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(夕霧23).横笛の調べはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせね
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この本は「教科書」「参考書」の類ではありません。
皆さんに「教える」のではなく、どちらかと言うと、皆さんと「一緒に考える」ことを企図して書かれた本です。
また、私の主観も随所に入っていますが、私はこの方面の専門家でもありません。
ですから、
<効率よく知識を仕入れる><勉強のトクになるかも>
などとは、間違っても思わないようにして下さい。
いわゆる「学習」「勉強」には、むしろマイナスに働くでしょう。
上記のことを十分ご了解の上で、それでもいい、という人だけ読んでみて下さい。
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時々「(注)参照」とありますが、それは末尾の(注)をご参照下さい。
ただし、結構長い(注)もあり、また脱線も多いので、最初は読み飛ばして、本文を読み終えたのちに、振り返って読む方がいいかもしれません。
なお、(注)の配列順序はバラバラなので、(注)を見るときは「検索」で飛んで下さい。
あちこちページを見返さなくてもいいように、ダブる内容でも、その場その場で、出来る限り繰り返しを厭わずに書きました。
その分、通して読むとクドくなっていますので、読んでいて見覚えのある内容だったら、斜め読みで進んで下さい。
電子ファイルだと、余りページ数を気にしなくて済むのがいいですね。
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(夕霧23).横笛の調べはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせね-5rr.txt
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要旨:
「こと」「琴」「子と」の連想から、
夫に早世された未亡人落葉宮とそれに対する夕霧の懸想(横恋慕)の観点から、和歌を解釈した。
また、
「琴」<仲哀天皇>の連想から、
「柏木-落葉宮-夕霧」の関係に、
「仲哀天皇-神功皇后-武内宿禰」
という三角関係を当てはめて考え、<皇統断絶>の観点から和歌を考察した。
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目次:
(落葉宮2).深き夜のあはればかりは聞きわけどことよりほかにえやは言ひける
(夕霧23).横笛の調べはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせね
(夕霧22).ことに出でて言はぬも言ふにまさるとは人にはぢたるけしきをぞ見る
連想詞の展開例
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では、始めましょう。
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落葉宮(二宮)から夕霧への返歌です。
(落葉宮2).深き夜のあはればかりは聞きわけどことよりほかにえやは言ひける
源氏が政敵の右大臣一派の弘徽殿大后の妹(六の君)に夜這いしたのと、
源氏の息子夕霧(左大臣一派)が、朱雀院の娘(右大臣一派弘徽殿大后の孫)二宮(落葉宮)に言い寄ったこのやりとりは、相似に見えます。
もちろん、ややスケールダウンした格下感はありますが。。。「歴史は繰り返す。二度目は喜劇として」
神々しい源氏には見られなかった夫婦喧嘩も、夕霧の浮気の場合は、雲居の雁に文句を言われたり、恋文を奪われたりと、なかなか賑やかで、つい笑ってしまいます。
「あはれ」<情趣>
「こと」<琴>
@(落葉宮2)A.
夜更けの琴の調べの情趣だけは聞いて分かりますが、それは琴の音の情趣としか申し上げられません。
(恋愛の情ではありませんよ)
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直前に、
「羽翼うちかはす雁がねも列を離れぬ」
<羽を交えて飛ぶ雁も列を離れないのを>
とあります。
この「雁」は<雲居の雁>を指しているのでしょうか。
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柏木は落葉宮(二宮)という正妻がありながら、あろうことか正妻の妹(三宮)に横恋慕し、結局はその発覚による心労で病に斃れ、世を去りました。
落葉宮の虚脱感は想像に難くありません。
雲居の雁という正妻がいるにもかかわらず、自分に言い寄る夕霧にいささか呆れていたのでしょう。
「こと」を「言(こと)」<言葉>としてみましょう。
(落葉宮2)B.
主人柏木を亡くして、夜更けの(孤独の)切なさのほどは、私も分かりますが、とはいえ、あなたとは<言葉>を交わす他はなにも出来ません。
(身体の関係にはなれませんよ。)
柏木にしても源氏にしても、浮気が単なる浮気では済まず、子供が出来てしまい、それが本人ばかりか周囲の人々の運命をも狂わせました。
落葉宮は、子供が出来ることを恐れているのでしょうか。
「こと」を「"子"と」としてみましょう。
「"子"とより他にえやは言ひける」
<"子が出来てしまったらどうするのですか"としか申し上げられません>
琴
深き夜のあはればかりは聞きわけど ことよりほかにえやは言ひける
言
子と
(落葉宮2)C.
夜更けの(孤独の)切なさのほどは、私も分かりますが、とはいえ(逆接)、
「"子"とより他にえやは言ひける」
<"子が出来てしまったらどうするのですか"としか申し上げられません>
(子が出来たら取り返しがつかないので、あなたの誘いを受け入れるわけにはまいりません。)
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種子植物は、花で雌しべが雄しべの花粉を受粉<有性生殖>して種子を形成します。
竹の場合、繁殖は普通、根が地中を延びて、そこから芽を出し、「竹の子」を生やして、別の竹に成長します。
雌雄(オシベとメシベ)の交配を伴わない<無性生殖>です。
それは、いわば、<処女懐胎>に当たります。
「花」は雄しべと雌しべが受粉して子種(種子)を宿す、種子植物本来の有性生殖を行うための生殖器官です。
「ささみどり」とは<竹の花>のことですが、これは、数十年に一度しか咲きません。
例えば、食用タケノコとして最も普通の「孟宗竹(もうそうだけ)」の開花周期は六十年と言われています。
つまり、竹は、数十年に一度しか有性生殖を行わず、それ以外の年は無性生殖(竹の子)で増える、ということです。
無性生殖は体細胞分裂による繁殖ですから、遺伝子構成は当然変りませんが、
ひと山の竹やぶが、全て遺伝的には同一(monoclonal)ということも少なくありません。
それほどまでに、竹の繁殖形態は、圧倒的に<無性生殖>に偏っている、と言えるでしょう。
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無性生殖を行う植物は、他にも数多くありますが、
竹は別格で、その繁殖形態が圧倒的に無性生殖に偏っています。
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人知れず暗い地下で根に次々と節を継いで伸びる竹にとって、「節」「根」は<子孫>そのものです。
「ね(音)」は「ね(根)」の掛詞として常用されます。
「ね(根)」<子孫><血筋>
ちなみに「子(ね)」は「ね(鼠)」<鼠のように小さいもの>から来ているそうです。
また、竹は「節」(よ)=<代>を継ぎ重ねて成長する植物です。
「世(よ)」は<世><代>
また、「節(よ)」は次々と節を継いで伸びていく竹の縁語として常用されます。
***「よ(世)」「よ(節)」***************************
竹の子の世の憂き節を、時々につけてあつかひきこえたまふに、、、、(「蓬生」帖)
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ところで、この竹ような無性生殖は、有性生殖のような雄と雌の交接(花のめしべが花粉を受粉すること)を伴いません。
いわば、<処女懐胎>に当たります。
マリアは、処女懐胎(性交なしの懐妊)によって、イエスをみごもったといわれます。
これを、「無原罪のお宿り」と呼んだりします。
みなさんは、これが可能だと思われますか。
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***「マリア懐妊」「知る」<性交する>************************
イエスの母マリアはヨセフと婚約していたが、同居する前に、聖霊によって身籠っていることが分かった。
マリアの夫ヨセフは正しい人で、マリアのことを表沙汰にするのを望まず、ひそかに離縁しようと決心した。。。。
マリアが男の子を産むまで、ヨセフは彼女を知ることはなかった。(マタイ、1・18-25)
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***「姦淫の罪」<石打ちの刑>****************
ユダヤの律法によれば、婚約したものは既に夫婦と見なされ、その解消には<離婚>手続きが必要だったそうです。
また、律法に従えば、マリアは姦淫の咎で石打ちの刑に処せられます。(旧約「申命記」22・20-21)
(フランシスコ会聖書研究所訳注「新約聖書」)
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****参照:(注12568):「この世で最も古くからある職業は泥棒と娼婦」
****(注55117)参照
イエスの誕生は、「無原罪」どころか、まっとうな女性なら犯さないタブー(禁忌)によって生まれたものだったわけです。
しかし、それを責めないこと、いや、あえて「無原罪」とすることこそ、新約の新約たる所以なのかもしれません。
形骸化した戒律に縛られ、弱者救済とはいささか異なる様相のユダヤ教あるいは旧約世界へのアンチテーゼだったのでしょう。
「無原罪」と<処女性>とは、必ずしも関係はないのかもしれません。
日々の糧に困らなければ、好き好んで娼婦になる女性などいないのだから。
しかし、そうして弱者の間に広がって行ったキリスト教も、国教となり権勢を得ると、戒律を振りかざすユダヤ教と同様に硬直化します。
カラヴァッジョの絵画「聖母の死」が、教会から受け取りを拒否されたのは、娼婦をモデルにして描いたからだ、と言われています。
***「処女懐胎」<夫の身に覚えの無い妊娠><私生児> ***********
しかし紛々たる事実の知識は常に民衆の愛するものである。彼等の最も知りたいのは「愛とは何か」と言うことではない。「クリストは私生児かどうか」と言うことである。
(芥川龍之介「シュジュの言葉」)
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ちなみに、竹の地下茎の他、ユリの鱗茎(ユリネ)、ジャガイモの塊茎、オランダイチゴの走出枝、ヤマイモのむかごなども栄養生殖(無性生殖)です。
ユリはキリスト教で<純潔無垢>の象徴として用いられます。
ふつうは、花の純白さや芳香がその由来とされるようですが、ひょっとして<無性生殖>も理由の一つなのかもしれません。
キリスト教の祭壇に飾るユリの花は、永遠に純潔であるようにと、雌しべと雄しべが摘み取られたそうです。(「聖書の植物事典」)
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源氏とその義母藤壺の宮との密通によって、桐壺帝の第十皇子(後の冷泉帝)が生まれました。
桐壺帝はその不義に気付いていたと考える人は少なくありません。
源氏自身も、やがて生まれた薫の顔が柏木そっくりなのを見てこの不義を確信し、同時に、<故桐壺院も気付いていたのではないか?>と考えるようになります。
源氏は薫を「竹のこ(籠、子)」と例えています。
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(光源氏196).うきふしも忘れずながらくれ竹のこは棄てがたきものにぞありける
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<処女懐胎>=<出産の日から逆算して、夫と妻が交わる機会がありえないはずの妊娠>としてみましょう。
それは、<無原罪>どころか、普通の妻なら犯さない<禁忌>を犯した結果の<不義の子>です。
「たけ(竹)」は「たけ(他家)」<自分の血筋でない家系>をも連想させます。
***「たけ(他家)」*********************
他家の人々、、、(「平家物語」巻二「徳大寺の沙汰」)
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(柏木13).笛竹に吹きよる風のことならば末の世長き音に伝へなむ
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詳細はこの和歌のファイルを御覧下さい。
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落葉宮の夫、柏木は、源氏の正妻三宮を寝取り、源氏と薫の血縁を断絶させました。
「三韓征伐」の遠征における、第14代「仲哀天皇」と第15代「応神天皇」の<血縁断絶>を見てみましょう。
記紀神話の中でも、一二を争うキナ臭いエピソードです。
****参照:(注123123):武内宿禰の三角関係
「竹取物語」で、翁がある日突然、かぐや姫を連れ帰ってきたのも、<ワケアリの子>を象徴しているのかも知れません。
****(注55118)参照
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まあ、上記は単なる私の「妄想」に過ぎませんから、ここで忘れて下さい。
「孟宗(もうそう)」だけにww
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何その上手いこと言ったみたいな顔。腹立つ。
(増田こうすけ「ギャグまんが日和」妖怪ろくろ首)
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これが言いたかったために、この話題をわざわざ付け足しました。
長い前フリですみません。
とはいえ、乗りかかった船なので、ひと段落するまでためしに書き続けてみましょう。
興味の無い人は、ここで読み終わって頂いてかまいません。
ここまでお付き合いありがとうございました。
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「もとかしは(本柏)」とは、<冬でも落ちずについている柏の古い葉><大嘗祭の時、その葉を浸した酒を神に供えた>
のことです。
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いそのかみ ふるから小野の「もとかしは」 本の心は わすられんくに (古今、雑、上)
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柏(カシワ)は、葉が紅葉し、さらに枯葉になっても、落葉せず枝に付けたまま冬を越します。
そのため、「葉守りの神」<葉を守る神>は柏に宿る、という俗信もあります。
山腹一帯が、柏の枯葉で茶色に見える光景を、冬の函館で私もたまたま見かけたことがあります。
武内宿禰が仕えた四代の天皇の内でも、際立って寿命の短い、しかも<処女懐胎>を象徴する「竹」である、孟宗竹の寿命(六十年)にも満たない仲哀天皇。
それは、枯葉を落とさず、枝一杯につけたままで、あたかも<立ち枯れ>のように見える「柏」を連想させます。
「柏」<立ち枯れ>
五穀豊穣を祝い、神と天皇がともに新米を味わう「新嘗祭」は、毎年行われますが、「大嘗祭」が行われるのは、天皇の代替わりの時だけです。
そして、「大嘗祭」では、柏の葉を浸した酒を神に供えます。
「柏の葉」は、応神天皇への代替わり、<新王朝誕生>に際して、生贄として捧げられた、仲哀天皇を連想させます。
<立ち枯れ>のような「柏」「柏木」を<仲哀天皇>としてみましょう。
仲哀天皇は、孟宗竹の寿命(六十年)にも満たず、五十二年でこと切れました。
応神天皇は、「ささみどり」<竹の花><有性生殖><本来の夫婦の交わり>で出来た子ではない、ということなのでしょうか。
応神天皇は<不義の子>で、その実父は、、、
****参照:(注98982):「歴史家の使命」「歴史修正主義」
さて、
「仲哀天皇-神功皇后-武内宿禰」
という三角関係に、
「柏木-落葉宮-夕霧」
の関係を当てはめて考えた時、夕霧は武内宿禰に当ります。
夕霧が、「雲居の雁」という背景を背負っていることは興味を引きます。
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直前に、
「羽翼うちかはす雁がねも列を離れぬ」
<羽を交えて飛ぶ雁も列を離れないのを>
とあります。
この「雁」は<雲居の雁>を指しているのでしょうか。
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夕霧は、「雲居の雁」を連想させます。
また、後述するように、「雁」は<産むはずの無い親>を連想させます。
「雲居」<内裏><宮中><朝廷><天皇家>
「雁」<産むはずの無い親>
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「仲哀天皇」=「柏木」=早世
「神功皇后」=「落葉宮」=未亡人
「武内宿禰」=「夕霧」=「雁」<産むはずの無い親>
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という図式が成り立ちます。
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「哀」などというマイナスイメージの字を含む天皇のし号は、歴代天皇125人の内でも、ただひとり仲哀天皇だけです。
「哀れ(あはれ)」は「哀」<仲哀天皇>を連想させます。
***「あはれ(哀)」<仲哀天皇>**************************
(光源氏46).深き夜の「あはれ」を知るも入月のおぼろけならぬ契とぞおもふ
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「こと(琴)」は<仲哀天皇>を連想させます。
「深き夜」<闇深い夜><神託を得るための真っ暗な部屋>
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「よ」には様々な意味が有ります。
****参照:(注123451):「よ」「弁」<花弁><陰唇>「節」<男根>
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「よ」を、
「よ(節)」<陰茎>
「よ(弁)」<陰唇>
の正反対の意味を持つ掛詞<性器><まぐわい>と見なすことも、ひょっとして出来るのかもしれません。
また、
「よ」を、
「節(よ)」<節><無性生殖><不義密通><庶子><誰かの子>
「弁(よ)」<花弁><有性生殖><本来の夫婦関係><嫡子><自分の子>
の正反対の意味を持つ掛詞と見なすことも、ひょっとして出来るのかもしれません。
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「深き夜」<闇深い夜><神託を得るための真っ暗な部屋><仲哀天皇を暗殺するための真っ暗な部屋>
「深き世」<業深い人間関係><因縁深い人間関係>
真っ暗な部屋には、仲哀天皇と神功皇后の他には、大臣の武内宿禰しかいませんでした。
***「禰」<父>「宿禰」<子を宿した父>***********************
ちなみに、武内宿禰の「禰」の字は、もともと<父のみたまや(禰廟)>という意味です。
生きている間は「父」、死後は「考」、みたまやに祭ってからは「禰」と称するそうです。(角川「新字源」改定新版)
「宿」は<腹に宿る><子を宿す>を連想させます。
「宿禰」<子を宿した父>
とも解釈できるでしょうか。
確かに、「こずゑ(梢、木末)」<木の先端>が「こずゑ(子末)」「すゑ(末)」<子孫>をイメージさせるのに対して、「ね(根)」は<祖先>をイメージさせる、と言えるかも知れませんね。
いずれにせよ「ね(根)」「ね(子)」が、<血縁>を強く連想させることは興味を引きます。
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***「大臣」「宿」<武内宿禰>「花」<有性生殖><男女のまぐわい>***************
(右大臣1).わが宿の花しなべての色ならばなにかはさらに君を待たまし
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詳細はこの和歌のファイルをご参照下さい。
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しかし、漢字っていうのは、面白うございますね。
「櫻(さくら)」って字があるでしょ。
木へんに貝ふたつに女。
あれで、<2階の女が気にかかる>
と読めるんですよ。
(映画「男はつらいよ」)
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努力の「努」の字は<女の又に力>。
(私の父親)
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「宿」は<武内宿禰>を連想させます。
「花」は<有性生殖><雄しべと雌しべ><男女のまぐわい>を連想させます。
「深き世の哀れ」<業深い人間関係の悲哀><因縁深い人間関係の悲哀>
****参照:(注776636):「雁」<産まれるはずがない子>「うべ」
「雁」<産まれるはずがない子><産むはずのない親>
「かりのこ」<卵>は「仮の子」「雁の子」を連想させます。
「仮の子」<本来の子ではない子>
伊勢物語の、
「かりのつかひ(狩りの遣ひ)」<狩りの遣い>は、
「かりのつがひ(雁の番)」<雁の夫婦><子を産むはずの無い男女>
「かりのつがひ(仮の番)」<仮の夫婦><仮初の男女><束の間の逢瀬>
を連想させます。
「かり(雁)」<子を産むはずの無い親><仲哀天皇><神功皇后><産まれるはずがない子><応神天皇>
「あはればかり(哀れ計り)」は「あはれはかり(哀は雁)」を連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに、「あはれはかり」と表記されました。
「哀」<仲哀天皇>
「雁」<産むはずのない親>
「あはれはかり(哀は雁)」<仲哀天皇は「産むはずのない親」だ!>
「こと(琴)」<仲哀天皇の琴><暗殺>
「こと(子と)」を「"子"と」としてみましょう。
「"子"と」<"子(を見てみなさい)"と><"応神天皇の顔立ちを見てみなさい"と>
「"子"とより他にえやは言ひける」
<"子(を見てみなさい)"と言う他に、申し上げようがございません>
<"子(応神天皇)の顔立ちを見てみなさい"としか申し上げられません>
薫が光源氏よりも柏木に似ていたように、また、
冷泉帝が桐壺院より光源氏に似ていたように、
応神天皇の顔は、仲哀天皇よりも武内宿禰に似ていたのでしょう。
<暗殺>のみならず、<皇統断絶><新王朝樹立>の闇に葬られた、仲哀天皇の<鎮魂>の観点から、この歌を解釈してみましょう。
夜 哀れ 計り 琴
深き よ の あはれ ば かり は 聞き わけ ど こと より ほかに え やは 言ひける
世 は 雁 言
節 謀り 子と
(落葉宮2)D.<鎮魂>
(人の情を解さぬ私でも、さすがに)、
「深き世の哀れ」<業深い人間関係の悲哀><因縁深い人間関係の悲哀>だけは知っているつもりだが、そして、
「深き夜」<神託を得るための真っ暗な部屋>(で暗殺された)
「哀」<仲哀天皇>は、
「かり(雁)」<子を産むはずの無い親>
とだけは分かるけれど、
「"子"とより他にえやは言ひける」
<"子(を見てみなさい)"と言う他に、申し上げようがございません。>
<"子(応神天皇)の顔立ちを見てみなさい"と仄めかすことしかできません。>
(真相をはっきり言ったら、私が葬られる)。
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ところで、
マリアは、処女懐胎(性交なしの懐妊)によって、イエスをみごもったといわれます。
これを「無原罪のお宿り」と呼びます。
「処女懐胎」について、浅野典夫さんは興味深い解釈を示されています。
****参照:(注664426)c:「処女懐胎」<ワケアリの子>「マリアの子イエス」c
応神天皇が「誰の子」とは言えない、言ったら武内宿禰に葬り去られる、と当時の人々は恐れていたことでしょう。
「あはれはかり(哀は雁)」<仲哀天皇は「産むはずのない親」だ!>
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(夕霧23).横笛の調べはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせね
「ことに(殊に)」<殊に><特に>
「むなしくなる」「いふかひなくなる」は<亡くなる><死ぬ>の婉曲表現として用いられます。
「つき(尽き)」「尽く」の連用形転成名詞<尽きること>
補助動詞「す」は、体言に付いてサ変複合動詞を作ります。
@(夕霧23)A.
横笛の調べは昔と特に変わってはいませんので、亡くなった(柏木の吹いた)笛の音は、尽きることなく(受け継がれて)いくでしょう。
殊に
琴 音 尽き
横笛の調べはことにかはらぬを むなしくなりしねこそつきせね
"子と" 根 つぎ
子 継ぎ
接ぎ
つき
月
「つき(尽き)」は「つぎ(継ぎ)」を連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに、「つき」と表記されました。
「尽き(つき)」「尽く」の連用形転成名詞<尽きること><途絶えること>
「運の尽き」なんて、今でも言いますよね。
「継ぎ(つぎ)」「継ぐ」の連用形転成名詞<継ぐこと><接ぐこと>
「後継ぎ」なんて、今でも言いますよね。
それにしても、正反対の意味をもつ言葉が、同じ表記になるのはややこしいですね。
柏木はしばしば「竹」に例えられます。
花を咲かせ、種子を作るのではなく、竹は地下で根の節を"次々"と"継ぎ"ながら子(筍)を増やします。
節を継いで地下茎を伸ばして繁殖する竹にとって、「ね(根)」は<子孫><血筋>そのものです。
「ね(音)」を「根(ね)」としてみましょう。
「むなしくなる」「いふかひなくなる」は<亡くなる><死ぬ>の婉曲表現として用いられます。
空しくなる - 言ふ「かひ(甲斐)」なくなる - 言う「かひ(卵)」なくなる
なんて連想もあるのかも知れません。
***「琴の緒」**************
(地の文).
「琴の緒」絶えにし後より、昔の御童遊びのなごりをだに思ひ出でたまはずなんなりにてはべめる。。。
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「こと(琴=子と)」「緒」「絶え」「童」「なごり」と意味深な言葉が地の文には並んでいます。
「ことのを(琴の緒)」は「ことのを(子との緒)」を連想させます。
「ことのを(子との緒)」<子との繋がり><子との絆><へその緒>
「こと(殊)」「こと(異)」「こと(言)」「こと(琴)」「こと(子と)」は、掛詞として常用されます。
「こと」「"子"と」
<"子が出来てしまったらどうするのですか"との言葉>
としてみましょう。
落葉宮の母御息所へのこの返歌は、もちろん落葉宮を意識しています。
「横笛の調べ」を<落葉宮の歌>としてみましょう。
(夕霧23)B.
落葉宮様のお答えは「"子"と」<"子が出来てしまったらどうするのですか"との言葉>に変わりありませんが、
亡くなった柏木の"根"<子種>は"継ぎ"<継がれること>はないでしょう。
(本当にそれでいいんですか。)
笛は竹で作られます。
「音(ね)」は「根(ね)」を連想させます。
「こそ~已然形」の係り結びの後には、しばしば逆接の結論が伏せられています。
あけすけには言えなかった夕霧の下心が浮かび上がります。
(夕霧23)C.
(形見の)横笛の「音(ね)」は昔と特に変わってはいませんが、亡くなった柏木の「根」<子種>は「継ぎ」<継がれること>はないでしょう。けれども。
(私があなたに子種を宿し、血筋を継いで差し上げましょう。ヤラしてくれよ!)
さすがは光源氏大先生のご子息、と言ったところでしょうか。
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ちなみに、
「つき(月)」は、それだけで<月のもの><月経>の意味にもなります。
「つきみづ(月水)」とは<経血>のことです。
<経血>は<排卵>であり、「月」は「卵」を連想させます。
月も玉子も、ともに丸くて白いですよね。
「月」が「尽き」る更年期、<子を産めなくなること><出産適齢期を逃すこと>は、当時の女性にとって、何より恐ろしいものだったことでしょう。
仮に夫婦になっても、子が産めなければ、妻は簡単に袖にされてしまう時代なのですから。
ちなみに、落葉宮には最後まで子は出来ませんでした。
そして、子沢山(12人!)の夕霧から、妾(第二夫人)藤典侍の娘「六君」を、落葉宮はのちに引き取って養育することになります。
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「ふえ(笛)」は「ふえ(増え)」「ふえ(殖え)」<「ふゆ」下二段連用形転成名詞>
をも連想させます。
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産めよ、増えよ、地に満ちよ。(旧約聖書「創世記」)
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「ふえ(増え)」「ふえ(殖え)」連用形転成名詞<増殖すること><繁殖>
「ふえ(増え)」「たけ(竹)」には、
<繁殖><処女懐胎><不義の子>
のイメージが重なります。
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(柏木13).笛竹に吹きよる風のことならば末の世長き音に伝へなむ
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詳細は、この歌のファイルを御覧下さい。
「ふえ(増え)」「たけ(竹)」<繁殖><処女懐胎><不義の子>
「よこ(横)」には<傍ら>の他に、<正当でないこと><不正><よこしま(邪)>という意味があります。
「横様」「横領」「横死」「横行」なんて、今でも言いますよね。
「よこぶえ(横笛)」は「よこふえ(横増え、横殖え)」を連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに「よこふえ」と表記されました。
「真っ暗な部屋に、仲哀天皇、神功皇后、武内宿禰の三人だけ!」
「よこふえ(横殖え)」<正当でない繁殖><不義密通><不義の子><神功皇后と武内宿禰が交わって応神天皇を産んだこと>
としてみましょう。
武内宿禰は、皇統に横から割り込みました。
当時、管弦の音色の特徴は、血筋に遺伝する、と考えられていました。(田辺聖子「源氏物語」CD)
実際、柏木の笛の音色は、父親である致仕大臣(もと頭中将)ゆずりであり、それは不義の子薫にも受け継がれました。
「調べ」<調べること><調子><音律><楽曲><調律><演奏><「調べの緒」の略>
「琴」<仲哀天皇>
「ことにかはらぬ(琴に変らぬ)」<(応神天皇の血筋は)仲哀天皇と変らない>
としてみましょう。
「を」<接続助詞><逆接><順接>
「を」<終助詞><詠嘆>
「横殖えの調べは琴に変はらぬを」
<正当でない繁殖><不義密通><不義の子><応神天皇>の顔立ち(血筋)は、本来仲哀天皇と異ならないものなのに!
「調べは」は「調べば」をも連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに「調べは」と表記されました。
「調べば」<調べてみれば>
を挿入的にとらえてみましょう。
「横殖えの調べば"子"とに変はらぬを」:
(1)<不義の子><応神天皇>は、<調べてみれば>、(仲哀天皇の)「子」ということに相違はないのだが、、、
「調べ」バ行下二段動詞連用形転成名詞<調べること><楽器を調律すること><楽器を演奏すること><調子に乗ること><図に乗ること>
***「調べ」<調子に乗ること><図に乗ること>*********
又わづかに聞きわたる事をば、われもとより知りたる事のやうに、他人にも語りしらべいふも、いとにくし。
(「枕草子」第二十五段)
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(2)<不義の子><応神天皇>の(血筋についての)、分かった風の<調べ>は、(仲哀天皇の)「子」ということに相違はないのだが、、、
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(朱雀院8).世をわかれ入りなむ道はおくるともおなじところを君もたづねよ
(薫57).法の師と尋ぬる道をしるべにて思はぬ山にふみまどふかな
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これらの和歌のファイルもご参考下さい。
「調べ」だけで、「調べの緒」の意味にもなります。
「調べの緒」<鼓の革を締める麻のねり緒>
***「調べ」「調べの緒」*****************
啄木の「調べ」の鼓を賜はりて、、、(「義経記」巻五)
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「緒」は<へその緒>を連想させることも、興味を引きます。
啄木鳥(キツツキ)が「穴」をくちばしでつついて餌の虫がいないか調べることは興味を誘いますね。
また、キツツキは木を掘って巣穴を作りますが、
「つづみ(鼓)」は「つつ」<ツツドリ><托卵鳥>を連想させることも示唆的です。
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「根」は<祖先><子孫><血縁><血筋>の例えとして常用されます。
「ね(根)」「ねこ(根子)」の音韻は、
「ねこ(猫)」<三宮の猫><柏木と三宮の出会い>
「ねこ(根子)」<倭根子><天皇家><皇統>
を連想させます。
****参照:(注21212):「竹」「根=子」「ねこ(猫)」「桓武天皇」「倭根子(やまとねこ)」
***「桓武天皇の即位の宣命」「倭根子(やまとねこ)」*******************
かけまくも畏き現神と坐す倭根子(やまとねこ)天皇(すめら)が皇(光仁天皇)、この天日嗣(ひつぎ)高座(たかみくら)之業を、
かけまくも畏き近江大津の宮に御宇しめしし天皇(天智天皇)の初めたまひ定めたまへる法(のり)のまにまに賜はりて仕奉れ、と仰せ賜ふ。
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「横殖えの調べは琴に変はらぬを」:
<正当でない繁殖><不義密通><不義の子><応神天皇>の顔立ち(血筋)は、本来仲哀天皇と異ならないものなのに!
「こそ~已然形」の係り結びの後には、しばしば逆接の結論が伏せられています。
何が隠されているのでしょうか。
殊に
琴 音 尽き
横笛の調べはことにかはらぬを / むなしくなりし ねこそつきせね
"子と" 根 つぎ
異 子 継ぎ
接ぎ
つき
月
突き
「を」<終助詞><詠嘆>
「を」<接続助詞>には、<逆接>も<順接>もあります。
***「を」<接続助詞><逆接><順接>*****************
<逆接>(万葉集19/4286).御園生の竹の林に鴬はしば鳴きにしを雪は降りつつ (大伴家持)
<逆接>御息所、はかなき心地にわづらひて、まかでなむとしたまふを、暇さらに許させたまはず。(源氏物語「桐壺」)
<順接>(万葉集04/0626).君により言の繁きを故郷の明日香の川にみそぎしに行く(相聞 作者:八代女王 聖武天皇)
<順接>この女の童は、絶えて宮仕つかうまつるべくもあらず侍るを、もて煩ひ侍り。(竹取物語「御門の求婚」)
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まず、<本音>の方から見てみましょう。
(夕霧23)D.<鎮魂><本音>
「横殖え」<正当でない繁殖><不義密通><不義の子><応神天皇>の顔立ち(血筋)は、本来「琴」<仲哀天皇>と異ならないものなのに!
亡くなってしまった、仲哀天皇の「根」<血筋>は「継ぎ」<継がれること>はないでしょう。
(でも、本音を言ったら私が殺される。)
次に、万一の場合、<言い逃れ>するための<タテマエ>を考えて見ましょう。
(夕霧23)E.<鎮魂><タテマエ>
<応神天皇>の「横笛」の「ね(音)」<音色>は、調べてみれば、
「こと(殊)にかはらぬ」「こと(琴)にかはらぬ」<(仲哀天皇の音色と)特に変らない>よ。
亡くなってしまった、仲哀天皇の「ね(根)」<血筋>も、「尽き」<尽きること>はないでしょう。
(んなわけねーだろ!)
<逆接>とも<順接>とも取れる「を」を巧みに用いて、紫式部は真意をカムフラージュしているようにも思われます。
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(夕霧22).ことに出でて言はぬも言ふにまさるとは人にはぢたるけしきをぞ見る
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(大和物語).いはて思ふぞ言ふにまされる (大和物語、第152段)
陸奥国磐手群(岩手県)から献上された「いはて(磐手)」という鷹を、飼育係の大納言が逃がしてしまったときの天皇の言葉です。
「いはて(磐手)」<鷹の名前>
「いはで(言はで)」<言わないで><(口に出して)言わずに>
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに「いはて」と表記されました。
@(大和物語)A.
「いはて(磐手)」のことは、口に出して言わず、心で思っている方が、口に出して言うよりもいっそう辛い。
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心には下ゆく水のわきかへり いはで思ふぞいふにまされる (古今六帖、5、柿本人麻呂)
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言葉にすれば、嘘に染まる。
このままずっと、瞳を閉じて。
(もんたよしのり「ダンシング・オールナイト」
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「こと(琴)」「こと(言)」は掛詞として常用されます。
@(夕霧22)A.
言葉に出しておっしゃらないのも、おっしゃる以上に深い思いでいらっしゃるように見えるあなたの、
人に遠慮している御様子を拝察いたします。
***「けし(怪し)」「けし(異し)」***************************************
「けし(怪し、異し)」(形容詞シク活用)には<怪しい><不思議だ><異様だ>のほか、<不実だ><薄情だ><咎めるべきだ>の意味もあります。
「けしき」はその連体形で、単独で体言相当でも用いられます。
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「けしき(異しき)」の「異」の字を背景として、
「いふ(言ふ)」は「いふ(異父)」を連想させます。
***「いふ(言ふ)」「いふ(異父)」<異なる父親><異父兄弟>**********
「い(異)」<異なること><普通と違うこと><妙なこと><(仏教語)「四相」のひとつ><この世の全てが絶えず変転していること>
「いふ(異父)」<異なる父親><父親が違う><俺の子じゃ無い!>
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「こと(琴)」<仲哀天皇の琴><暗殺>
「こと(言)」<言葉>
「こと(異)」<異なっていること>
「こと(子と)」<子として>
「こと(異)」形容動詞ナリ活用<異なっていること><違っていること><格別であること><特別であること>
「こと(異)」名詞<異なるもの><他のもの><別のもの>
***「こと(異)」名詞<異なるもの><他のもの><別のもの>*****
明日にならば、こと(異)をぞ見給ひ合はする。
(枕草子「清涼殿の丑寅のすみの」)
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「こと(異)に出でて」<(柏木と三宮の子の薫が本来の夫源氏と)異なる面影に生まれ出て>
「まさる」は「まざる」「まじる」をも連想させます。
もともと落葉宮(呼び名からしてヒドイですね)は劣り腹の娘であり、朱雀院鍾愛の三宮にゾッコンの柏木からは、それなりの扱いしか受けていませんでした。
***「落葉」ってアンタ!******************************
(柏木10).もろかづら「落葉」をなににひろひけむ 名はむつましきかざしなれども
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さらに、若くして夫を亡くし、先行きも心許ない落葉宮は、<人の不幸は蜜の味>とばかりに、宮中で「お気の毒」と<もの笑いの種>にされていました。
親友であった亡夫柏木の不義を追い風にして未亡人落葉宮に迫る夕霧のクズっぷり炸裂!
といったところでしょうか。
殊に
事に
言に 言ふ 恥 気色
ことに 出でて 言はぬも いふ に まさる とは 人に は ぢ たる けしき を ぞ 見る
異に 異父 ち 足る 怪しき
琴に 血 垂る 異しき
子とに
(夕霧22)B.
(柏木と三宮の子の薫が)「こと(異)に出でて」<(本来の夫源氏と)異なる面影に生まれ出て>、
言葉に出して言わなくても、
(面影が)どんな言葉にも勝る(不義の証拠である)と、
(夫に浮気され余所で子供まで作られたあなたが)、恥ずかしくお思いの様子が伺えます。
当時、管弦の音色の特徴・癖は、血筋に遺伝する、と考えられていました。(田辺聖子「源氏物語」CD)
実際、柏木の笛の音色は、父親である致仕大臣(もと頭中将)ゆずりであり、それは不義の子薫にも受け継がれました。
「琴に出でて」<琴(の音色)に表れ出て><琴の音色の特徴に、実父の血筋が自然と漏れ出て>
としてみましょう。
(夕霧22)B2.
「琴に出でて」<琴の音色の特徴に、実父の血筋が自然と漏れ出て>、
言葉に出して言わなくても、
(面影が)どんな言葉にも勝る(不義の証拠である)と、
(夫に浮気され余所で子供まで作られたあなたが)、恥ずかしくお思いの様子が伺えます。
「いでて(出でて)」は「いでで(出でで)」を連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに、「いてて(出てて)」と表記されました。
「出でで」<出ないで>
「琴に出でで」<仲哀天皇に(血筋を)発するわけではなく><仲哀天皇から出た血筋ではなく>
「こと(琴)」<仲哀天皇の琴><暗殺>
「けし(怪し、異し)」(形容詞シク活用)には<怪しい><不思議だ><異様だ>のほか、<不実だ><薄情だ><咎めるべきだ>の意味もあります。
「けしき(異しき)」の「異」の字を背景として、
「いふ(言ふ)」が「いふ(異父)」を連想させるのも、興味を引きます。
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し号に「神」の字を含む天皇は、初代神武天皇、第十代崇神天皇、第十五代応神天皇ですが、
「神」の字は<新たな王朝(血統)の始まり>を示唆しているとの説があります。
(参考:井沢元彦「天皇の日本史」)
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応神天皇にも、神功皇后にも、母子ともに「神」の文字が、名前に含まれています。
「神」に対比して、「人」<人間><人民><国民>としてみましょう。
殊に
事に
言に 恥 気色
ことに 出でて 言はぬも 言ふ に まさる とは 人に は ぢ たる けしき を ぞ 見る
異に 出でで 異父 ち 足る 怪しき
琴に 血 垂る 異しき
子とに
(夕霧22)C.<鎮魂>
「琴に出でで」<仲哀天皇から出た血筋ではなく>、
(応神天皇の顔立ちは、仲哀天皇と異なっており)、
言葉に出して言わなくても、
(面影が)どんな言葉にも勝る(不義の証拠である)と、
「人」<人民>に(顔向けできないほど)、恥じ入った(神功皇后の)「けしき(異しき)」<不実な>様子が伺えます。
「ひとにはぢたる(人に恥ぢたる)」は「ひとにはちたる(人には血垂る)」を連想させます。
濁点を打つ習慣の無かった当時、これらはともに、「ひとにはちたる」と表記されました。
「人」<人間><仲哀天皇>
としてみましょう。
「ひとにはちたる(人には血垂る)」<人の身体には血が垂れる><(暗殺された)仲哀天皇に血が垂れる>
「けし(怪し、異し)」<怪しい><不思議だ><異様だ><咎めるべきだ>
「けしき(異しき)」<異様な>
「けしき(景色)」<光景>
殊に
事に
言に 恥 気色
ことに 出でて 言はぬも 言ふ に まさる とは / 人に は ぢ たる / けしき を ぞ 見る
異に 出でで 異父 ち 足る 怪しき
琴に 血 垂る 異しき
子とに
(夕霧22)D.<鎮魂>
「琴に出でで」<仲哀天皇から出た血筋ではなく>、
(応神天皇の顔立ちは、仲哀天皇と異なっており)、
言葉に出して言わなくても、
(面影が)どんな言葉にも勝る(不義の証拠である)とは!
「ひとにはちたる(人には血垂る)」<(暗殺された)仲哀天皇に血が垂れる>。
「けしき(異しき)」<異様な>「けしき(景色)」<光景>が、目に浮かぶようだ。
(仲哀天皇は暗殺され、応神天皇は武内宿禰と神功皇后の子だ。)
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「とは」が「とは(永久)」を連想させることも興味を引きます。
「とは(永久)」<長く変わらないこと><とこしえ>
***「伊勢物語」第106段「竜田川」*******************************
(伊勢物語).ちはやぶる神代も聞かず竜田川 唐紅に水くくるとは (古今、秋下、在原業平)
(伊勢物語)C.<読み替え><鎮魂>
「ちはやぶる(血は破る)」<天皇家の純血が壊れる>だって?
神代の昔から、そんな話<不義>は聞いたこともない。
(清和天皇から陽成天皇に繋がる血筋を)断ち切った「たか(高)」<高子><二条后>は、
「唐紅」<鮮紅色><血の色><天皇家の純血の血統>に、
「水」<在原業平の血><薄まった天皇家の血統>を「括る」<束ねる>とは。
(皇統は「とは(永久)」に変わってしまった。)
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詳細はこの和歌のファイルを御覧下さい。
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メモ:
語彙、
連想詞の展開例など
あくまでこれは「タタキ台」として、試みに私の主観を提示したものに過ぎません。
連想に幅を持たせてあるので、自分の感覚に合わない、と感じたら、その連鎖は削って下さい。
逆に、足りないと感じたら、好きな言葉を継ぎ足していって下さい。
そして、自分の「連想詞」のネットワークをどんどん構築していって下さい。
詳細は「連想詞について」をご参照下さい。
****参照:(注441121):(夕霧23).横笛の調べはことにかはらぬを のメモ
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ここまで。
以下、(注)。
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