第2話 「親友」
狭いゲンナ号に、守里を心配していたメンバーがひしめき合っていたが限度がある。
ロロナはひたすら叫んでいた。
「重量オーバー辛いよ〜」
鏡と安藤は意識が戻っていることの安堵しつつ、自分たちの居場所がここではないことを悟っていた。
それはこの数ヶ月の間のことだったが、その間の出来事を麻生から聞いていた。
「俺たち凡人が口出しできる問題じゃないし…守里は必要なんですよね?」
麻生は言いにくそうにしている。
「守里は失声症、だったら側にいたいですよ、でも邪魔はしたくない」
安藤の言葉に麻生ははっきりとした口調で今度は言った。
「ここは定員オーバーになっている。本来私やリリアンでさえ交代に来ているほどだ。2名くらい、と思うかもしれないが、墜落しても困る」
鏡が怒って言った。
「俺たち親友ですよ。守里を置いて降りろって言うんですか?」
すかさず安藤が冷静に言った。
「心配だけど、俺たち結局この数ヶ月、守里と離れていた間何も手助けしていない。本当の親友なら…ここを離れてさ、どこかで待っていることも役目なんじゃないかな。邪魔なわけじゃないんだ。守里のためなんだって思えばさ」
安藤の言葉に鏡の表情が落ち着きを戻した。
「…日本でもイタリアでも良い、俺たちにできることってあるのかな…あれば何だってしますよ!」
鏡が腕に力を込めて話すと、麻生が言った。
「日本でジャンク屋を開いているとか…だったらちょうど良い!デロリデの部品はあるかい?」
鏡は基調を商売人のように変えて話し始めた。
「デロリデの部品はござます、かき集めて10体分くらいになりますが金額は計算して…」
あまりの変貌ぶりに安藤も含めて周りが笑うと、鏡は続けて言った。
「金額はそうですねぇ、守里を今後も頼みますってことも含めて合計0円で」
安藤と鏡は顔を見合わせた。
そしてすぐに安藤は言った。
「俺たちにできることはこれくらいですが、他にもあればここへ来てください」
地図を渡して守里の元へ行く。
まだ熱が下がったばかりのため、点滴を受けている守里。
泣きそうな鏡と安藤だったが、ほんわかしている守里に言った。
「俺たちは本当の親友だから、何かあったら命をかけるからな!」
微笑む程度の守里だったが、缶バッチを手に一言。
「ありがとう」
鏡が泣き出したが、鏡と安藤はベラーナの乗る機体の手のひらに乗って去って行った。