最近、読んだ本より…。
読み始めたとき、なぜか夏目漱石の『坊ちゃん』を思い浮かべた。主人公の境遇や性格が似ているから、ということではない(多少は似ているかもしれない)。文の調子というか格調-文体というのかな-に何か近しいものを感じた。別に二人の作家を読み込んでいるわけではないのだが、お二人の経験に似通ったところがあるのかもしれない。
さて、私でも2時間ほどで読み終えてしまうほどの小さな本である。連作短編というべき形式を採っている。花木が題名になっていて、季節感豊かに、話は進んでいく。主人公はあまり売れていない物書きで、家守をしている。時代はまだ「頼りはやはり洋燈(ランプ)」という頃で、はっきりしないものの、滋賀あたりが舞台のようだ。
奇妙な物語である。不思議な世界である。狐狸妖怪の類、河童、小鬼、白竜などが登場する。忘れてはいけない。湖で行方不明になった友人との「交友」も描かれる。脇役もいい。飼い犬のゴロー、和尚や近所のおかみさん。そして、繰り返しになるが、花木と四季折々の風物・風情が味わい深い。季節は移ろいながら、粛々と話は進む。粛々と話は進み、主人公はしだいに異界に引き込まれ…(結末を詳らかにするのはやめておこう)。
読み進めるうちに、いつのまにか狐狸妖怪たちに違和感はなくなり、私も思わず引き込まれそうになっていることに気づく。物語のそこかしこに、妙に魅かれる、共鳴するところを見出すのである。主人公はこう書いている:
「畢竟(ひっきょう)自分の中にある以上のもの、または自分の中にある以下のものは見えぬ仕組みなのだ」
いつもは気がついていないか、見失っているけれど、確かに私の中にあるものが、何やら見えた気がする。それは、将来に対する不安だったり、うっすらとした光明だったり、幾ばくかの活力だったりする。忘れていたものが見つかった心持ちである。
装丁がなかなか凝っていて、楽しい。ゆっくり、ゆったりと読むことをお勧めしたい。それから、解説はできるだけ読後に読むべし。
読み始めたとき、なぜか夏目漱石の『坊ちゃん』を思い浮かべた。主人公の境遇や性格が似ているから、ということではない(多少は似ているかもしれない)。文の調子というか格調-文体というのかな-に何か近しいものを感じた。別に二人の作家を読み込んでいるわけではないのだが、お二人の経験に似通ったところがあるのかもしれない。
さて、私でも2時間ほどで読み終えてしまうほどの小さな本である。連作短編というべき形式を採っている。花木が題名になっていて、季節感豊かに、話は進んでいく。主人公はあまり売れていない物書きで、家守をしている。時代はまだ「頼りはやはり洋燈(ランプ)」という頃で、はっきりしないものの、滋賀あたりが舞台のようだ。
奇妙な物語である。不思議な世界である。狐狸妖怪の類、河童、小鬼、白竜などが登場する。忘れてはいけない。湖で行方不明になった友人との「交友」も描かれる。脇役もいい。飼い犬のゴロー、和尚や近所のおかみさん。そして、繰り返しになるが、花木と四季折々の風物・風情が味わい深い。季節は移ろいながら、粛々と話は進む。粛々と話は進み、主人公はしだいに異界に引き込まれ…(結末を詳らかにするのはやめておこう)。
読み進めるうちに、いつのまにか狐狸妖怪たちに違和感はなくなり、私も思わず引き込まれそうになっていることに気づく。物語のそこかしこに、妙に魅かれる、共鳴するところを見出すのである。主人公はこう書いている:
「畢竟(ひっきょう)自分の中にある以上のもの、または自分の中にある以下のものは見えぬ仕組みなのだ」
いつもは気がついていないか、見失っているけれど、確かに私の中にあるものが、何やら見えた気がする。それは、将来に対する不安だったり、うっすらとした光明だったり、幾ばくかの活力だったりする。忘れていたものが見つかった心持ちである。
装丁がなかなか凝っていて、楽しい。ゆっくり、ゆったりと読むことをお勧めしたい。それから、解説はできるだけ読後に読むべし。