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宮下洋一氏『安楽死を遂げた日本人』を読んだ

2019-11-08 19:13:53 | 
たまたま夫ちゃんが人から頂いて家に置いてあったので、宮下洋一氏の著『安楽死を遂げた日本人』を読んだ。(昨日、本屋大賞ノンフィクション大賞にノミネートされていたことを知った。確かに多くの方々にオススメしたい。大賞の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』も言うまでもなく!)



引き込まれてほぼ一気読みした。たまたまNHKスペシャルの安楽死の番組を観ていたので「あの番組の!」と繋がった。

安楽死。

私は本書を読むまで賛成派だった。自分の生き死にを自分で決めることができるというのは究極の理想だと思っていた。本書で一番多く紙面を割かれている小島ミナさんという女性のように、不治の病にかかり思考はできるものの伝達手段が徐々になくなっていき排泄を含む一切を人の介助なしには生きられない状況に陥ってしまったら・・。安楽死を選べるなら選びたくもなるだろうと思っていた。

実際、小島さんは日本からスイスに渡り安楽死によって亡くなる。「医師から与えられた致死薬で患者自身が命を絶つ行為」を「自殺幇助」というそうなのだが、小島さんは「自殺幇助」を受けて亡くなった。

安楽死といっても各国でその内容が違っており、オランダやベルギーなどで主に認められている安楽死は「医師が致死薬を投与し患者を死に至らせる行為」で正確には“積極的安楽死”と呼ばれるているそうだ。

日本では安楽死は認められていないが、安楽死の法制度化(合法化)を目指して運動している人たちもでてきている。他人ごとのように遠い目で見ながらも「自然な流れかもな」と肯定的に捉えていた。

そんな私だが、本書を読んだことで少し考え方が変わった。
著者の宮下氏は日本では安楽死についてまだまだ理解も議論も足りないと訴えているのだが、読後確かにそうであることを痛感した。

宮下氏は、日本人の中には安楽死と尊厳死の違いすら知らない人がたくさんいると書いているのだが、ズバリそれは私のことだった。そんなことすら知らない人が短格的で不正確な理解の下、安楽死賛成派となっていくことに警鐘を鳴らしており、自分のことだと気が付いてドキッとした。

また、安楽死を選ばなくともすでに日本にも緩和ケアはあるという現実。肉体的な痛みだけではなく精神的な苦痛も取り除いてくれるという。

本書を読むまで「緩和ケア」とはガン患者の人たちだけが受けられるものだと思っていたのだが、その思い込みも保険対象か否かが関係していたらしい。つまり、現在日本で行われている緩和ケアで保険対象となっているのはガンとHIVだけだという。保険対象になっていなければ現実的には選べないかもしれないが、少なくとも緩和ケアの対象は広がりつつあるようなので、安楽死を選ばずとも緩和ケアによってより良い死を実現できるかもしれない。安楽死そのものに比べ苦痛がどの程度緩和されるのかはわからないが、安楽死に代わり得る手段が他にあることを知るというのは大事なことだと思った。デスカフェ、まずは夫ちゃんと話してみるところから始めてみようと思う。理解し、お話し合いをすることがまずは重要だな。

最後に。病を抱え安楽死を考える日本人が本書には数人出てくるのだが、その人たちの“ありのままの姿”を捉えることにこだわり真摯に向き合う宮下氏のジャーナリスト魂に心から敬意を表したい。そして亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。