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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

館山湾のヤクシマダカラ

2024-08-29 17:33:46 | 

今日の館山湾内の海岸にはたくさんの海藻が打ち上げられていました。
九州で大きな被害が出ている台風10号の海辺ヘの影響が見られ始めているようです。
普段静かな海面も時折大きな波が打ち寄せて、ザバーンと音を立てて崩れています。


そんな海岸には海藻以外にも様々なものが打ち上げられていました。
これはイルカの耳骨。
耳石や布袋石とも呼ばれています。

欠けているイルカの耳骨も打ち上げられていて、同じ日に二個見つけたのは始めてです。


更にはヤクシマダカラもありました。
館山湾内の海岸でヤクシマダカラを見つけたのは始めて。
同じ房総半島南部では、太平洋側の海岸でしか見たことが無かったので驚きました。
屋久島という名の付くタカラガイなので、暖かな海に暮らしているイメージの貝類です。
ここ数年、海水温が高いと言われているので、その棲息数が増えたりしているのでしょうか。
今年の夏は関東に近づく台風も少なく穏やかな天候が続いていた事とも関係がありそうです。


同じ海岸で拾ったビワガイと並べてみましたが、よく見ると亜成貝のようです。


黒色の帯模様があり、歯列が全て形成されておらず、側面には斑点もありません。
タカラガイブックによると、生息環境は潮間帯~水深20mの岩礁とあり、浅い場所を好むのだと知りました。
タカラガイの中でも大型種なので、たくさんの餌を必要とするのだと思います。
海藻、海綿、イソギンチャク等何でも食べる雑食性だそうです。
ここまで大きく成長したのに何が原因で死んでしまったのか気になるところです。
しかも艶があるので、死んで間もないヤクシマダカラのようでした。


そして岩場に残さていた夏の思い出…。


鳥達の繁殖シーズンも終わり、いつものメンバーも海岸に戻って来ています。
お気に入りの場所で採餌しているイソヒヨドリのメス。
ハマゴウに集まる虫を捕まえようとしているのかもしれません。
そのすぐ近くではキジバトも植生を嘴で突いて採餌していましたが、イソヒヨドリはテリトリーを主張しませんでした。
ムクドリの場合は遠くから飛んできて追い払う素振りを見せていたので、自分より体の大きな鳥類には弱気なのかもしれません。


堤防ではカワウが濡れた翼を乾かして休憩中。
この後上空にトビが現れて、気の弱いカワウは飛び去りました。
そのトビも縄張りを誇示していたのか、カワウのいた同じ場所に止まりました。
夏の間、人間が占拠していた海岸を、鳥達はどんな思いで見ていたのか気になるところです。
海岸に訪れる人も疎らとなり、秋の気配が深まってきました。
越冬地に向かうシギ、チドリ類の姿が見られ始めて、南房総は再び旅鳥達で賑わい始めています。





野生動物が教えてくれること

2024-08-22 19:09:34 | シロチドリ
海岸でビーチコーミングしていると、たくさんの野生動物との出逢いがあります。
渚を走るシロチドリです。

磯で採餌しているコチドリです。


自分にとって、海岸で繁殖するシロチドリやコチドリは、観察する中でたくさんの事に気づくきっかけをくれます。
今年はシロチドリの繁殖期に海岸へ通い、様々な事例を見る機会がありました。
産卵の確認をして観察を続けていると、孵化する前に卵が無くなる事が頻繁に起こるのです。
他の動物に捕食されるのだと思っていましたが、ある日カラスがコチドリの卵を捕食する瞬間を目撃しました。
大切に守ってきた卵を奪われ無いように、親鳥はカラスの周りで鳴きながら走り回り抵抗していました。
しかしカラスには全く効果が無く、卵を一つ咥えて行ってしまいました。
更に近くにいたカラスの幼鳥に、卵の探し方を教えているようにも見えました。
海岸をテリトリーにしているカラスにとっては、春から夏にかけて繁殖にやって来るチドリ類の卵やヒナは貴重な餌として記憶され、代々受け継がれていくように感じました。
生き物同士の生き残りをかけた争いですが、チドリ類の方が圧倒的に不利な状況です。
天敵はカラスだけでは無く、ヘビ等にも捕食されたり、またヒトに踏み潰される可能性もあります。
抱卵中のシロチドリやコチドリは危険を感じると抱卵を中止して、その場から離れます。
観察している中で特にカラスとイヌは非常に警戒しているようでした。
カラスはヒトの生活に適応した結果数を増やした生き物ですし、イヌもヒトが海岸へ連れて来る為、いずれもヒト由来でのチドリ類への繁殖妨害のように思えてなりません。
カラスやイヌに罪はないけれど、シロチドリやコチドリにとって、それらの生き物が近くにいることは大きなストレスとなります。
イヌの場合はリードをつけヒトが制御出来ます。
しかし野生動物であるカラスの場合は行動を変える事は不可能です。
カラスなどの天敵から卵やヒナを守れるように海岸環境を整える事が必要だと感じました。
極端かもしれませんが、海岸にある高い構造物の撤去、砂丘の海浜植物群落の回復、漂着有機物を除去しない事が必要に思いました。
電柱の上から見下ろすと砂浜にいるチドリ類の動きは手に取るように分かります。
更に海浜植物の群落はヒナ達をカラスから守る避難場所になります。
流木も身を隠す為に必要ですし、海藻に集まる生き物はチドリ類の餌となります。
いつの日にかシロチドリやコチドリが安心して子育て出来る海岸になるように、現状が少しでも良くなって欲しいと願っています。


そしてビーチコーミング中には、ウミガメのストランディングに出逢う事もあります。
こういったウミガメを解剖し調査している方の話をネットで知る機会がありました。
その中で印象的だったのは一度も産卵経験の無い成熟したメスのアカウミガメがいた事です。
危険の多い子ガメの時代を運良く生き残り、長い年月をかけて無事に成長したウミガメが無残にも死んでしまったなんて本当に残念です。
あるアオウミガメのオスでは、食道から胃かけて海藻がびっしりで、死ぬ直前まで食べていた事が判明しているそうです。
ということは病気が死因とは考えられず、人的な要因だと思われます。
個人的には定置網による溺死だと想像しています。
せめて定置網の蓋が無ければ、この2件のウミガメの事故は起こらなかったかもしれません。
過去には引き上げた網の中にウミガメの卵があったという話を聞いたこともあります。
定置網に迷い込んだ母亀が死の直前に卵を産み落としたものかもしれません。
一度も産卵経験の無いメス、砂浜に卵を産みに行けなかったメスはいずれも絶滅危惧種のアカウミガメです。
定置網による人的な要因で死亡したという証拠はありませんが、定置網の構造を変える事は必要ではないかと思っています。

港や堤防、定置網等も無く、人が手を加えていない頃の海岸を見てみたいと思う時があります。
その頃の海岸をビーチコーミングしたら、どんな貝殻を拾えるでしょうか?
たくさんのウミガメが産卵しに来た足跡を見ることが出来るでしょうか?
波打ち際をたくさんのシロチドリのヒナが走り回る姿が見られるのでしょうか?
遠い未来の海岸もこんな風な世界になっている事を願っています。






ネコノシタ(ハマグルマ) 蕾から種子になるまで

2024-08-09 19:02:55 | 植物
海岸に適した植物はその特殊な生息環境のために、海浜植物と呼ばれています。
波飛沫、潮風等の塩害や極端に水分に少ない砂浜、台風の接近時には強風を遮ることの無い場所が海岸です。
他の植物が育つには厳しい環境でも海浜植物は春から秋にかけて花を咲かせます。
夏の暑い盛りに花を咲かせるのがネコノシタ、別名ハマグルマです。
小さな棘のような固い毛が葉にあるため、それを触ると猫の舌のようにザラザラするので、それが由来となったそうです。
キク科キク亜科の植物なのですが草丈は低く、砂丘の上を這うように蔓を伸ばしています。
砂浜ではハマヒルガオやハマエンドウなどと競い合っている感じで、場所によっては砂丘一面を覆う程の群落になります。

青々と茂る葉の中に見える小さな緑色の蕾。
大きさは5mmくらいです。

2cmくらいの黄色い花は海岸に咲く小さなヒマワリのようです。


花が終わると種子が出来始めます。


小さな種子一つ一つが熟してくると、全体が茶色っぽく色づいています。


同じ株には花が咲き始めたものから種子になったものまで揃っています。
花期をずらす事で種の散布時期も長期間になるので、台風等で海岸の条件が悪い時をかわして種子を残すことが可能になります。
艶のある緑色の葉は肉厚で、水分をたっぷり含んでいるように見えます。
海岸は海水はたっぷりあるけれど、植物の成長に必要な水は極端に少ないので、このような形態なのかもしれません。
また葉の固い毛は表面積を広げ、寒暖差で生じる朝露を葉の表面にたくさん留めるのにも良さそうです。
厳しい環境だからこそ、独自に進化して適応してきたのが海浜植物なのだと思いました。
小さな植物が生き残るために花を咲かせ、たくさんの種子を実らせる姿は美しくて力強さを感じます。