第3話 「普通」
「ジャイワナーゾを追うんだ!ベラーナ!」
ハッと目が覚めた守里は、呆然としたまま窓の外を見ていた。
なぜか汗をかいていたが、気になることもなくいるとセイナが現れた。
「剣、おはよう!カンナ姉が作った料理だよ!…汗…かいてるの?お風呂が先なら自分の部屋に戻っているから、あとでロロナを呼んで!」
食べようかお風呂か迷っていると、また声が頭に響いた。
「ジャイワナーゾを追うんだ!ベラーナ!」
「ジャイワナーゾを追う…」
「確かに追うことになっていた。ベラーナに頼んで…それで…」
思い出せなかったが、医者の言葉を思い出した。
「何か気がかりなことがあるかもしれないが、無理はしないことだ。「普通」とは難しいが、そうしないと声はなかなか戻らない。まあ自然に良くなることもあるから安心して良い」
「普通って難しいか…何が普通じゃないかが分からないなぁ…」
お風呂に入ることよりせっかくカンナが作ってくれたから、早く食べないと悪いと思った。
ベラーナと同じ部屋だったが、今は1人になっている。
ベラーナがどこに行っているか、考えるのはやめておこう。
麻生の部屋にベラーナがいた。
イライラを抑えようとしていたが麻生には分かっていた。
「まあ…あの状況じゃ追えないんだ、誰もね。守里君の機体も限界だし、ベラーナ機だって無理なんじゃよ」
麻生の言葉に、全てが改造し直さないといけない状況であることも分かっていた。
それが反対に守里に何もしてやれないことや、不甲斐なさを感じている。
麻生には伝わっているだろう、それがストレスだったのかもしれなかった。
ドアを叩く音がして、気付くとそこにはカンナがいた。
「守里君が食器返しに来たんだけどね、なんていうかさ、みんなこれじゃ監禁だよ。ねえ外に出る気がない?」
カンナがウインクをして、気を遣っていることが分かった。
「みんなで、それぞれの手を止めて外へ羽伸ばしに行きますかね!」
ベラーナの言葉は無線でみんなに聞こえていた。
守里以外には。
でもこれは守里にとってはどう効果が出るか分からない。
麻生は医者に相談することにした。
医者の意見は「普通」にしていることだという。
腫れ物に触るようではなく「普通」に。
麻生は独り言のように言った。
「普通ってそもそもが難しいわい!」
無線を守里には聞こえないように、ベラーナを麻生の部屋に一旦移していることもやめようと決めた。
「ベラーナ、今日から守里君の部屋に戻るんだ」
ベラーナが驚きつつどうしていて良いか聞く。
「普通じゃよ」
今度はベラーナが頭を悩ますことになった。
「じゃ、出かけますかね!」
ララがみんなを集めると、守里がくしゃみをしながら一言。
「風呂上がりですけど、出かけたいですね」
AIのロロナが留守番になり、みんなで出かけることになったが、場所は日本だった。