「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

通信教育の中から 1

2006-05-26 19:28:13 | Weblog
font size="3"> 暗号の教育もあった。暗号は4桁の数字を順繰りに受け、その数字に乱数表をあてて上の数字から下の数字を引く、その場合引かれぬ数字は隣から借りてくるのではなく、各列独立して引き算をする。そうして出た数字を暗号書で捜すのである。
 乱数表は1日1枚で何月何日はどのページを使うという事が、秘密指令で定められているので、この乱数表が盗まれない限り外には分からない仕組みになっていた。飛行機乗りはその日1日分だけの乱数表を持って出発する。
 暗号教育が終るとすぐ用紙類は回収して、焼却された。筆記する等禁ぜられた。
 次は無線機の取り扱い教育があった。私達に専ら教えられたのは3号甲無線機で、軍事秘密兵器だということを繰り返して言いながら操作教育をされた。
 3号甲無線機は受信部には電池を使い、スーパーヘテロダイン方式でコイルは周波数によって差し替える。送信部の電源は手回し発電機をグーコ、グーコーと2人が両手で回した。発振方法には自励発振と水晶発振があったが、前者は周波数が変動しやすくて、受信しにくく野太い音であったが、後者は水晶片によって制御される為、周波数の変動が少なく綺麗な澄んだ音で、すぐ分かった。
 この機械は初年兵が通信当番の時に、古参兵が発電機を受け持った場合、ワザと早く回したり、遅く回したりしてくれるものだから、電圧が上下して空中線電流が強くなったり弱くなったりして困る場合があり、古参兵の気嫌に気を使いながら送信しなければならないこともあった。