第113条【司法権、裁判所、特別裁判所の禁止、裁判官の独立】
日本のすべての司法権は、最高裁判所および法律で設置する一般裁判所に属する。
(2)特別裁判所および軍事法廷の設置は禁止する。行政機関は、終審(しゅうしん)として裁判を行うことができない。
(3)すべての裁判官は、良心に従い独立して職権(しょっけん)を行い、本憲法、法律ならびに有効な条約および国際法規にのみ拘束される。
第114条【最高裁判所の構成、最高裁判所の裁判官、国民審査権】
最高裁判所は、最高裁判所長官および法律の定める数のその他の裁判官で構成する。最高裁判所の裁判官は、すべて内閣が任命し公布する。
(2)最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際国民審査に付し、その後4年を経過した後初めて行われる衆議院議員総選挙の際さらに国民審査に付し、その後も同様とする。
(3)前項の国民審査において、白紙以外の有効投票のうち過半数が任期延長に反対した裁判官は、任期を終了させられる。欠員は、本憲法および法律の定めにより、すみやかに任命され補充しなければならない。
(4)審査に先立って、法律の定めにより、審査対象の裁判官の関与した事件と判決でのその裁判官の意見についての充分な記録を、最高裁判所ウェブサイトで公開しなければならない。
(5)審査に関するその他の事項は、法律で定める。
(6)最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達したときには退官する。
(7)最高裁判所のすべての裁判官は、法律の定めにより、国庫から適正な水準の報酬を受ける。
第115条【一般裁判所の裁判官】
一般裁判所の裁判官は、最高裁判所が指名した候補者の名簿によって、内閣が審査して任命し公布する。
(2)一般裁判所の裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達したときには退官する。
(3)一般裁判所のすべての裁判官は、法律の定めにより、国庫から適正な水準の報酬を受ける。
第116条【裁判官の身分保障】
裁判官は、心身の故障のために職務を執ることができないと司法上決定された場合を除いては、(イ)弾劾裁判所の判決、または(ロ)リコールによる罷免の可決、によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒(ちょうかい)処分をできない。
第117条【裁判所の規則制定権】
最高裁判所は、(イ)訴訟に関する手続についての規則、および、(ロ)弁護士に関する事項、裁判所の内部規律に関する事項および司法事務処理に関する事項についての規則、を定める権限をもつ。
(2)検察官は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
(3)最高裁判所は、一般裁判所に関する規則を定める権限を、一般裁判所に委任することができる。
第118条【合憲(ごうけん)性審査】
最高裁判所は、一切の(イ)法律、(ロ)政令、(ハ)命令、(ニ)規則、または、(ホ)行政行為が憲法に違反していないかどうかを決定する権限をもち、憲法裁判所機能をもつ、終審裁判所である。
(2)国民は、具体的被害の有無にかかわらず、特定の法律または政令が憲法違反であると考えれば、国を相手どって是正を求める訴えを起こすことができる。
(3)国民は、原告だけが直接被害を受けているものでなくても、(イ)特定の国政行為、または、(ロ)特定の違憲状態を長期間放置する立法不作為(ふさくい)、が憲法違反であると考えれば、国を相手どって是正を求める訴えを起こすことができる。ただし、短期間に同一の案件に関して多数の訴訟が提起された場合、裁判所は、法の定めによりいくつかの訴訟に統合する、または絞ることができる。
(4)最高裁判所および一般裁判所は、(イ)訴状にその事件または特定の法律もしくは政令について合憲性審査の付帯請求があれば、または、(ロ)裁判官が合憲性審査が必要と考えたときは、その事件もしくはその法律が、合憲であるか違憲(いけん)であるかを審査し、(イ)判断結果、(ロ)判断理由、および、(ハ)法律の改正の必要性があればその必要性と改正の方向、を判決で明らかにしなければならない。
第119条【裁判の公開】
裁判の弁論および判決は、公開法廷で行う。
(2)裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、弁論を、非公開で行うことができる。ただし、(イ)政治犯罪、(ロ)出版に関する犯罪、(ハ)付帯請求で合憲性審査を求められた事件、または、(ニ)本憲法で保障する国民の権利が問題となっている事件、の弁論は、常に公開しなければならない。
(3)裁判所は、法律の定めにより、裁判の弁論および判決の模様を、音声付き映像に記録して裁判所に保存する。
(4)刑事裁判の場合、裁判官全員、検察、被告人全員および弁護人全員のすべてが同意したときは、これらのいずれかから異議が出るまでの時間は、裁判の弁論もしくは判決、またその両方の模様の音声付き映像を、放送またはその裁判所ウェブサイトで、ライブ中継または録画で、公開することができる。
(5)民事裁判の場合、裁判官全員、原告全員、いればその代理人全員、被告全員、いればその代理人全員のすべてが同意したときは、これらのいずれか異議が出るまでの時間は、裁判の弁論もしくは判決、またその両方の模様の音声付き映像を、放送またはその裁判所ウェブサイトで、ライブ中継または録画で、公開することができる。
第120条【裁判の迅速性確保】
裁判所は、裁判の起訴から判決までの期間をいたずらに長くしてはならない。国以外の裁判当事者が、判決までに不当に長い期間が費やされたために被害を被ったときは、遅延の原因となった者は、法律の定めにより、裁判当事者に賠償する責任を負う。
第121条【国民の再審請求権】
確定判決の事実認定に対して、新しい証拠と他の証拠を総合的に評価して合理的な疑いを生じさせれば、裁判所に再審(さいしん)を請求できる。
第122条【裁判官のリコール】
選挙権を有する国民は、法律の定めにより、有権者数の3分の1以上の、署名または電子的署名をもって、その代表者から、選挙管理委員会に対し、最高裁判所長官を含む最高裁判所裁判官または一般裁判所裁判官の、同時に1名以上の罷免の請求をすることができる。
(2)前項の請求があったときは、選挙管理委員会は、直ちに請求の要旨を官報、政府ウェブサイト、全裁判所ウェブサイト、主要テレビ局での放送、主要全国新聞、主要全国新聞ウェブサイト、全都道府県議会ウェブサイト、および全国民への書面通知によって国民に提示しなければならない。
(3)第1項の請求があったときは、選挙管理委員会は、請求から3か月以内に、その罷免請求を有権者の投票に付さなければならない。
(4)前項の投票によって罷免請求に過半数の同意があったときは、罷免を請求された裁判官はその職をただちに失う。欠員になった最高裁判所長官または最高裁判所裁判官については、内閣がただちに別の人を任命しなければならない。欠員になった一般裁判所裁判官については、ただちに最高裁判所が候補者を指名し、内閣が審査して任命しなければならない。