな口、太いひげが目立つ。表面がヌルヌルしているので、持ち上げたら落としてしまった。

   □   □

 農業技術などを研究する農業工学研究所(茨城県つくば市)の端(はた)憲二さん(54)に、ナマズの産卵シーンのビデオを見せてもらった。

 夜の水田。メスを真ん中にして、5~6匹のオスが水音を立てて絡み合う。メスが産んだ卵に、自分の精子を受精させようと必死だ。翌朝、緑色がかったイクラのような卵が水の中にあった。端さんが昨年、岡山県のほ場整備されていない水田で撮影した。

 「ほ場整備は、時代の変化の中で農家が求めた」と、端さんは指摘する。

 かつては、近隣の農家は水の出し入れを伴う作業を同じ日に共同で実施した。水田はお互いにつながっており、水の出入りも複数の所有者の水田を経由していたからだ。

 しかし、会社勤めとの兼業農家が増え、時間合わせが難しくなった。個別に作業できるよう、ほ場整備で各水田に配水管を引き、コンクリート水路で排水の効率を上げた。

 端さんの専門は水質改善だが、水田に魚がいないのは不自然だと思い続けてきた。

 97年、研究所に近い霞ケ浦のほとりに水田を借り、水田魚道を置いた。ナマズなどが上ってきた。「整備したほ場を今更壊せない。せめてできるのが魚道だ」と言う。

   □   □

 茨城県内水面水産試験場の元所長、浜田篤信さん(68)が操縦する小型ボートで広大な霞ケ浦に出た。調査用の定置網を上げると、半分以上はアメリカナマズだ。体の色が薄く、体に斑点がある。養殖用に輸入されたが、霞ケ浦では野生化した。「情けない」と浜田さん。在来のナマズは今年、まだ3匹しか入っていない。

 浜田さんは「霞ケ浦の環境を根本的に変えないと、在来種の魚は増えない」と嘆く。

 霞ケ浦の岸辺には幅100メートルものヨシ原が茂っていた。ナマズの産卵場所だったが、10年前にコンクリート護岸工事が完了した。今では、小さなヨシ群落が残るだけだ。水底の砂に産卵するアメリカナマズは増えた。

 国や地元住民が最近、ヨシ原ができるよう岸辺に土砂を入れ、波消し板を沖に立てている。少し生えてきたが、広く根付くには時間がかかる。【去石信一、写真も】=つづく

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 ◇ナマズ

 コイの仲間の淡水魚。北海道以外の全国にいる。平野部の湖沼や川の中流から下流におり、昼は物陰に隠れ、主に夜に活動する。頭は大きく平らだ。口も大きく、少し上を向いている。ひげは上あごと下あごに計2対ある。うろこはない。小魚やカエル、エビなどの小動物をよく食べる。共食いするので養殖は難しい。

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5 コメント

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すごいですね (T.EZK)
2006-02-14 00:04:19
 端憲二著「メダカはどのように危機を乗り越えるか 田んぼに魚を登らせる」は、私のバイブルです。「ブラックバスがメダカを喰う」のような作品とは違います。ところで、蛇腹ホースで魚が遡上できるとは、驚きです。何か細工してあるのでしょうか。不思議です。
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パイプ (ニイムラ)
2006-02-14 18:41:43
 このパイプはコルゲートパイプという名称で普通に市販されているものです。中に特に仕掛けはありません。勾配と流量に工夫があるようですね。

 こんなものでと思うけどいろいろな魚が登るそうです。この写真ではないけど、オオクチバスが登るそうだから、上部に網を張る必要性もあるとか。
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オオクチバスも? (T.EZK)
2006-02-17 22:21:31
 田んぼの魚道には、アユなど、産卵目的でない魚の遡上も観察されているのは、端憲二氏の著書でも紹介されていましたが、オオクチバスもですか。でも、網を張ると他の魚も引っかかるのでは?滋賀県の水田ゆりかごプロジェクトでもオオクチバス遡上の記事はないので意外でした。パイプに関する情報提供ありがとうございます。ビオトープの一部として、水田の復元の計画があるので、参考にさせていただきます。
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伊豆沼と琵琶湖 (ニイムラ)
2006-02-18 13:24:59
三塚さんの実験している伊豆沼周辺と琵琶湖では用排水系の勾配等が異なっているのだと思います。今年岩手大学が水田魚道の下流の生物相を調査する予定だそうですから、いずれ明らかになるでしょう。

 バス止めの網は目合いを大きくしている様でした。

Tさんは愛知の方ですか?文中に書きましたが、愛知県もパイプ式水田魚道に熱心で、特許を取ろうとして最初に動いたのは愛知です。
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愛知の人です (T.EZK)
2006-03-17 22:47:01
水田魚道は、万人の共有財産だと思います。それを金儲けの道具にしようとするとは。同じ愛知県人として恥ずかしい限りです。農文協HPの現代農業の記事に、三塚さんの魚道見つけました。確かに、千鳥X型魚道にバス遡上の記録ありですね。
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