失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「SAYONARA」 八木さおり 1988年

2015-08-22 | 黄魔術系
前回につづき、松本・細野コンビの名作を。

八木さおりの6枚目にして最後のシングルは、自身の主演映画「パンダ物語」主題歌。

歌手活動はこれで打ち止めになったが、八木さんは現在も女優として芸能活動継続中。芸名は数度のマイナーチェンジをへて、今はまた「八木さおり」に戻っている。


①SAYONARA 東宝映画「パンダ物語」主題歌
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:武部聡志
「細野晴臣の歌謡曲20世紀ボックス」(2009)のブックレットから細野さんの言葉を引用。「ああ、もうこれは集大成です。」「何だろう、こういうタイプの曲はその頃続けて作ってきましたけど、一番自分の中でフィットする世界だったんですよね。そのメロディ・ラインとか。」「期せずして、そういう活動の最後のピリオドになったというかね。」(引用おわり)そんな曲のタイトルが「SAYONARA」なんて、でき過ぎじゃないか。「ガラスの林檎」タイプの荘厳さを感じさせるバラード。さおりさんが素直に伸びる声で切々と歌うのは、別れのシーン。聖子ほどの技巧がないのも一途さを表現するにはプラスに働いている。2番のAメロ「あなたを愛した 月日を小箱に入れて 胸の奥にしまう」の、「小箱に」と「入れて」の間の引き伸ばされた時間が、訣別へのためらいと迷いを伝える。この部分でバックのサウンドがすっと引いていくのが効果的で、何度聴いてもハッとしてしまうのだ。「サヨナラがくちびるから 風に舞う木の葉なら 想い出はふりつもって いつの日か歌になる」「サヨナラと口にしたら もう二度と逢えないわ 一度しか言えないから 美しい言葉なの」思わずサビを全部書き写したくなるほどの名フレーズ満載。壮大なメロディに乗ると浄化力抜群で揺さぶられる。パンダとどう関係するのかは分からんが、映画のエンディングで流れたら泣くだろこれは。

②心
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、編曲:武部聡志
カップリングはさらにシンプルなタイトル。明るく弾むようでいて哀しみを忍ばせるようなアレンジが素晴らしい。「心は一番大事だから 時には涙で綺麗にしてあげたい」いや、この歌は嬉しくて泣いてるみたいだけど。

定価1000円、中古で380円。
思いつめた表情でこちらを見つめる美少女さおり、18歳。
下半分は映画「パンダ物語」から、花畑で子パンダを抱きあげるアイドルさおり。この6年後、脱ぎます。


「SAYONARA」があまりにもよかったので、右のアルバム『八木さおりパーフェクトベスト』(2010)を買ってしまった。予想どおりこの2曲に匹敵するほどの名曲はなかったけど、初期の来生たかお作品なんかも懸命に歌っていて好印象。デビューから2年でぐんぐん歌が上手くなり、ラストシングルが最高傑作って、幸せなシンガーだよなあ。


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1 コメント

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Unknown (奈良高雄)
2019-06-04 18:16:54
脱ぐとか、どうでもいいんだよ。昔のアイドル。昔の女だよ。
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