高校生の娘に「今、一番使っているスマートフォン(スマホ)のアプリは?」と定期的に聞いているが、この半年は「インスタグラム」が不動のトップだ。有名人のフォローも、ツイッターよりむしろインスタグラムが主流という。今、10代女子に最もリーチする交流サイト(SNS)として存在感を高めている。
むらやま・らむね 慶大法卒。東芝、ネットマーケティングベンチャーを経てマーケティング支援のスタイルビズ(さいたま市)を設立、代表に。
MAU(月間アクティブユーザー)は昨年12月に世界で3億アカウントを超え、ツイッターを上回ったもようだ。企業もSNSマーケティングの母体として重視し始めている。特に化粧品やアパレルの有力ブランドは顕著だ。海外のEC(電子商取引)では商品写真を注文サイトに掲載すると同時に、インスタグラムでも発信するのが当たり前になっている。
人気の秘密はセンスのある画像。ツイッターは文字コミュニケーションで読むという行動が伴うが、写真のインスタグラムは極めて右脳的で、見るだけで心がキュンとするかがカギになる。
インスタグラムを積極的に使って販売を伸ばしているネットショップも多い。一例が米ビッグサイズ婦人服専門店「Figure(フィギュア)」だ。試作段階の写真をインスタグラムにアップし、ファンの意見を受けながら色を決める。ミシンの隣にパソコンを置き、客と対話しながら商品を作っているのだ。
日本でもBASE(ベイス、東京・渋谷)などのCtoC(個人間取引)プラットフォームで、インスタグラムをうまく活用して売り上げを伸ばしているショップが出始めている。BASEは無料でオンラインショップを開設できるサービスだ。開始から2年で14万店舗を擁し、月間流通総額も数億円規模になった。小ロットの製品やハンドメードの商品を出品する店舗が多く、BASE自体は決済手数料で利益を得ている。
「Swell」は新作がインスタグラムに掲載される注文が殺到する
宣伝広告費などの予算がない小さい店はSNSを積極利用しており、使い方も非常に巧みだ。例えば、山本めぐみさんが運営するアパレル店「Swell」は新商品の発売をインスタグラムで告知する。子育て中の主婦である山本さんが自作した商品を販売するのは月に1度。商品ができるとBASEに商品を掲載してインスタグラムで告知する。その途端にファンが殺到するという。
インスタグラムでのフォロワー数は1万ほどで決して多くはない。だがBASE創業者の鶴岡裕太代表は「ツイッターの10倍くらいのアクティブ率がある」と話す。つまりツイッターなら10万フォロワーに匹敵する販売パワーを持つ格好だ。
日ごろからストーリーあふれる写真をアップすると、感性の似たフォロワーが注目する。そのコメントやメッセージにマメに答えて親密な関係を築く。商品が発売になれば皆が我先にと注文ボタンを押すという。
そこでしか買えないものを待たせて売るニッチでローカルなビジネスを展開するうえでインスタグラムは非常に強力な武器だ。成功する秘訣はストーリーがある写真を示せるかどうかだろう。
例えば靴のネット販売で全米トップとなったZappos・com(ザッポス・ドットコム)は、サイト上には商品の様子がよく分かる写真、インスタグラムにはボカシを多用した物語性のある写真を掲載して使い分けている。1つの商品に様々な顔を持たせて示し、特にインスタグラムではスマホ画面で心を動かすのが狙いだ。いわば証明写真とイメージ写真の違いだ。この使い分けが今後、画像系ソーシャルメディアでの勝負になる。
(通販コンサルタント)
〔日経MJ2015年1月30日付〕
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