新潟久紀ブログ版retrospective

県庁新採用が驚く工業用水道ドッキング計画編(前編)

<2県庁新採用が驚く工業用水道ドッキング計画編(前編)>--------------------------

●無謀な売水計画
 世は円高不況で特に工業用水を使う装置型工場等の進出は全国的停滞しており、私が担当する県営工業用水の契約量は足元で目標値の数パーセント程度であった。ところが数年後に迫る施設完成年の直前には一気に契約が跳ね上がる計画となっており、新人ながら訝しいと思ったものだ。
●問題後送り体質
 一度走り始めたハード整備計画は、よほどの情勢変化がない限り見直さず突き進むのが往年の公共的事業。工業用水道整備も例に漏れず20年程の計画期間中に企業進出が順次増えて緩やかに売水量も増える見立てが、不況で実績伸び悩みの中で、整備完了間際に劇的に売れる計画へと毎年後送りされていた。
●役所仕事の構造問題
 20年程に亘る工業用水道建設の完了が数年後に迫る中で、計画規模未達分の8割以上の水量が駆け込み的に一気に売れる見込み…。毎年の補助金申請等に際し、契約水量を完売ありきに合わせて先送りしてきた果ての異様な計画。内外の関係者がよくも認めてきたものだと役所仕事に唖然とする。
●その時は来た
 しかし問題から逃げられない時は来てしまった。よりによって私が未だ何も知らない新採用の段階に。例年の事業計画ヒアリングの際に、補助金等の協議の相手方となる国の出先機関の担当官は、あと2~3年で残る8割の売水契約を見込む非現実的な計画は認められないと遂に言い放った。
 国から計画認可が下りなければ補助金や起債(公的借金)が出来ず事業が停止する。無理な売水計画は長年に亘るお互い暗黙の了解の積み重ねだったはずだが、今般着任した国担当官は建前論のみで強行に指摘してくる。我々は豆鉄砲をくらった鳩である。取り敢えず頭を抱えて帰路の新幹線に乗るしかなかった。
●最初の係長異動
 2~3年程で人事異動する役所では、喫緊の課題以外は意図の如何によらず後任へ丸投げしがちだ。どうにも先送り出来ない段階で引き継いだ職員は長年に亘る大勢の作為無作為の弊害を一身に被ることとなる。これまで定型的業務畑中心だった係長は課題を抱え込み遂に精神を病み期中で転出してしまった。
●一気に押し付けへ
 通例、新採用職員を受け入れる職場は、新人がコケず成長していけるよう、仕事の量質ともにさほど重くなく人員体制も懐の深いものであるが、先送り問題の待ったなし対応策を突きつけられた後任係長は着任早々、末席職員の私に「君は大卒としての責を果たすべきだ」と押しつける始末。
●老朽化課題との組合せ
 飲み会で形成した人間関係の円満さで事を運ぶのが得意技で、難しい課題は部下に抽象論で言い渡すだけの叩き上げの係長の下、当時の私は自分が全責任を負うかの如く課題を受け止め、庁内関係者にとって前例の無い問題への対応策について、職場内外へ有意な情報やノウハウを求め回った。
 現在のようにインターネットなど無い時代、昼間は庁内に散在する各種文献や過去の資料等を調べたり、電話での照会や聴き取り等を重ね、夜に上司伺い用の資料を作成する日々。予算執行の都合や内外との手続きの期限など勘案すると日程はタイトであり、超過勤務は毎晩22:00過ぎに及んだ。
●驚きのドッキング計画
 若さ故に独りよがり気味に悩んでいたが、そうはいっても仕事は組織で動いていた。工業用水建設継続のための年次計画の認可に向けて投資に見合う売水量確保策をどうするか、国担当官とのやりとりに同行してくれていた関係課の年配いぶし銀の技術系係長が、疲労困憊する私に発案を語り始めた。
 売水不振で過剰投資を懸念され、大方の施設建設が進んでいるのに待ったをかけられた工業用水道事業とは別の地区に、かなり以前に整備されて施設の老朽化に悩む工業用水道を抱えていた。この旧施設と建設中施設を配管で結べば、つまり「ドッキング」させれば、未売水問題と老朽化対策が一気に解消できるというのだ。

(後編へ続く)

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