新潟久紀ブログ版retrospective

地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)パネルディスカッション聴取メモ(前編)

■地方創生フォーラムin 新潟
日時:令和元年11月13日(水)
会場:朱鷺メッセ 国際会議室

●パネルディスカッション
「若者にとっての新潟らしく魅力ある多様な働く場づくりに向けて」(前編)

(コーディネーター)
 ○新潟県では東京圏への転出が多く、特に女性の転出が多い。転出が多いのは、専門学校や大学を卒業する20~24歳の就業期の年代。今年3月に新潟県が実施した調査では、県内大学・短大に進学した本県出身の学生のうち、県内企業に就職するのはおよそ7割で、残り3割が県外で就職している。また、県外大学等に進学後、県内に戻り県内就職する学生はおよそ3割にとどまっている。
 ○新潟県では、人口減少問題への対応、地方創生への推進に向けて、若者の県内企業への就職促進や、U・Iターン関心者の掘り起こしと受け入れ体制の充実など、様々な施策を展開している。
○本日は、「若者にとっての新潟らしく魅力ある多様な働く場づくりに向けて」をテーマとして、民間の視点から、「魅力的な働く場」、「多様な働き方が可能となる雇用の創出」、「女性にとっての魅力ある働く場」、「これからの若者に選ばれる企業であるために必要なこと」、「新潟で働くよさ・強み」についてディスカッションしていく。まずパネリストに、自己紹介と合わせ、魅力的な働く場の「魅力」をどう捉えているか聞いていきたい。
(パネラーA)
 ○当社では、金属製折板屋根構成部品の開発、製造販売、ソーラーパネルの取付金具の製造販売、倉庫・体育館・駅舎、空港・ターミナルビル等の大型建築の屋根に使われる部品を製造販売している。
○認識してほしいのは、特別な物を作っている会社ではないということ。この製品や仕事に何ら魅力はない。普通の、その辺に転がっている中小企業、町工場である。
○その町工場が、どのようなことをやって賞を受賞しているのか。特に注目してほしいのが、2018年に厚生労働省に表彰された「イクメン企業アワード」。男性の育休で一等賞を頂戴した。今年になってから「ホワイト企業アワード」を受賞し、去年、今年と当社が日本一のホワイト企業だと認めていただいた。
○労働面では、平成4年にすでに完全週休二日制を行っている。ほとんどの社員が有給を取得しているので、取得しやすい雰囲気づくりができているのだと思う。有給休暇は1時間単位で取得可能。1日何回でも取ることができる。
○特徴的なのは記念日休暇。以前はバースデー休暇と言っていたが、それだと誕生月にしか取れないので、何でも適用できる記念日休暇というものを設けた。また、男性の育児休業は取得率100パーセントである。
○4年ほど前からほぼ残業ゼロで、サービス残業は許していない。見つかった場合は懲戒退職と、大変厳しくしている。また、残業は1分単位で管理している。
○副業・兼業も一切規制がなく、就業規則でもこの欄は削除している。
○禁煙を徹底しており、就業時間中は外出先だろうと一切喫煙してはならない。全拠点の喫煙所もなくし、就業規則でも禁煙をうたっている。
○社員が重い病気にかかったり、交通事故に遭遇したり、災害に遭ってしまったりして就業できなくなった場合、当社の籍から離れたとしても、65歳までは就業時の所得の3分の2が支給され続ける。これは所得税の対象外となるため手取りベースでは80パーセントになる。
 ○この結果、新卒採用でも10倍から20倍の競争率になる。中途採用でもほぼ同じ。大変素晴らしい人材が当社を見つけて応募してきてくれるので、当社は人手には困っておらす、人材難でもない。
○また、4年前から社員たちの子どもが多く生まれるようになっており、これは今の少子化対策の答えになってくるのではないか。
(コーディネーター)
 ○優秀な社員が見つけてくれるというのは、どのようにして優秀な人材が集まるのか。
(パネラーA)
 ○ホームページなどに載せたりするだけで見つけて来てくれる。自分がイメージしている会社と合致している会社がないか学生自らが探し、当社を見つけてくれる。このような積極性のある人はとても優秀である。
(コーディネーター)
 ○人材確保に苦戦している企業も多いと思うが、成果を挙げている一番の理由は、今挙げられた労働環境の充実が理由なのか。
(パネラーA)
 ○労働環境に対して先進性があるということで来てくれる傾向にある。
(コーディネーター)
 ○若者世代は、仕事の内容はもちろん、働く場の環境や条件といったものも重視していると感じているか。
(パネラーA)
 ○先ほどサービス残業がないと言ったが、とても厳しく制限している。そういった面で、労働環境が非常に整っているという面で来てくれる学生が多い。
(コーディネーター)
 ○魅力ある働く場を一言で言うとどういう場か。
(パネラーA)
 ○自分の会社が安心できる、信頼できるということ。仕事を通じて作っている製品に誇り、自信を持っている。仕事を通じて、自分の会社は大丈夫だという確信を持ってくれている。
○あとは、働きやすい環境で、安心して子どもを作り、必ず男性が育休を取れること。当社の場合は2週間以上取らなければいけない。上限は1年まで。8週間以内に育休を取ると、もう1回取ることができるようになっている。
(コーディネーター)
 ○続いて、中央との距離や時間に縛られず、自然環境の身近さなどで、若者に選ばれる新しい働き方としてサテライトオフィスを実践しているパネラーBさんに伺いたい。
(パネラーB)
 ○本社は東京の日本橋で、それ以外に大阪と名古屋と福岡に拠点があり、上越にはサテライトオフィスを構えている。上越以外は営業拠点などもあるが、上越は開発部隊だけ。設立が2006年3月で14期目。当社代表が妙高市出身で、上越市の高田高校卒業生であり、そういった縁もあり、上越にオフィスを構えている。
 ○IT企業であり、クラウドインテグレーション事業と製品事業の二つの柱を持っている。クラウドインテグレーション事業は、企業のお客様向けにオーダーメイドのシステムを作る部門。製品事業は、自社製品を作る部門で、我々がこういった製品があると仕事がしやすくなる、楽になるといったものを作り提供している。現在4,000案件導入している。業種を問わず対応しており、リピーターも増えている。
○創業以来、順調に売り上げを伸ばしており、2015年にマザーズに上場。昨年11月27日に東証一部に上場し、そろそろ1周年となる。社員には厚切りジェイソンがおり、お笑い芸人と当社、どちらが副業なのか本人にも分からないような多様な働き方をする社員もいる会社である。
○私は製品事業で開発を担当している。もともとは千葉県千葉市出身で、2014年9月に当社に入社。2017年4月に上越市にサテライトオフィスができ、そのタイミングで移住した。当初は、半年から1年くらいの転勤という形だったが、上越市には自然もあり住みやすいので、引き続き住んでいる状態である。
 ○我々が考える魅力ある働く場は、定期的に新しいことにチャレンジできることと考えている。IT業界では、必ず新しい技術などが多く出てくるので、新しいことにどんどんチャレンジしていかなければいけない環境であり、それがIT業界の魅力の一つである。
○当社では、新しいことにチャレンジしやすい環境を提供している。上越オフィスでは町家と古民家をリノベーションしたオフィスを使っており、落ち着いた雰囲気で仕事ができる環境を作り出すことはもちろんだが、上越市で多い町家の空き家をどうにかしたいという思いで、地域貢献も意図している。
○プログラミング教室も定期的に実施し、地域とのつながりが生まれる状態を作っている。つながりが生まれると地域に受け入れられやすい環境になり、生活基盤がきちんとできるため、仕事をしやすい環境が作れる。
(コーディネーター)
 ○上越地域は、北陸新幹線開業によるアクセスの良さなども選ばれた理由として挙げられるのか。
パネラーB
 ○地元貢献もあったとは思うが、やはり職場としては北陸新幹線ができたということが大きい。直通で東京から2時間くらいで行けるため、何か困ったことがあったときにすぐ東京へ行けるという利点はある。
(コーディネーター)
 ○上越オフィスの7名中6名がその土地とゆかりのない方ということだが、地域の方と溶け込んでいるか。
(パネラーB)
 ○町家を再生したということもあって、普通のオフィスに入るよりは注目されやすく、近づいてくれる人も多い。色々な方とのつながりが広がっている。
(コーディネーター)
 ○数年間こちらで生活の拠点を移して仕事をしてみて、どのような利点を感じているか。
(パネラーB)
 ○東京だと、私自身も1時間20分くらい通勤にかかっていたが、それが今徒歩10分なので、近いところに住めているとか、一番遠くの人でも車で20分程度と、満員電車に揺られなくて済むというのが一番良いところである。
○自然が多く、休日に気分転換しやすいというところも利点。東京は色々あるが、あり過ぎるということもあり、そういう部分でも新潟が気に入っている。
(コーディネーター)
 ○続いて、農作以外の作物にも取り組み、ICTによる省力化や稼げる農業をはじめとした雇用、就農者の定着にも取り組んでいるパネラーCさんに伺いたい。
(パネラーC)
 ○当社は新潟駅から直線で10キロくらいにある新潟市江南区沢海で、米、とうもろこし、キャベツ、長芋、里芋、にんじん、大根など多くの露地野菜を50ヘクタールほど栽培している。
○常勤社員は16名で、半分は個人のお客様を基本に販売している。
○私は中蒲原郡横越村で生まれ、高校卒業後は新潟市の塗料を販売する会社に営業として就職したが、その2年後に父の急病により仕方なく就農。当時は農業という仕事に全く魅力を感じられず、いつか別の仕事をしたいと考えていた。
○父が病気から回復して仕事に復帰した後は、農繁期以外は外に働きに行き、数多くの仕事を経験した。その経験は今大いに役立っている。
○当時、プロ野球の球団関係者とのつながりで球団運営の仕方を垣間見ることができ、農業もこのようにできないものかと考えた。つまり、実際動くのは選手であるが、それをフォローするマネージャーやコーチ、チームを指揮する監督がいて、さらに金銭面でフォローする球団社長やオーナーがいる球団もある。そして、それをファンが支えるという図式を描き運営している。
○平成3年にJA職員だった今の専務と出会い、野球チームのように会社を運営できないかと意気投合し、私が個人のときから続けていた有機農業の実践、さらに農家出身でなくても農業に就けるよう広く人材を集めようという思いを合い言葉に会社を設立した。
○農業は土を耕し、人類に有用な食物を生産する仕事だが、プロの農家として成果を上げるには、様々な学問や経験が必要である。社内には、土壌学や栄養学を学んだ方、また、一級整備士の資格取得者、調理師免許を持つ人、野菜ソムリエなど、それぞれ特技を持った人が日々農作業に励んでいる。
○魅力ある職場とは、特技を生かして人から認めてもらえることではないか。社員全員が、やりがいは「お客様から美味しかったと言われること」と言っている。
○また、自分で企画して主体性を持って仕事ができることが一番の魅力だと話す社員も多い。当社では最大限、それぞれの個性を生かせるよう規則を決めている。労働基準法の範囲の中で、冬時間、夏時間の設定、日曜出勤した場合には自由に、いつでも代休が取れる。
○責任分担表を作成し、経営の数値はなるべくオープンにしている。PDCAをうまく回して、苦手な部分は外部に委託し、得意な分野は別会社を作って活動している。
○インターネット販売部門が非常に順調となり、ただ農産物をネット販売するだけではもったいないと、インターネット広告の専門会社を平成26年に設立。現在、私の会社の倍の売り上げを記録し、社員は30名。「どうしたら楽しいか」ということを基本コンセプトにしている。
(コーディネーター)
 ○どのような方が入社されているか。
(パネラーC)
 ○当社では現場で働く人を募集したことはない。ホームページを見て、ぜひとも働きたいという方が多い。特殊性はあるが、仕事が農業でも待遇は会社員並みということを心がけている。
(コーディネーター)
 ○若者から選ばれるためには何が大事だと考えるか。
(パネラーA)
 ○当社を選ぶ若者は、有休や育休の取りやすさなどで選んでくれているのではないか。その点について当社が飛び抜けていて、それで選ばれていると思う。
(コーディネーター)
 ○働きやすい環境を整えているのは、どういった思いからか。優秀な人材を確保するために働く場の環境を整えたのか、それ以外の理由か。ずいぶん早くから完全週休二日制を導入したのは、どういった理由か。
(パネラーA)
 ○完全週休二日制やゼロ残業は、それぞれきっかけが違う。
○完全週休二日制は、土曜日の休みが毎年少しずつ増えてきたため、いずれ土曜日は休みになるだろうと考え、年間休日を41日増やして完全週休二日制とした。
○ゼロ残業は、当社に招いた講演者に「こんなに残業の多い会社を見たことがない」と言われ、すぐにその場で「来年からゼロ残業を目指す」と宣言したことがきっかけ。
(コーディネーター)
 ○ゼロ残業をする上で一番苦労した点はどのようなことか。
(パネラーA)
 ○ゼロ残業について社長として苦労した点はない。どうしたらゼロ残業になるか工夫するのは社員たちの役割である。その代わり、何をやっても良いということだけは伝えた。就業規則が追いつかないこともあるが、それぞれの立場で残業をゼロにするための工夫をみんなですることが必要。
(コーディネーター)
 ○具体的にどのように取り組まれたのか。
(パネラーA)
 ○売り上げ目標や利益目標は設定せず、経営方針を「残業ゼロ」のみとした。
(コーディネーター)
 ○基調講演で、仕事でやりがいを感じられない女性が東京圏に流出してしまっているという話もあったが、何か感じたことはあるか。
(パネラーA)
 ○女子社員が当社を辞める一番の理由は、夫の転勤である。先日も、夫が青森に転勤になったということで、女子社員がついていったケースがある。労働条件は当社の方が良いはずだが、男性中心の社会であるために男性が遠くへ行くとなると女性の方がついていってしまう。
(コーディネーター)
 ○女性が働き続けることが家庭の事情等で妨げられてしまい、キャリアが築けないというのは感じるか。
(パネラーA)
 ○これは完全に文化だと思う。女性は男性についていくものだという定着概念。これが少子化につながっていくのだと思うが、男性に尽くす女性こそが美徳であるということがどうしても離れないのではないか。
(コーディネーター)
 ○Bさんのところでは、優秀な人材を確保する点において苦労はあるか。
(パネラーB)
 ○正直なところ、結構苦労している。東京が本社ということもあるが、色々なところで人材募集がされ、売り手市場になっている。そのため、収入がいいところに流れてしまうことがある。
○当社はできて14期だが、やはりまだベンチャー気質が抜けていない部分があり、制度が追いついていない。そういったところで他の強豪に負けてしまって、内定を出しても流れていってしまうことがあり、最近は難航している。
(コーディネーター)
 ○そのために何か取り組んでいることはあるか。
(パネラーB)
 ○1時間ごとの有給取得は今月からできるようになった。
○今までIT業界では、エンジニアがいて、その後プログラムをやって、徐々に上の階層にいって、最後は人の管理をしていくというのがキャリアプランとしてまかり通っていたが、今ではずっとエンジニアとして現場でプログラムを作っていきたいという人もいる。管理職にならなくても管理職と同等の給与がもらえるスペシャリスト制度という形で、ずっとエンジニアのまま、それなりにお金を稼げる場を作るといった改革をしている。すぐに成果が出るものではないが、テコ入れをし始めているところである。
(コーディネーター)
 ○東京なり福岡なりの大都市で採用されたのに、上越のサテライトオフィスへ転勤だと言われて辞退するような方はいないのか。
(パネラーB)
 ○実際、辞退した人が一人いた。もちろん、辞令を出す前の段階で、どうかという話はするし、そこで無理に行ってこいということはないよう配慮はしている。
(コーディネーター)
 ○何が一番ネックになっているのか。
(パネラーB)
 ○先ほど転勤の話があったが、家族がいて東京など各拠点で生活基盤があるのに、他のところで作り直すのも大変だという人もいる。
○当社は、どこの拠点にいっても仕事の内容は変わらないので、どこでも給与は変わらず、私も東京で働く同じクラスの人と同じ金額で働いている。給与のマイナス面はないけれど、生活面について思うところがあって断りを入れることはあると思う。
(コーディネーター)
 ○女性がキャリアを築ける職場であるかという点に関しては、農業という分野に関して立川さんはどのように感じているか。
(パネラーC)
 ○私は子どもが4人いるが、先ほどの増田先生の話にあったように、そのうちの3人が東京の大学に進学し、一人は10年間、ほかの二人は数年間、東京で勤めて帰ってきた。
○一番のポイントは働き口があるかどうか。一番下の娘の夫は鹿児島出身で、鹿児島と新潟でどちらが働けるかといったときに、新潟のほうが就職に有利だと。やはり一番のポイントは、農業であろうがなかろうが、働く場があること。今はSNSの時代なので、新潟のハローワークへ来てからではなく、下調べをしてほぼ大丈夫という段階になってから来るということが肝心だと思う。
○金額からすると、農業は生産額もそれほど多くないが、実は自家消費分が多いので、数字以上に農業の魅力を感じている人が多いのではないか。
○県外の人に新潟の魅力は何かと聞くと、ほとんどの人が「酒と米」と言うので、そこに磨きをかけて、「こんなにおいしい米を自分で作ってみないか」というのは、我々の業界ではすごいアピールになる。
(パネラーD)
 ○白石さんは上越オフィスで働いていて、満員電車や職住近接の話をしていたが、これまで仕事をして暮らしてきたなかで、デメリットと感じるものはあるか。
(パネラーB)
 ○近くでちょっとした買い物がしづらい。東京だと電車もあるが、基本的に徒歩圏で色々なところへ買い物に行ける。上越だと、冬に入るので服を買いに行こうかというときにも、近くにないということがある。また、少し違ったものを買いたいときは量販店では難しいので、出張を兼ねて東京へ行ったときに買うことになってしまうことが多い。そういうところは不便に感じる。
(パネラーD)
 ○白石さんのところでは勤務地によって給与が変わらないということだが、上越の物価からすると、それはすごくメリットになる。
(パネラーB)
 ○家賃が安いのでメリットはある。ただ、東京だと車を持つ必要がない。上越では車を持たなければいけないので、その分で家賃分が相殺されてしまう可能性があるかもしれない。
(パネラーD)
 ○冷静に比較してみると、地方暮らしのデメリットがある。実際にBさんが感じている、ちょっとした買い物などは都会へ行かないとなかなかできないということ。しかし、それ以外のほとんどのことは解消できる。これは逆にいうとむしろメリットで、魅力に変えていけるのではないかと思う。実際にそこにいる人が言わないと、迫力を持って伝わらない。
○今日、配られている資料で、そのあたりをできるだけ実感を持って埋めようと、新潟暮らし推進課で作られた良いパンフレットがある。ただ、県が作ると、良いところばかりを取り入れていると思われがちである。そこで、Bさんのような方に、色々なところへ行ってもらって、実感をもって伝えてもらうと、地域の見え方や良さが浮き上がり、効果が出てくるのではないか。
 ○Aさんの話に大変感心した。労働環境改善として完全週休二日制やゼロ残業に取り組むと労働時間が非常に少なくなるので、その減少に見合うだけの生産性の向上を行って釣り合いをとった後でようやく取り組むのが普通だと思う。
○こういった取組を矢継ぎ早に行った結果として生産性が向上したとか、収益が上がったとか、目に見えて具体的なものがあったのか。あるいは、それも計算しつつ、踏み切ったのか、Aさんにお聞きしたい。
(パネラーA)
 ○計算して取り組んだのは完全週休二日制。年間休日をいきなり41日増やした際は机上のシミュレーションを行ったが、実際はシミュレーション以上の効果があった。
○ゼロ残業は完全に挑発に乗っただけなので、根拠があったわけではない。これは社員を信じるしかない。信じるに足る社員たちであるということだけは確信していたが、経営者としては覚悟が必要だった。「売り上げが減ってもいいから」とはっきり言った。「納期に間に合わずお客からの信用をなくしたらどうするのか」との問いは一番こたえたが、「お客からの信用をなくしても残業はゼロにする」と答え、逃げ道を完全になくした。「それならお客さんの信用をなくしても仕方ない」という社員は一人もいないため、逃げ道をなくされた社員は困って何とかしようとする。社員みんなで就業時間中に知恵を出してくれた。
(コーディネーター)
 ○結果的なのかも知れないが、そういった取組みを先駆けてやっていたからこそ、若者世代に選ばれる企業であると言えるのではないかと思う。
○次は、新潟らしさや新潟の強み、新潟で働くメリットについて伺いたい。
(パネラーC)
 ○大手居酒屋チェーン店に勤めていた方が当社で研修中に掘って食べた長芋に衝撃を受け、自分で農業を始めた例がある。新潟の人は普通においしいものを食べているのだとつくづく感じた。
○金儲けだけではなく、美しい景色や命の息吹を聞くことができる農業の魅力を伝えられれば、産業として魅力あるものに見えてくるのではないか。
(コーディネーター)
 ○農業に全国から人を集められるポテンシャルがあることが、今の話からも伺えるのではないか。
○Bさんは、新潟の強み、新潟で働くメリットをどう考えているか。
(パネラーB)
 ○私は千葉出身だが、やはり「自然が多い」というのが一番の強みではないか。
○上越は海も山も近く休日にゆったりできる。食べ物もおいしい。
○業種にもよるが、IT企業はインターネット回線があれば東京と同じような環境で仕事ができる。そうなると新潟以外でもできてしまうことになるが、地方でも東京と同じ働き方ができるというのは一つのメリットではないか。
(コーディネーター)
 ○サテライトオフィスに注力した自治体で移住者が増えた例もあるようだが、新潟はそうでもない。アクセスは良いので新潟も増えてもいいように思えるが、何か阻害要因はあるか。
(パネラーB)
 ○阻害要因までは分からないが、増えているところは自治体が誘致活動をしていると聞いている。新潟でも誘致をやっていることとか、受け入れやすい状況を作っていることが伝われば、選択肢として挙がってくるのではないか。
(コーディネーター)
 ○Aさんは新潟の強みをどのように考えているか。
(パネラーA)
○ネット環境が整えば可能性としてはどこでも仕事ができることになるので、仕事から離れた後にどういう環境が待っているかが勝負の分かれ目なのではないか。
○私が新潟でなければだめだと思うものは、ものづくりである。私は世界中を駆けずり回っているが、新潟県ほどものづくりが集積された場所は見当たらない。日本では、かろうじて東大阪、大田区があるが、そこと比較しても、県央地区ははるかに優れている。大田区、東大阪、燕三条のようなところは世界中探してもなかなかない。
○県央地区がすごいのは、木工があること。他はこれがない。山も何でも揃っている。友人であるスノーピークの山井さんとも「ここを拠点にしない意味がむしろ見つからない」とよく話している。
○新潟に来て働いてもらい、何かのきっかけで起業してもらうととても良い。可能性に満ちた場所だと思う。ここ以上の場所が世界中のどこかにあったら教えてほしい。それくらいのところである。

===後編に続く===
(「地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)パネルディスカッション聴取メモ(前編)」終わり。「地方創生フォーラムin 新潟(R元.11.13)パネルディスカッション聴取メモ(後編)」に続きます。)
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