新潟久紀ブログ版retrospective

財政課16「交付税制度改正要望でねじりはちまきするも…」編

●交付税制度改正要望でねじりはちまきするも…

 当初予算編成に向けた部局要求の査定作業が秋口から本格化するのに比べ、交付税担当の業務は春先からダッシュで交付税額が確定する7月にヤマを超えるので、「前輪駆動型(?)の業務」だと先輩職員は言っていた。8月以降も特別交付税という特殊な行政需要に対応する交付税の算定業務等が続いたのだが、確かに作業時間的にはピークアウトしていた。
 そうした中で上司の調整員から一つの指示を受けた。例年行事となっている交付税算定に関する要望内容を考えなさいというのだ。交付税制度は、自治体が安定的に年々の財源確保できるようにするための制度であるから、算定方法の基本的な大枠ともいえる部分は滅多に変更されないのだが、政策分野毎の項目においては、関連する法制度の改正や社会経済情勢の変化を踏まえた微修正が毎年のように施されることが通例となっている。そうした機に、自分の自治体の財政需要がより的確に算入されるよう、言葉を換えればより有利に算定してもらえるように、算定方法の改正要望を国に提出するのが本県をはじめ幾つかの自治体での習わしになっていた。
 かつての担当であった我が上司は、どれだけ新規要望項目を出せるかが担当の腕の見せ所になると鼻息が荒い。私よりもどう考えても偏差値の高そうな彼が担当の時には、歴代担当に比して多くの新規項目を産み出したようだ。しかし、この作業は後任ほど不利になる。実務担当として気がつきそうな改正要望の切り口は前任達が大方出し尽くしているのだから。
 "ねじりはちまき"をした気分で秋口は新規要望項目の検討に注力したが、かつて要望するも採択されなかった項目をアレンジして、新潟県のように間延びした県土における行政需要の掛り増しが算定に反映されるようにするための補正係数に関する提案を、新規案として捻出するのが私の為せる精一杯であった。この手の立案作業というのは本当に自分の頭の出来の程度を痛感させられるものだ。検討にあたり歴代の担当者の新規提案記録を見ていく中で彼らの凄さに落ち込みもした。
 そんな小さくも光る提案作りの注力が吹き飛んでしまうような事態が起こった。国の新年度予算の編成情報が少しずつ入ってくる中で、交付税算定方法が抜本的に変わりそうなのだ。本来地方へ配分される交付税として算定される部分の一部を「臨時財政対策債」という借金する権利に置き換えるというのだ。私が担当になった本年から臨時財政対策債の制度が従前制度の組替により新設されていたのだが、制度2年目にあたり、その置き換えを構造的に強固なものとするようなのだ。
 地方の行政需要が肥大化していく中で、交付税の原資たる国税の所定枠では配分額が間に合わなくなってきた。アシが出る部分は国の特別会計が一時肩代わりして、後々景気回復して国と地方の税収が増えれば返せるという目論みだったのだが、景気低迷で肩代わり借金は増えるばかり。国の行財政改革の一環で、あたかも国が全面責任を負うかのような国の特別会計における管理を見直し、財源不足としてアシが出る部分を国と地方で折半して、地方が負担すべき不足財源を地方が直接借金して穴埋めできるようにしたというわけだ。
 臨時財政対策債は借金だから後々返済しなければならない。その際には元利償還金の全額を交付税で補填するという。考え方の根本は特別会計方式と同じで、国の経済政策が奏功すれば税収も増えるわけだから余剰となる交付税財源を臨時財政対策債の償還財源に充てれば良いというのだ。
 臨時財政対策債制度創設の時点では、それに振り替える財政需要を理屈だてして細かく整理して見せたのだが、交付税制度そのものがマクロの財源確保政策であるし、余り細かく制度設計しても労多くして…ということもあったのか、振り替え方法も次第に大括りになってきた。また併せて、交付税算定方法の緻密さが国会議員、つまり国民から見てわかりにくく、行財政の肥大につながっているのではないかなどの議論もあり、算定方法の基本的な枠組みも、例えば、自治体の人口と面積で簡潔に算定できる部分を拡大するなど、大きく鉈が入れられることになってきた。
 そうなると、"重箱の隅をつつく"ような算定方法改正要望は意味の小さいものとなってくる。正に実務担当者の労多くして…ということだ。交付税を取り巻く矢継ぎ早の大胆な制度改革に翻弄される中で、私の拙い交付税制度改正要望は課長伺いでは鼻で笑われつつも国に提出され、案の定採択されることなく闇へと葬り去られたのであった…。残念。

(「財政課16「交付税制度改正要望で捻りはちまきするも…」終わり。「財政課17「部局査定担当で伝統の大玉送りを喰らう(その1)」編」に続きます。)
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