(注770065):いそのかみ ふるから小野の「もとかしは」
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(古今和歌集886 よみ人知らず).
いそのかみ ふるから小野の「もとかしは」 本の心は わすられんくに (雑歌、上)
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「いそのかみ(五十の神)」<五十代の天皇><仲哀天皇>
「古幹」<古い茎><枯れた幹>
「もとかしは」<応神天皇への代替わり(大嘗祭)に際して、生贄として捧げられた仲哀天皇>
「小野」「篠竹」<不義の子><応神天皇>
「もとかしは」は、「もどかし」を連想させます。
「もどかし」(シク活用形容詞)<動詞「もどく」の形容詞形><非難すべきだ><気に食わない><良くない><思い通りにいかない><もどかしい><はがゆい><じれったい><いらだたしい>
****参照:(注456786)b:「終止形」<体言相当の働き>b
「わする(忘る)」ラ行四段他動詞<忘れる><うっかり忘れる><忘れようとする><意識して忘れる><強いて思い出さないよう努める>
「忘られなくに」<打消助動詞「ず」のク語法><~ないのに><~ないものを><~ないのだなあ>
「忘られんくに」は音便形。
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(古今和歌集909 藤原おきかぜ).
たれをかも しる人にせん たかさごの まつもむかしの 友ならなくに
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「なくに」の「くに」が「くに(国)」を連想させることも興味を引きます。
この和歌に、上記の連想イメージを重ねて、あえて訳出してみましょう。
石上 本柏
いそのかみ ふるから小野の もとかしは 本の心は わすられんくに (雑歌、上)
五十の神 もどかし
(古今和歌集886 よみ人知らず).<鎮魂><読み替え>
「いそのかみ(五十の神)」<五十代の天皇><仲哀天皇>の、
「古幹」<古い茎><枯れた幹>が、
小野の「篠竹」<不義の子><応神天皇>への代替わり(大嘗祭)に際して、生贄として捧げられた「もとかしは」のようであり、
(「もどかし」<(然るべき皇統でなく)非難すべき>だと思われるのは)、
本来の皇統たる仲哀天皇の心が忘れられないからだ。
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