第4話 「トキノの分析」
トキノは長野に着いてから、ロロナとゲンナ号に残ることにした。
「…ロロナが話し相手…ってわけにはいかないわね…」
AIのロロナは動くことができないが、トキノは人間の姿をしている。
更にはジャイワナーゾの行方を密かに探すチャンスでもあった。
「守里君の失声症にも調べないと…」
失声症については大体のことは分かっていた。
失語症では声は完全に失われるものの、失声症はタイミング次第で戻る一時的なことであること。
ストレスや心的外傷(PTSD)でなり、2度と話せないわけではないことなどだった。
そもそもの原因が、ゲラザロナとジャイワナーゾとの戦いや、再び現れたことに関係するか最近の守里と比較することにした。
「どうやら本人の意識もスローテンポになるようね…」
トキノはAIであることを知っても守里も何も言わなかったことが、嬉しくもありつつ、シロハタ・カンパニーの記憶が残っていることを比べて改めて「感情」があることに気付く。
「感情っていいけど、今の守里君にはうまくコントロールできないのね…」
トキノがそう感じ取っていると同時に、守里の日常と比べることにした。
確かに行動は日常的だったが、今までの非日常的だった頃が異常過ぎたことと比べる。
そこに熱も関連したのはおそらく再び現れたジャイワナーゾ。
ジャイワナーゾの行方を追うと、不思議なことに気付く。
「軌道は…長野?」
点を追うようにすると行き先が長野県の小さな村に続いていた。
守里たちとは方向が違うが、遠くでもない。
「困ったわ…今のままじゃ機体の準備もできていないし、守里君もまだ無理だし…」
その時ジャイワナーゾの姿が消えた。
「…飛んでないわ…もしかしたら地下に施設でもあるかも…だったら生きてるってことよね…」
トキノは倉庫に行ってどれだけ機体の修復ができているか見た。
ベラーナの機体は戻っている。
Gビャクヤは8割は修復できていた。
パワークロノスの充填はできている。
麻生とセイナ、ベラーナが1日あればGビャクヤは元に戻るだろう。
ジャイワナーゾに乗っていたマイールが生きていて、地下にでも組織が出来上がっていたら…
ベラーナだけでは返り討ちもままならない。
その時、トキノは恐ろしい存在を知った。
「セイナたちのお兄さんと…マイールだわ…」
セイナたちには血の繋がっていない、行方の分からない兄がいた。
優しい存在で喧嘩などもなかったが、どこか自由でアメリカを目指すと言って旅立っていた。
姿を確認したわけではなかったが、トキノは「存在」を感じ取っていた。
ロロナを通して「意識」を集中させると「存在」は間違いない。
「アストラーダ・貝…なんで…」
マイールに手を貸すような人間ではないようなほど優しかったが、人は変わる。
みんなを呼び戻すか、と考えたが待つことにした。
動揺はなかったが、守里たちが会わないことを願っていた。