失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「LOVE ME TENDER」 THE RC SUCCESSION 1988年

2009-05-07 | 
忌野清志郎は、優れたソングライターであると同時に、洋楽日本語カヴァーも得意としていた。このジャンルの代表作「LOVE ME TENDER」は、RCの20thシングル。

①LOVE ME TENDER
作詩・作曲:E. PRESLEY, V. MATSON、日本語詩:忌野清志郎
オリジナルはエルヴィス・プレスリー、1956年。冒頭「LOVE ME TENDER」の部分を「何 言ってんだー」に変換するのは結構よくあるパターン。その後も反核(反原発)メッセージをストレートにぶつけてくる日本語歌詞は、清志郎にしてはひねりがない。それだけ苛立ちが伝わってくるといえばそうかも。久々に聴いたらこんな感想になってしまったが、やっぱり声の説得力が抜群なんだな。今聴くと最後の「長生きしてえな」のフレーズがずしんと響く。後半の子供コーラス(ものすごくバラバラ)がまた哀しみを誘う。

②SUMMERTIME BLUES
作詩・作曲:E. COCHRAN, J. CAPEHART、日本語詩:忌野清志郎
オリジナルはエディ・コクラン、1958年。こちらもロック・スタンダードを日本語で。内容も①と同じく反原発をテーマにしている。メッセージの伝え方としてはややストレートすぎて稚拙の感もある。でもロックンロールってそういうメディアかもしれない。高井麻巳子が「原子力発電所が~」の一節を歌う。カワイイ。三浦友和が政治家の演説風ナレーションを、泉谷しげるがタチの悪いゴロツキ役で登場。

定価1000円、中古で210円。
結局、強く印象に残るのは、怒りを含んでも制御された清志郎の声の力。

アルバム『COVERS』と同時発売のこのシングルが東芝EMIから発売拒否され「素晴らしすぎて発売できません」の広告を出したのは有名な話。結局キティから発売されて大ヒットになった。翌年リリースされたライブ盤『コブラの悩み』冒頭の「I SHALL BE RELEASED」で「俺を黙らせようとしたが かえって宣伝になってしまったとさ」とこの顛末を歌っている。同曲で「日はまた昇るだろう 東の芝にも」と東芝を皮肉っている部分があるのだが、「芝」とはっきり歌っているにもかかわらず歌詞カードでは「東の島」になっている。で、『コブラの悩み』は東芝EMIからリリースされているんだよね…これはいいのか?キヨシロー、と当時ちょっと感じたことを思い出した。ま、それで「悩み」とタイトルに付けたのかな。

話を『COVERS』に戻すと、何といっても最後の「イマジン」が素晴らしい。歌詞は王様並みに直訳で、エンディングに付けたオリジナル部分「ぼくらは薄着で笑っちゃう ああ 笑っちゃう」のコーラスで、いきなり透明な世界に連れて行かれる。鮮やか。コーラスで、ちわきまゆみと三浦友和が参加。
あと桑田佳祐がコーラスで参加した「サン・トワ・マミー」も傑作です。




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