新潟久紀ブログ版retrospective

財政課15「査定チーム入りで交付税担当(その3)」編

●査定チーム入りで交付税担当(その3)

 交付税担当は、如何に膨大な量とは言え調査票を関係課へばらまけば、後は提出されてくるものを集計して国へ報告すれば終わり…などと思うなかれ。提出されてくる調査票の点検精査を決して怠ることはできない。交付税算定のモトになる関係課からの報告数値において数字的に小さな誤差でも、単価を掛けて補正係数による算定式に乗せるとあら不思議、巨額の差異につながってしまうこともある。そうなれば、貴重な交付税収入を取り損なってしまうことになるのだ。関係課にしてみると毎年似たような調査報告作業なので前年の数値の拾い方を見ておざなりに報告してくる担当も居る。特に担当が異動して新任になった課は要注意で、調査票の細かな変更などを見落としてズレた計数を報告してくる部署も散見されるのだ。財政課は実質スタッフ制であり、業務を係組織というよりも担当が各々で仕切る。交付税算定に誤りあらば私の責任が重大なのだ。
 そうこうして3か月ほど掛けて関係課から提出される調査票の点検精査と国への報告、国との内容確認などのやり取りを終えると、7月上旬に今年度の交付税額を確定するための算定作業日がやってくる。再び、全国都道府県の交付税担当者が霞ヶ関に集められ、これまで取りまとめてきた数多の算定計数に基づき、基準財政需要額とそこから差し引く基準財政収入額、その結果として算出される今年の交付税配分額を確認するのだ。
 交付税は全国自治体からの関係計数に基づいて各々の配分額が算出されるが、その総額は国家予算で予め決められているので、自治体毎に各々で算定する交付税額の総和は国家予算額に予定調和させねばならない。結局は国により一元的に算定管理しなければそれは叶わないことであり、実質的に国が決定する姿は国から配分を受けるという「仕送り」の形態に見えてしまう。
 私などは"省エネ派"なので、国が一元的に算定して決定してくれれば簡単で効率的なので気にならないのだが、以前記したとおり「交付税は地方固有の財源」という哲学には重みがあるようで、国による算定結果を自治体毎に各々で間違いがないか確認しようという行事があるのだ。つまり、7月の霞ヶ関で本県の今年の交付税額はいくらですよと知らせを受けて、その内容を検算するのだ。
 国からの交付税額の告知は毎年7月7日の七夕の頃にされるので、その計数を記載した紙は「短冊」と呼ばれ、それを受け取ると急ぎ県庁にもどって検算に臨むことになる。検算結果の報告は翌日午前中が期限だ。夕方に財政課会議室に着いた私は、同じ班から2人ほど電卓たたきなどの手伝いに参加してもらって、これまで国へ提出してきた膨大な算定計数の再確認と、各々ごとに多岐に亘る算定式への落とし込みにより基準財政需要額や基準財政収入額の確認算定を始めた。
 国が示した計数票に間違いがないことを項目毎に確認していく、いわば「答え合わせ」の作業は、順調に進んで行ったが、どうしても一項目だけ計算が合わない。既に夜も22時を回っていたので、あとは私一人でということで手伝いのメンバーには帰ってもらい、誰もいなくなった財政課会議室で算定式や基礎計数の資料などを何度も見比べるが、何故算定結果が合わないのかいつまでたっても分からない。
 いよいよ午前0時を回ってしまった。非常に悔しかったがここは一旦帰宅して休み、頭をリフレッシュした方が良いかもしれない。よもやとは思うが国の算定結果に誤りがあるのかもしれない。それにしても完全に内容を精査しきった上で国に問い合わせないといけないだろう。ちょっと数字が合わないからと全国の担当から問い合わせが行けば迷惑千万に違いないのだ。
 気になって熟睡できないまま、午前6時過ぎに出勤して今一度算定資料を凝視する。「ああ、これだ」と誰も居ない財政課会議室で思わず声が出た。算定式の途中で一カ所だけ単位が異なる設定をされている部分があるのに一律の単位で記入してしまっていた部分があったのだ。気付いてしまえば極めて単純だが、入り組んだ算定式の中のほんの一部分だけの異なる単位設定であり、和算乗算の入り込みと補正係数が影響して算定結果が単純に桁違いになるものではなかったたため、気付かなかったのだ。事務仕事に往々にしてありがちな"正しいものと思い込んでしまう落とし穴"だ。一旦頭をリフレッシュしたからこそ見つけることができたのかもしれない。私は、早朝出勤しての作業で救われたことがこれまでも何度かあったが、残業が多くなったこの職務においても引き続き従前からの日課である早朝出勤を続けていこうと思ったのだ。

(「財政課15「査定チーム入りで交付税担当(その3)」編」終わり。「財政課16「交付税制度改正要望でねじりはちまきするも…」編」に続きます。)
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