新潟久紀ブログ版retrospective

地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)基調講演聴取メモ

■地方創生フォーラムin 新潟
日時:令和元年11月13日(水)
会場:朱鷺メッセ 国際会議室

●基調講演
「人口減少の現状と課題について」   増田寛也氏

※下記は傍聴者の個人的メモによるものです。

○新潟県は日本海側の中心県として産業が伸びるポテンシャルを持っている。それを企業や行政がどのように刺激して活性化させていくかがポイントとなる。
○まち・ひと・しごと創生法が公布・施行されてから5年経過するが、「地方におけるしごとの創出」に最も注力した。
○人口減少下のまちのあり方は、都市計画やまちづくりの中で大きな課題となっている。どのような手法でコンパクト化を図るかなど、様々な議論がある。
○まち・ひと・しごと創生法の目的は、①「人口減少に歯止めをかけること」、②「東京圏への人口の過度な集中を是正すること」、③「それぞれの地域で住みよい環境を確保すること」。このうち③については、30年前の「ふるさと創生事業」などで昔から試みてきている。
○政府が掲げた「合計特殊出生率1.8」や、「東京圏への転出入を2020年に均衡させる」といった目標は、残念ながら達成が難しい状況にある。
○都市部に人口が集中することによる集積の利益は否定できないが、東京のように過度に人口が集中してしまうと、通勤時間が長くなるなど様々な弊害が出てくる。
○生涯をかけるに足るだけのしごとの場が地方にでき上がってくることにこそ意味がある。
○自然増の実現は時間もかかり難しいため、社会増に向けた施策に注力する自治体が多い。その結果、人口の奪い合いのような構図になっている地域もある。
○政令市などの中枢都市は人口減少が比較的緩やかなため、住民の危機意識が薄い。一方、地方の中小都市では、首長が危機感をもって取り組み、成果を出しているところもある。
○地方の中小都市では人材不足が著しいため、何かしらの手当をもっと考えていく必要がある。
○新しい施策を開始するには地方創生推進交付金のような呼び水が必要となるが、交付金の活用が行政側の成果にもなることから、行政が前面に出てしまう傾向がある。本来は、民間の自由な発想や力を生かすべきである。
○地方では人口流出が進み、人手不足に陥っている。新潟市も東京圏への転出超過が多いが、東京から人を呼び込むくらいの実力を持ってほしい。
○東京圏への転出超過が多い都市ほど、男性よりも女性の方が多く転出している傾向がある。
○ほとんどは大学進学か就職のタイミングで転出しているので、転出者の概ね8割以上が20代以下ということになる。
○働き方や働く場に対しての不満が女性の転出を招いている。
○18~34歳の若年女性は、親や地元に対して強い閉塞感や息苦しさを感じて転出している可能性もある。
○地方から東京へ転入すると、そこから更に東京から転出する方は非常に少ない。特に女性は東京に転入すると、地方に出なくなる傾向が非常に強い。
○東京圏でも特に23区を中心に人口が増えている。既に日本全体は人口減少に入っているが、割合で見ると東京圏人口の比重が上がってきている。
○問題は、全国の出生数に占める東京圏の割合が増えていること。東京生まれで地方での生活実感がなく、東京の生活しか知らないといった方が増えて3割近くになっている。
○今年の出生数は90万人を切る見込み。100万人を切ったのは4年前くらいだが、今、その足音がどんどん早くなっている。東京圏は母数が大きいため、東京生まれの子どもたちの割合が増えている。
○地方を知らない東京圏出身者が増えれば、結果的にUターンが成立しなくなり、Iターンでしか地方に行く機会がなくなる。そういう時代が足元に近づいており、踏ん張らないといけない時期に来ている。
○女性が抱いている地元に対しての閉塞感を変えない限り、東京一極集中の構造は変わってこない。地方を見る若年女性の目、そして働く場を切り替えていかなければならない。
○ほとんどの市町村は20~24歳の就職期に東京へ出ていく割合が最も多いが、大阪市だけは25~29歳の層が一番多い。アンケートによると、培ってきたキャリアを生かすために転職で東京圏へ出る女性が多いことが要因ではないかと推測される。
○福岡の女性の転出傾向が顕著なのに対し、神戸や京都は女性が地元に残る傾向にある。その理由は仕事の場だけではなく、町の雰囲気やアフター5など、女性の視点から見て、そこにもっと長くいたい、生活したいという思いがあるのではないか。
○男女問わず、ずっと地元にいてもらうことを狙うべきではない。色々なところで多様な経験を積んで自分を磨き、いずれ愛着のある地元で就職なり起業をして地元を支えるチャンスを生かせるような都市の魅力をつけてほしい。
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○地方創生は来年から第2期が始まる。第2期における新たな視点の中でも特に「女性」、「外国人」、「関係人口」、「Society5.0」、「SDGs」に重点を置いて考えなければならない。
○女性については、働く場を地域で作り出すことにウェイトを置いていくべき。夫婦であれば男性も協力するような取組がなければならない。
○外国人の比重が大きい地域は、外国の方が暮らしやすい環境をどう作っていくか。
○地方創生推進交付金も活用しながら、色々なつながりを通じて関係人口を増やしていけるよう、各自治体も工夫すると良い。
○Society5.0では、ICTやAI、ロボット、ドローンなどを駆使して農業や観光など各分野でモデル事業を実施し、良い成果のあるものはどんどん取り入れれば良い。中でもいち早く社会実装してほしいのは、「医療」と「教育」。
○岩手県知事時代に都会から岩手に移住した方から聞いた話では、都会から自然豊かな地方に移住して生活を満喫していても、「将来大病したときに地方の医療水準で大丈夫なのか」、「子どもが地方で暮らした場合、孫は良い教育を受けられるのか」といった不安が、地方で暮らすハードルになっている。
○地方で暮らす際の閉塞感や教育格差が、東京や都市部に人口が集中する大きな原因ではないか。良い働く場を地方に作っても、そこを変えない限り流れは変わらない。様々な場面において、地方で暮らす際のメリットを示していかなければならない。
○患者への身体の負担を軽減できる手術支援ロボットの活用が進んでいる。遠隔医療は医療制度上の課題もあって十分に活用されているとまでは言えないが、5Gにより遠隔地でも瞬時の動作が可能となり、通信環境や人員体制の面でも安全に遠隔医療ができるようになれば、地方で暮らす際の医療面のハンデをかなり解消できる。
○離島だと高等学校以降の教育はなかなか難しいが、今はタブレットを使えば遠隔地でも専門の先生によって子どもの教育レベルを上げることができる。
○Society5.0といったテクノロジー関係は、地方の生活を良くしていく上で活用が期待される。
○都市部では既にタクシーやバスなど交通手段が十分用意されているが、地方ではいずれ実用化されるであろう自動運転が高齢者等の足として活用できる。
○コストなどの課題が出てくるかもしれないが、農業でもドローンを使用して病害虫を発見して農薬を的確に散布すると、農薬の噴霧量が99パーセント削減できるという話を以前聞いたことがある。
○各地域で色々な工夫をして生産性を上げ、テクノロジーをうまく取り込むことで、地方の相対的な暮らしやすさや魅力を増すことができるのではないか。
○日本が成熟国家として一番のスピードで人口減少に直面している。地方消滅を阻止するという意味で、きちんとした危機感を共有して行動につなげ、常識にとらわれない大胆な改革を行うべく、全国各地域で様々な地方創生の取組みが行われてきた。
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○全体の産業分類でいうと、製造業や建設業などが付加価値の創出につながっている。また、ものづくりが盛んであることなどから、従事者でも製造業と建設業に厚みがある。
○電力・ガス・熱供給、情報通信の産業波及効果が高い。
○新潟県は域外から稼いでおり、県際収支の黒字化に貢献しているのは、電力・ガス・熱供給や、生産用機械、電子部品、金属など。通常ここに農業は入ってこないが、新潟は農業が強く、3次産業の対個人サービスの次に入ってきている。
○生産人口減少に対する活性化の切り口として「デジタル化による生産性改善」とあるが、経済学の原理と一緒で、生産性を上げれば何ら経済的には問題ない。
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○地域経済は、地域外を主な市場とする「域外市場産業(製造業、農業、観光)」と、地域内を主な市場とする「域内市場産業」の二つに分けることができる。地域内循環だけでは限りがあるため、域外から資金を流入させる域外市場産業が地域経済の心臓部であり、域外から資金を稼いでくる産業の集積を促進して競争力を強化することが重要。
○地域における中核的な産業をうまく作り出し、強化させることが必要。そして、それぞれの段階で域外産業、地域内で回っていくものをどう循環させていくか。それぞれ必要な手立てを講じていかなければいけない。
○RESAS(地域経済分析システム)は、様々な企業の取引関係や、全国ベースの仕入れ販売のつながりなどが分かるようになっているので、財政的支援の対象を選定する際の考察に活用できる。
○データベースで産業を分析し、やるべき手段を考えていかなければ、産業の強化につながらない。
○島根県の浜田市がシングルマザー向けの支援制度に力を入れたところ、関西方面からシングルマザーの方が相当数移住したと聞いた。
○ある企業は、会社の敷地に保育施設を作り、従業員だけでなく周辺の人たちの保育の受け皿にしたところ、若い女性の働き場も増え、その好循環が評価されてステータスも上がり、女性が本業の方でも増えてくるようになったと聞いた。
○今、大企業を中心に兼業・副業で、もっと自由な働き方を認める企業が出てきている。地方では事業承継、後継者不足で苦労しているが、相談するアドバイザーがいない。地方を支援する意向を持つ人が相当多く出てきているので、そういう制度を使うのも選択肢の一つ。
○デジタル活用している企業はまだ4割以下だが、どんどん活用すべき。テクノロジーの活用・利活用は、IT人材がいないときはそれをみんなでうまくシェアしていくことがあって良い。
○産業の強化は、「まち・ひと・しごと」の中で最優先に取り組むべきものであり、本来は地銀がそういった機能をもっと果たすべきだが、地銀も低金利や人口減少で本業が苦戦しているので余裕がない。それぞれの地域で、地域なりの工夫を生み出して乗り越えていかなければいけない。
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○世阿弥によると、「初心忘れるべからず」というのは「おそれず変化し続けなさい」ということ。人口減少で都市のスポンジ化が進み、コミュニティも成り立たなくなるほど状況が大きく変わってきている。地域が変わるのは非常に難しいと思うが、本質を見誤らずに何を変えるべきか考えていかなければならない。
○地域外からどれだけ稼ぎ、それが地域内でどれだけ循環しているか。その循環の形をしっかりと見た上で、どこにメスを入れたらいいのか。それにふさわしい人材は、これからどう強化していけば良いのか。そういった形で、次の議論につなげていってほしい。
○1次産業だけでは食べていけなくなっているので、観光と組み合わせるなど、6次化が求められる。そうしたときに温泉資源の有無は大きい。また、新潟は各地域に刮目すべき芸能が残っているので、そういったものを組み合わせれば1次産業も伸びてくる。
○南北に広がりがあって多彩なものがあるところも新潟の魅力ではないか。
○産業のことを考える上では、高等教育機関がどれだけそこにあるのかどうかが重要。新潟の場合、かなりの高等教育機関が展開している。
○産業界から見ると、大学よりもむしろ高校の専門高等学校がさらに貴重かもしれないが、そうしたものも新潟にはあるので、産学連携をとりやすい。それをこれから前向きにどのように生かしていくのか。商工会議所、行政、大学、産業界も含めたコンソーシアムを作って、これから先につなげていってほしい。
○地域の大学は、地域の産業や、地域課題の解決にもっと目を向けるべき。新潟でも高等教育機関を、大学と行政だけではなく、産業界も含めてどう生かしていくべきか。さらに強化していくと良い。
○専門教育に特化した特色ある高校も有力な材料になる。岩手県知事時代、高校を地元の人材供給源として位置付けるため、地元の自動車産業に供給する人材には2年間の専攻過程をつけて計5年間教育し、卒業後は岩手にあるTOYOTAの東北拠点に就職できる仕組みを作った。
○産業界からすると、農業であれ、工業であれ、専門教育をもっと活かしてレベルの高いワーカーを増やしていくことが非常に有効な場合が多い。
以上

(「地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)基調講演聴取メモ」終わり。「地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)パネルディスカッション聴取メモ(前編)」に続きます。)
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