
1988年7月。こんな思いから、全長良川を下った。
画像のパンフレットと以下の文面の手紙を配ってメンバーを募集して旅は始まりました。
ことし、17年ぶりに その旅をしてみようと思っています。
(当時の文面を、誤表記を一部訂正する以外はほぼそのままに再記しました。)
長良川河口堰建設に勝手に反対するの記
来る7月27日、長島温泉において長良川河口堰建設の起工式、祝賀パーティがとり行われようとしています。計画立案から実に29年、最後まで難航した漁協(赤須賀・三重県)との補償交渉の締結(本年3月)に伴う建設計画の始動の時です。
そしてそれは、長良川が、また長良川をとりまく人々、生物の全てにとって、まさに未曽有の大変革の時でもあります。 太古より連綿と海に注ぎつつ生き物を育んだ川が、河口堰建設と共に、海との関係を絶たれ、一貯水池として機能する運命に直面しているときなのです。
漁業者の人々の反対のなくなったいま、この河口堰建設にたいして表だった反対意見はみられないような雰囲気の中、僕たちは、一生物としてこの高度成長期の亡霊に対して異議のあることを宣言したいと思います。
○日本の川は、その多くが上流域にダムを持っています。
その目的は、治水(洪水を防ぎ流域の人々の、生命、財産を守ること)あるいは、利水(水そのものを資源として利用する、あるいは水の持つ位置エネルギーを利用して電気エネルギーを得ること)を目的としたものです。全国の主だった川のほとんど全ての川に、例えば最近”最後の清流”として取り上げられることの多い四国の四万十川についても現実には2つのダムがあります。長良川は、そんな全国の川の中にあって、正しく希なダムのない川なのです。
○河口堰とは河川の河口部に作られるダムです。
一般のダムと違うところは、水門がつながった形となっていて、その水門が開閉することです。河口堰も一般のダム同様治水面、利水面の必要性から計画され、建設されます。長良川河口堰も当初、折りからの高度成長期のうねりの中、工業用水の取水を目的に計画されました。その後中部地区を襲った伊勢湾台風の後、治水面の有効性からも建設が必要とされてきました。さて計画から30年余り、現時点において、堰は本当に必要でしょうか。
○利水面について、
日本の産業構造は大変革を遂げました。多量の電力、工業用水を必要としたエネルギィー多消費型の産業は現在昔日ほどの興勢は見られません。計画当初もっとも長良川の水を必要とした四日市コンビナートにおいてさえ工業用水の需要量は減少傾向にあります。更に流域に岐阜市を始めとした人工密集地帯を控えた長良川、その河口堰において取水される水は資源的な価値の低い、いわば”中水”
だということなのです。“中水”即ち、上水としてそのまま使用するには不向きな水質条件であるということです。
生物にとっては産業面、環境面極めて高価値の水を、みすみす手間暇掛けて、その価値を貶めているといわざるをえません。
○治水面についてはどうでしょうか。
上流域の水害を防ぐために、なぜ河口堰の建設が必要かといえば、次のように説明されています。洪水時、河川はできる限り すみやかに、水を海に流し去る必要があります。そのために現在の河川は流下水量を増す目的で、直線化され水通しをよくされています。
更に疎通量(河川の水流下能力)を増す必要に迫られたとき(現在の河川は、100年に一回、或は50年に一回の洪水を想定して設計される。)一つの方法として、河床を浚渫して、水深を増し疎通量の増化をはかる工法が用いられます。この工法の問題点は、低水時、渇水時、海水が浚渫した部分に入り込み塩害を起こす恐れがあることです。その海水の逆流を防ぐ目的で河口堰が建設されす。
河口堰はダムです。 ダムは流れを、水をとどめる目的で建設されます。そこでは水と共に流れ下った土砂も堆積します。 つまり河口堰は、疎通量を増す目的で造られますが、それ自体は流れに対する抵抗体となります。浚渫し疎適量を増したカ所はちょっとした出水で埋め戻しされ、河床の浚渫は未来永劫に続ける必要が生じるのです。
いうなれば、首を締めながら、人工呼吸を行うようなものでしょうか。洪水を防ぐ目的で作られる河口堰が管理を続けないとあらたな洪水の原因にさえ成りかねないのです。河口堰は、洪水対策の唯一絶対の方法ではないのです。
自然状態で治水面の実効が得られない河川改修は、将来に渡って、高負担を強いること
でしょう!また奇妙なことに、長良川と同様に洪水対策として浚渫計画のある揖斐川について
は河口堰の建設計画はありません。塩害を防ぐ目的で、長良川に河口堰の建設は必要なのでしょうか。
○河口堰建設に伴うマイナス面は何でしょうか、
まず第一に海と川とを回遊しつつ生育する生物はその移動が妨げられます。長良川を代表する魚類アユ、サツキマスは生育の過程で必ず一度海に下ります。
現在の日本において、アユが自然において産卵し、生育できる河川は極めて限られています。 多くの河川で、人工的に採卵された、或は琵琶湖より採取された稚魚の放流に寄って鮎はその命脈を保っているのが現実なのです。
河□堰にはアユ用の魚道が計画されていますが、過去建設された他の河川の例を見ればその効果について甚だこころもとない、と言わざるを得ません。
サツキマスはアマゴの一部が降海したものです、サケの仲間は川で生まれ、海で育ち、再び川にかえって産卵しその生涯を終えることはよく知られています。サツキマスはこの仲間にあって、唯一の暖海性のマスです。近年観光の新しいシンボルとして、積極的に放流され、良い結果を得ているこのマスについては、魚道すら用意されていません。
第二に汽水域の消失が上げられます。 先頃淡水化事業の見送りの方針の打ち出された中海(島根県)、かの中海の重要な水産生物は、汽水域に特産する シジミ(ヤマトシジミ)です。
長良川においてもこの種は重要な水産生物で、赤須賀漁協との補償交渉が長期化したのもそのためでした。 河口堰建設と共にヤマトシジミ漁の激減した利根川と同様の運命を迪る恐れが充分にあります。
また、汽水域の持つ浄化作用は、川と海相互の穏やかなる接触があって初めて機能するものです。霞ケ浦の例にも示されるように、河口堰(利根川河口堰)建設は深刻な環境汚染をもたらしました。
河口堰は、日本に唯一残された調和のとれた自然河川を破壊する暴挙です。川とは宙から来た水に、様々な命を与え、野を潤し、海を豊しめるものです。 川は生物全てにとって、生命の源であり、それ自体が調和に満ちた生命体なのです。河口堰は、その調和された生命体に対する恐ろしい破壊行為です。
かってないほど、水辺環境の重要性、必要性について認識の高まりつつある現在、このような暴挙が、理性的な検証もされずに強行されようとしています。
僕たちは、川の本来の姿を見つめ直す、愚かな旅を計画しました。 長良川の源流から、伊勢湾まで、川に抱かれながら流されてみようと思うのです。巨大な暴挙に対して、ささやかな愚挙で対したいと思うのです。
旅立ちは7月19日、大日岳山頂、
目的地は、海、7月27日、です。
1988年7月10日
長良川河口堰建設に勝手に反対する会
新村安雄
画像のパンフレットと以下の文面の手紙を配ってメンバーを募集して旅は始まりました。
ことし、17年ぶりに その旅をしてみようと思っています。
(当時の文面を、誤表記を一部訂正する以外はほぼそのままに再記しました。)
長良川河口堰建設に勝手に反対するの記
来る7月27日、長島温泉において長良川河口堰建設の起工式、祝賀パーティがとり行われようとしています。計画立案から実に29年、最後まで難航した漁協(赤須賀・三重県)との補償交渉の締結(本年3月)に伴う建設計画の始動の時です。
そしてそれは、長良川が、また長良川をとりまく人々、生物の全てにとって、まさに未曽有の大変革の時でもあります。 太古より連綿と海に注ぎつつ生き物を育んだ川が、河口堰建設と共に、海との関係を絶たれ、一貯水池として機能する運命に直面しているときなのです。
漁業者の人々の反対のなくなったいま、この河口堰建設にたいして表だった反対意見はみられないような雰囲気の中、僕たちは、一生物としてこの高度成長期の亡霊に対して異議のあることを宣言したいと思います。
○日本の川は、その多くが上流域にダムを持っています。
その目的は、治水(洪水を防ぎ流域の人々の、生命、財産を守ること)あるいは、利水(水そのものを資源として利用する、あるいは水の持つ位置エネルギーを利用して電気エネルギーを得ること)を目的としたものです。全国の主だった川のほとんど全ての川に、例えば最近”最後の清流”として取り上げられることの多い四国の四万十川についても現実には2つのダムがあります。長良川は、そんな全国の川の中にあって、正しく希なダムのない川なのです。
○河口堰とは河川の河口部に作られるダムです。
一般のダムと違うところは、水門がつながった形となっていて、その水門が開閉することです。河口堰も一般のダム同様治水面、利水面の必要性から計画され、建設されます。長良川河口堰も当初、折りからの高度成長期のうねりの中、工業用水の取水を目的に計画されました。その後中部地区を襲った伊勢湾台風の後、治水面の有効性からも建設が必要とされてきました。さて計画から30年余り、現時点において、堰は本当に必要でしょうか。
○利水面について、
日本の産業構造は大変革を遂げました。多量の電力、工業用水を必要としたエネルギィー多消費型の産業は現在昔日ほどの興勢は見られません。計画当初もっとも長良川の水を必要とした四日市コンビナートにおいてさえ工業用水の需要量は減少傾向にあります。更に流域に岐阜市を始めとした人工密集地帯を控えた長良川、その河口堰において取水される水は資源的な価値の低い、いわば”中水”
だということなのです。“中水”即ち、上水としてそのまま使用するには不向きな水質条件であるということです。
生物にとっては産業面、環境面極めて高価値の水を、みすみす手間暇掛けて、その価値を貶めているといわざるをえません。
○治水面についてはどうでしょうか。
上流域の水害を防ぐために、なぜ河口堰の建設が必要かといえば、次のように説明されています。洪水時、河川はできる限り すみやかに、水を海に流し去る必要があります。そのために現在の河川は流下水量を増す目的で、直線化され水通しをよくされています。
更に疎通量(河川の水流下能力)を増す必要に迫られたとき(現在の河川は、100年に一回、或は50年に一回の洪水を想定して設計される。)一つの方法として、河床を浚渫して、水深を増し疎通量の増化をはかる工法が用いられます。この工法の問題点は、低水時、渇水時、海水が浚渫した部分に入り込み塩害を起こす恐れがあることです。その海水の逆流を防ぐ目的で河口堰が建設されす。
河口堰はダムです。 ダムは流れを、水をとどめる目的で建設されます。そこでは水と共に流れ下った土砂も堆積します。 つまり河口堰は、疎通量を増す目的で造られますが、それ自体は流れに対する抵抗体となります。浚渫し疎適量を増したカ所はちょっとした出水で埋め戻しされ、河床の浚渫は未来永劫に続ける必要が生じるのです。
いうなれば、首を締めながら、人工呼吸を行うようなものでしょうか。洪水を防ぐ目的で作られる河口堰が管理を続けないとあらたな洪水の原因にさえ成りかねないのです。河口堰は、洪水対策の唯一絶対の方法ではないのです。
自然状態で治水面の実効が得られない河川改修は、将来に渡って、高負担を強いること
でしょう!また奇妙なことに、長良川と同様に洪水対策として浚渫計画のある揖斐川について
は河口堰の建設計画はありません。塩害を防ぐ目的で、長良川に河口堰の建設は必要なのでしょうか。
○河口堰建設に伴うマイナス面は何でしょうか、
まず第一に海と川とを回遊しつつ生育する生物はその移動が妨げられます。長良川を代表する魚類アユ、サツキマスは生育の過程で必ず一度海に下ります。
現在の日本において、アユが自然において産卵し、生育できる河川は極めて限られています。 多くの河川で、人工的に採卵された、或は琵琶湖より採取された稚魚の放流に寄って鮎はその命脈を保っているのが現実なのです。
河□堰にはアユ用の魚道が計画されていますが、過去建設された他の河川の例を見ればその効果について甚だこころもとない、と言わざるを得ません。
サツキマスはアマゴの一部が降海したものです、サケの仲間は川で生まれ、海で育ち、再び川にかえって産卵しその生涯を終えることはよく知られています。サツキマスはこの仲間にあって、唯一の暖海性のマスです。近年観光の新しいシンボルとして、積極的に放流され、良い結果を得ているこのマスについては、魚道すら用意されていません。
第二に汽水域の消失が上げられます。 先頃淡水化事業の見送りの方針の打ち出された中海(島根県)、かの中海の重要な水産生物は、汽水域に特産する シジミ(ヤマトシジミ)です。
長良川においてもこの種は重要な水産生物で、赤須賀漁協との補償交渉が長期化したのもそのためでした。 河口堰建設と共にヤマトシジミ漁の激減した利根川と同様の運命を迪る恐れが充分にあります。
また、汽水域の持つ浄化作用は、川と海相互の穏やかなる接触があって初めて機能するものです。霞ケ浦の例にも示されるように、河口堰(利根川河口堰)建設は深刻な環境汚染をもたらしました。
河口堰は、日本に唯一残された調和のとれた自然河川を破壊する暴挙です。川とは宙から来た水に、様々な命を与え、野を潤し、海を豊しめるものです。 川は生物全てにとって、生命の源であり、それ自体が調和に満ちた生命体なのです。河口堰は、その調和された生命体に対する恐ろしい破壊行為です。
かってないほど、水辺環境の重要性、必要性について認識の高まりつつある現在、このような暴挙が、理性的な検証もされずに強行されようとしています。
僕たちは、川の本来の姿を見つめ直す、愚かな旅を計画しました。 長良川の源流から、伊勢湾まで、川に抱かれながら流されてみようと思うのです。巨大な暴挙に対して、ささやかな愚挙で対したいと思うのです。
旅立ちは7月19日、大日岳山頂、
目的地は、海、7月27日、です。
1988年7月10日
長良川河口堰建設に勝手に反対する会
新村安雄
カヌーイストのNさんと釧路川取材に出かけ、昨夜2週間ぶりに帰宅し、Blogを読まさせていただきました。
新村さんが長良川を下ったあのときから、今年で17年かぁ。
釧路川ではカヌーで川を下り、陸にあがっては人に話を聞いてまわる日々。取材を進めるにしたがって、(開発局に対して)腹が立つことばかりで、美しい面白い楽しいというよりも、Nさんとふたりで怒ってばかりの2週間でした。
釧路滞在中、Nさんと長良川の話をしました。
またNさんの呼びかけで河口にカヌーを何千艇浮かべましょうよ。と提案したら「やろうか」との返事。
新村さん、RANをやりませんか?
ボクにできることであれば、全面的に協力します。
仲間と呼べる人たちが集まり、こじんまりでもいいですから。
あの、松林は楽しかった。2回目かな。ガクが成田の幽閉から解放されたばかりで、すねていて。ボクがおぶって野田さんのとこへ連れてったことがあった。妙なイヌだったよね。背中向けたら、ちゃんと、負ぶさってくるんだから。