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「源氏物語」は伝え方が10割

「理系学生が読む古典和歌」
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(注74576):「み」「実」<子孫>

2021-01-24 18:03:57 | <子を思う闇>

 

(注74576):「み」「実」<子孫>

 

「み」を「実」<子孫>と解釈した歌については、以下の歌のファイルをご参照下さい。


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(光源氏166).橘のかをりし袖によそふればかはれる身ともおもほえぬかな
(玉鬘5).袖の香をよそふるからに橘のみさへはかなくなりもこそすれ
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******「実」=「子」(平家物語) ***************
(平家物語 源頼政1).のぼるべき頼りなき身は木(こ)のもとに 椎をひろひて世を渡るかな
(平家物語 源頼政1)C.
天に昇るべきはかないわが身は、(この謀反でともに討死した)子のもとに行こう。
椎の木<頼政>の下(もと)に落ちている、椎の実<子種>を拾うように、我が子達の首を拾いながら。
"椎柴"<喪服>を身にまとい、(平等院を流れる宇治川を)来世へと渡って行くよ。

(平家物語 源頼政2).埋もれ木の花咲くこともなかりしに 身のなるはてぞかなしかりける
(平家物語 源頼政2)B. 
埋もれ木のような私は花咲くこともなかった。(しかしそれ以上に悲しいのは)
私の種実(子)である仲綱の最期(討ち死に)が哀れだったなあ。
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******「実」=「子」(紫式部集) ***************
(紫式部集54). 数ならぬ心に身をばまかせねど身にしたがふは心なりけり
(紫式部集54)C.
(夫も失い、もう若くも無く)、数多く子供が出来るわけではない(諦めてしまった)我が心。
(亡き夫には)<種=子種>を蒔かせることは出来ない。
それにしても、(<心に身が従う=身分境遇が思い通りになる>のではなく)、反対に身の上<身分境遇>に従わざるを得ない心であることよ。
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***「みのり(御法)」「みのり(実り)」「のり(紀)」**************
(紫上22).絶えぬべきみのりながらぞ頼まるる 世々にと結ぶ中の契りを
(紫上22)E.<鎮魂>
(藤原氏の無法に)絶えてしまいそうな「み(実)」<実子><血筋>。
そんな「のり(紀)」<紀氏>だけれど、一縷の望みを抱いてしまう。
宮中で代々結ばれていく紀氏の絆(血縁)を。

(花散里5).結びおくちぎりは絶えじおほかたの 残りすくなきみのりなりとも
(花散里5)D.<鎮魂>
(天皇家と)結んだ、大方の血縁は(あらかた)絶えてしまったよ。
たとえ数少ない「のり(紀)」<紀氏>であっても、「みのり(実り)」<子>を残したかった。
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「なる」を「なる(生る)」<実が生る><実る><子種が実る>と解釈した歌については、以下の歌のファイルをご参照下さい。


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(光源氏175).唐衣またからころもからころもかへすかへすもからころもなる

「孵す」<(卵を)孵す><孵化させる>
「返す」<元に戻す><新生児を(冥界に、神に)返す><堕胎する><間引きする>

「子ろ」上代東国方言<子ら>:末摘花は常陸宮の娘で「東国」を連想させる。

「(また)からころも(股から子ろも)」<股から子らも><股から子が出てくる>

(光源氏175)B.
間引きしても、股から子らが出てくる。
(冥界に)返しても返しても(堕胎しても間引きしても)
卵が孵る。子が産まれる。
股から子らが生まれて、産声が鳴り響き、成長していく。
(もうカンベンしてくれ ← 自業自得)

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詳細はこれらの和歌の解釈のファイルを御覧下さい。

 

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(注98944):「八日目の蝉」「乳房」「子宮」「がらんどう」

2021-01-24 17:59:56 | <子を思う闇>

 

 

(注98944):「八日目の蝉」「乳房」「子宮」「がらんどう」

 

*** 乳が出るはずの無い乳房を赤子の口に含ませる紫上 ****************
うちまもりつつ、懐に入れて、美しげなる御乳をくくめ給ひつつ、戯れ給へる御さま、、、
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紫上は、乳の出ない(子を産んでもいない女性に出るわけのない)自分の乳房を口に含ませて、養女の明石姫君(後の中宮)をあやしていました。


***「八日目の蝉」「乳房」「子宮」「がらんどう」*********
最近、源氏物語の現代語訳を出版された角田光代さんの原作による映画「八日目の蝉」。
主人公の野々宮希和子は不倫相手の子を中絶したことがきっかけで、子宮を損ない、二度と子を宿せない身体になってしまいます。

不倫相手の本妻は、子を宿せなくなった希和子のお腹を指して、
「ここは<がらんどう>だ」
と、勝ち誇ったようになじりました。

希和子はあるとき、その不倫相手の男と本妻との間に出来た赤ちゃんを、衝動的にさらって来てしまいます。
その逃亡途中、ホテルの一室で、泣き止まぬ赤ちゃんをなだめようとして、自分の乳房を含ませます。
しかし、子を産んだばかりでもない女性に、母乳の出るはずはありません。
ましてや、妊娠不能になってしまった希和子に、母乳が出ることは、永遠にないのです。
希和子はいつまでも止まない赤ちゃんの泣き声によって、否応なくその事実を突きつけられます。
そして希和子自身も、その赤子以上に大きな声で、泣き出してしまいました。

希和子はその赤子に、源氏物語と同じく「薫」<竹の子><処女懐胎><生まれるはずの無い子>と言う偽名を付けて逃亡の旅を続けます。
(自分につけた偽名の「京子」は<平安京>を暗示しているのでしょうか。)

正式な夫のいない希和子に、子が生まれるはずはありません。
また、子宮が不能になってしまった希和子には、子を宿すことすら出来ません。
「薫」は、社会的にも身体的にも、二重の意味で、<生まれるはずの無い子>だったわけです。
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(注88897)b:「女」「母」「海」「梅」

2021-01-16 16:01:37 | <子を思う闇>


(注88897)b:「女」「母」「海」「梅」


******「女」「母」「海」「梅」***********************
「母」の字のもとは、「女」だそうです。
それに乳首を表すふたつの点々を加えたのが「母」。
<子供に授乳する母親>の意味だそうです。
「母」に髪飾りを示す部首をつけて「毎」。
さらに水を表すさんずいへんをつけて「海」とのこと。(角川書店「新字源」)
太古の海で生命が誕生したという意味では、海は全ての生物の母ですが、そのイメージと重なりませんか。
「海」が、「潮」を通じて「月」の連想を誘うことも、<初潮><月経>と符合します。
ちなみに、新羅遠征の際、筑紫地方で神功皇后が第15代応神天皇を出産した場所の地名は、「うみ(宇美)」と名付けられました。

木へんを付けると「梅」ですが、「うめ」という音韻は、「産め」を連想させますね。

パンダの繁殖が難しいのは有名ですが、
和歌山のアドベンチャーワールドで「メイメイ(梅梅)」が繁殖に成功したのは、相当ラッキーなケースのようです。

「梅梅」(産め産め)という命名が、功を奏したのかも知れませんね。


興味のある方は、下記の注をご参照下さい。

****(注774636):パンダの繁殖の困難さ 参照


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「梅」の酸っぱさは、<つわり>をも連想させますね。


***「枕草子」第四二段 ************
老いたるものの「腹たかくて」<妊娠して>喘ぎありく。
また若き男もちたる、いと見ぐるしきに、他人の許に行くとて妬みたる。
老いたる男の寢惑ひたる。又さやうに髯がちなる男の椎つみたる。
齒もなき女の「梅」くひて酸がりたる。
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「おばちゃん、あなたのお父さんとお母さんが羨ましいわ」
「何でですか?」
「だって、あなたみたいな宝物を、この世に残せたんだもの」
(映画「海街diary」)
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映画「海街diary」は、四人の娘を残した父親の死で始まり、
一人も子を残せなかった女性(二宮さん)の死で幕を閉じました。


姉妹の間で、しばしば話題となった庭の「うめ(梅)」は、「うめ(産め)」を連想させます。
祖母の漬けた十年ものの梅酒が、同じく十年越しの、長姉の母親に対する心のわだかまりを氷解させたシーンは印象的です。

氷砂糖が、ゆっくりと時間をかけて、琥珀色の梅酒の中にようやく溶け込んでゆくように、
雪解けには時間がかかった、ということなのかも知れません。


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時間が必要だったんじゃない?
(映画「海街diary」)
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ラストシーンで、喪服を着た姉妹たちが歩いた「うみ(海)」は「うみ(産み)」をも連想させます。
ご存知の通り、連用形は転成名詞としても用いられますが、
「まち(街)」が「まち(待ち)」を連想させることも、興味を引きます。

 

「うみ(海)」は「うみ(倦み)」をも連想させますね。
「うみまち(海街)」は、「うみまち(倦み待ち)」を連想させます。

<うんざりするほど待ちくたびれても、やはりまだ諦め切れない>、
そんな女性の気持ちを連想してしまうのは、私だけでしょうか。
まあ、これは考え過ぎかも知れませんね。

 


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サチ:毛虫取ったり、消毒したり。生きてる物は、みんな手間がかかるの。
チカ:あ、それおばあちゃんの口癖。
(映画「海街diary」)
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(注88845):「山吹」<不稔><実無し>と「くちなし」<口無し>

2021-01-14 23:45:16 | <子を思う闇>

 

(注88845):「山吹」<不稔><実無し>と「くちなし」<口無し>

 

(後拾遺集5-1154 兼明親王).七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞあやしき


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大田道灌の逸話(後拾遺和歌集、1086年成立か? 巻19)

中務卿兼明親王の和歌:
洛西の小倉山荘にて雨の日に蓑を借りにきた人がいたので、山吹の枝を折って与えた。
上記歌の「実の」と「蓑」が掛詞になっており、
「蓑ひとつすらない」(ので貸せない)の意。
古来から観賞用は八重山吹であることが多い。(有岡利幸「資料 日本植物文化誌」)
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大田道灌は狩りの途中で雨に遇い、雨具の蓑を借りに入った家の娘に、蓑ではなく山吹を差し出されたときこの意味が分らなかった。
のちに兼明親王の歌が背景にあるのを知り、歌の道を志すようになったと言う。


孤鞍 雨をついて茅茨をたたく
少女のためにおくる花一枝
少女いはず「花語らず」
英雄の心緒乱れ糸の如し


山吹襲(かさね)など黄色系の染料は、しばしばクチナシの実が用いられた。
「梔子」<クチナシ><口無し>から「花語らず」
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山吹の花色衣 主や誰 問へど答へず くちなしにして (古今集、19-1012、素性法師)
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花咲きて実は成らねども 長き日(け)に思ほゆるかも 山吹の花(万葉、10-1860)作者不詳
七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞあやしき(後拾遺集・雑5-1154兼明親王)大田道灌の逸話
今もかも咲きにほふらむ橘の小島の崎の山吹の花(古今、春下、121、よみひとしらず)
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蜻蛉日記では、兼家から八重山吹の花を贈られて、その返しに夫人は
(道綱母272).誰かこの数は定めしわれはただとへとぞ思ふ山吹の花
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若紫も玉鬘も源氏の養女となります。そしてともに迫られます。
玉鬘は事なきを得ましたが、若紫は強引に契られ、妻となります。
しかし、子は出来ませんでした。

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野分(台風)の後、玉鬘に戯れかかりながら迫る源氏。それに対してたじろぐ玉鬘。
夕霧はそのときの玉鬘の様子を「八重山吹の咲き乱れたる盛り」に例えています。
それは、花弁のように広がった雄しべ(源氏)が折れ重なり(「襲(かさね)」の字は<襲う(おそう)>とも読みますね。)、
雌しべ(玉鬘)は身を縮こませている(退化している)のイメージに通じます。
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ユリ科ヤブカンゾウ(八重咲き)、ノカンゾウ(一重咲き)
山吹や忘れ草(カンゾウ)に見られるように、八重咲きの花は、雄しべが肥大化して花弁のように何重にも雌しべを取り巻き、また雌しべが退化して矮小になり、しばしば不稔となります。(稔性となる場合もあります)
「軒のしのぶ」<軒先に植えられたしのぶ草=ノキシノブ=偲ぶ草=昔を思い出す縁となる草>「しだ草」「した草」<ノキシノブ>
(ちなみに、辛いことを忘れるといわれ、髪飾りなどに用いられる忘れ草「カンゾウ」の八重咲き(藪カンゾウ)の花は、一日で萎れる)
ちなみに、ヤブカンゾウの花は、一日で萎れます。虫を誘引して受粉するには、不利ですよね。まさに、あだ花です。
有毒の根で知られるヒガンバナも、ヤブカンゾウと同じくかなり派手な花にも関わらず、種子は出来ず、地下茎のみで増殖します。

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(注775546):<八日目の蝉>:「月」は無く、ただひとつの「星」

2021-01-14 23:37:18 | <子を思う闇>

 


(注775546):<八日目の蝉>:「月」は無く、ただひとつの「星」

 

***「月」は無く、ただひとつの「星」****************************
源氏物語の現代語訳を、最近刊行された角田光代さん原作の映画「八日目の蝉」で、
主人公の絵理奈は、月経が遅れたため、夜中に公園のトイレで妊娠検査キットを使って尿を調べました。
不倫相手の子を宿した現実を否応無しに突きつけられ、絵理奈は思わず夜空を見上げます。
そこには、「月」は無く、ただひとつ「星」が輝いていました。

絵理奈の父と不倫し、妊娠した希和子は、男に求められるままに堕胎し、それがきっかけで子宮を損ない、二度と子を宿せない身体になってしまいました。
本妻の子である絵理奈がまだ赤子の頃、思いつめた希和子は、ある時絵理奈を衝動的に誘拐し、逮捕されるまでの四年間、逃亡生活を送りながら絵理奈を育てました。
希和子がことあるごとに幼い絵理奈に歌ってくれたのは、「見上げてごらん夜の星を」でした。

自分を誘拐した希和子と同じように、不倫相手の子を宿したことが決定的となった絵理奈の耳には、その唄がこだましていたのではないでしょうか。
かつての逃亡をなぞって旅をしていた絵理奈は、その終点(警察に逮捕・保護された港)にたどり着いたとき、全てを思い出し、決心を固めます。
希和子とは反対に、「堕ろさずに産んで育てる」と。
それは、あの時見上げた夜空のように、「星」がひとつしかない、かけがえの無いもののように感じられたからかも知れません。

希和子は、裁判で、子育てを経験出来たことへの<感謝>を口にしました。
彼女は、絵理奈を誘拐し逮捕されたことを、「反省」していたかもしれませんが、もはや「後悔」はしていなかったように見えます。

それよりむしろ、<堕胎してしまったこと><子宮を不能にしてしまったこと>を、その何千倍も、後悔していたのでは無いでしょうか。
身勝手でも産んでおけばよかった、と。

ちなみに、逃亡途中、希和子が絵理奈に付けた偽名は、「薫」でした。
それは、柏木と三宮の不義密通で産まれた子と同じ名前です。
「薫」は、<産まれるはずの無い子>でした。
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