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コラム備忘録【3/29☆開幕】

2019年03月29日 07時00分40秒 | マリーンズ2019

≪2019/3/29≫

【独占】ロッテの大型新人・藤原恭大が開幕直前に語った知られざる苦悩と中日・根尾へのメッセージ

 開幕2日前。ロッテのスーパールーキー、藤原恭大は、オープニングデーに備えた準備が進むZOZOマリンにいた。開幕1軍に選ばれたメンバーによって行われた調整練習だ。
「小さく軽いバットのほうがぶれがわかるんです」
 特製のミニバットを使ってのティー打撃。藤原は、通常のメニュー終了後にさらに室内練習場で1時間打ち込んでいた。
 青春映画のどこかに紛れていてもおかしくないようなイケメンは、開幕直前の心境を甲子園大会の開会式前の緊張感とも、大阪桐蔭の入学式前のワクワク感ともドラフト前の思いとも違うと言う。
「そのどれとも違うんですよね。あまりイメージがつかない。早くその日を体験してみたい」
 スタメン出場の可能性について井口監督は「聞きたいですか?教えません」と明言を避けた。藤原自身は「確率的には(スタメン出場は)めちゃくちゃ低いと思います」と、悲観的だが、こうも言う。
「普通でいけばないんですが、そこに合わせていて損はない」

 外野3人のうち角中と加藤は当確。残り1枠を岡、荻野、藤原の3人が争っているわけだが、楽天の開幕投手が右腕の岸であることを考慮すれば、機動力を使える左の藤原が抜擢されても不思議ではない。

 昨秋のドラフトでは、金足農の吉田、チームメイトの根尾、報徳学園の小園と共にBIG4と注目され、阪神、楽天、ロッテの3球団の競合となり井口監督が引き当てた。その高い身体能力が買われ、沖縄の石垣島キャンプでは1軍メンバーに入ったが、初めてプロのバッティング練習を目の前で見たときに衝撃を覚えた。

「フリー(打撃)で、みんなスタンドに入れるでしょう。アマチュアでは不可能な光景です」
 藤原は「感覚がバグる」と言った。
 とくに驚いたのは外国人選手の飛距離だ。新外国人のバルガス、日ハムから移籍してきた“寿司ボーイ”レアードのパワーを見て、負けず嫌いの藤原は「自分も飛ばそうと。フォームを崩した」ほどだった。
 キャンプの序盤で藤原は開幕1軍獲得構想をこう描いていた。
「中学時代にも代打から結果を残してレギュラーをつかんだ。プロでも代打から結果を残してレギュラーをつかみたい。走塁、守りのレベルはまだまだプロのレベルではないが、チームのためにできることを100パーセントやりたい」

 藤原は、オープン戦で、14試合に出場、32打数7安打、3打点、1盗塁の数字を残して、開幕1軍の切符を手にいれた。
ーーあの構想通りになったという手ごたえは?
「それがなければ開幕1軍はなかった。代打や途中出場の限られたチャンスを生かせられればと思っていましたが、監督、コーチの目に留まるようなものを残せて(開幕1軍に)入らせてもらった。ヒットは7本ですが、みんな芯で捉えられた。そういう意味では、中学時代と同じような感じで描いた通りに来ています」

 藤原は涼しい顔で話す。そこが大物たる所以。だが、プロの壁を超えるための知られざる試行錯誤を繰り返してきた。そして、今なお、その苦悩は続いている。

 ーープロへの対応。ここまで何をどう変えた?
 そう聞くと藤原は「細かく言えば長くなりますよ」と笑った。
「高校からやっていた打撃フォームが土台としてあって、これは変えていません。でも少しだけ小手先の部分を変えた。小さなルーティンも変えていきました」

 藤原のバッティングの原点は回転力である。
「ぱっと回る。コマのように速く回る。僕みたいな体重のない選手は回転力がなかったら飛ばないんです。でも、その回転力が小学校の頃からズバ抜けて強かった。僕なんかそこがなくなれば終わりです」

 右足を独特の感覚で長く上げながらタイミングを取って“間”を作るが、そこからインパクトに向け藤原が意識しているのが回転力だ。左利きの左打者の特徴として左手の押し込みが強いが、これも中学、高校と通じて、「左手を使え」、「いや右手を使え」の紆余曲折を経て「今は右手を使っている。でも引き出しとしては(左手の使い方も)ある」という。
 だが、プロでは、最初、その回転力を生かす手前でスピードに戸惑った。
「最初は動作を早くしたんです。でも1試合、2試合で変えてしまったものって簡単に崩れるんです。そして結果的に最初のところへ戻った」
 それでも「コンパクトに。(フォームを)凝縮した」という。
 生活リズムも変えた。朝起きて体調を見てからウォーミングアップの量や、食事時のごはんの量、「何を食べて、何を飲むか」までを細かく変えながら試合のための準備をした。
 その理由は、「プロのレベルは少し調子が悪くなっただけでまったく打てなくなり、思ったプレーができなくなる。高校とはまったくレベルが違う」から。
「状態がマックスの状態で打席に立ってもヒット1、2本しか打てないんです」
 プロの壁はあまりに大きく立ちはだかっていた。

 初めての木製バットにしてもそうだ。
 84.5センチの長さのものからスタートしたが、84になり、85になり、現在は、84.5と、85を併用している。重さは880グラムと885グラムだ。バットの形状も何度も変えた。
「振った感触なんですが、ほんのちょっとのことで打てなくなるんです。たとえば振った感覚はよくてもフリーでダメ。振っていい、フリーでもいい、でも試合でダメだったり、逆にフリーでダメだったのに試合でめちゃいい感覚になるバットもあって難しいんです」
 繊細な藤原ゆえの苦悩。追求すればするほど出口がわからなくなる。
 オープン戦の終盤には、日本球界を代表するナンバーワン投手、巨人の菅野との対戦機会を得た。結果は、二ゴロと見逃し三振。
 藤原は「怖かった」と言った。
「菅野さんはコントロールが違う。投げミスが少ないし、まっすぐのキレ、変化球のキレ。全然違います。怖さがあるんです。球種は7種類くらいあって僕には、3種類しか投げなかったけれど、ばんばん決められ、すぐに追い込まれる。あれは打てないです(笑)」

 怖さとは三振の恐怖だ。
 2打席目は追い込まれてから、ストレートを待っていたが、カーブを使われて反応ができなかった。
「高校時代なら対応できました。でも150キロを超えるプロのボールでは……でも、あの日の菅野さんの調子は良くなかったと思うんです。思い切り投げていないのがわかりました。まだまだレベルが上がってくる。本気の菅野さんを見ていないんです。でも18歳の僕が、こんなに早く菅野さんと勝負させてもらえるとは思ってもみませんでした。ありがたいという言葉に尽きます。でも、いいピッチャーを打てないとプロでは生き残れないんです」
 菅野にはプロとは何かを教えられた。

 ーーこの2か月間でつかんだものは?
「バッティングで言えば、追い込まれてからは、少しバットを短く持っていますが、そのカウントでは逆方向を意識することが大事だとわかりました。プロでは追い込まれてから引っ張るイメージなんか持っていると、まず打てない。打率1割で終わりますよ」
 そして藤原は「ほかは絶対的なものは何もない」とクビを振った。彼はアピールポイントを聞かれると「足」と「守備」と答えてきた。

――守備、足は十分に通用するという監督の評価もあるけど。
「全然です。そこをアピールしていこうと思いましたが、特別できたことは何もないんです。簡単そうに見えて、やってみるとプロは本当に細かい。いくら速くても技術はアマチュアです。でも守備と走塁は100%を目指します。調子の波が少ないところですから」

 味方のピッチャー一人一人のスピード、決め球やカウント球を知り、配球を読みながら、打球方向を予測してポジショニングしなければならない。もちろん、打者のデータを頭に入れ「打者の力量も把握しておく必要があります」という。瞬時に頭にインプットすべきことが多すぎて、まだそこまで追いつけていないのが実情。
「右、左へのスピード、球際の勝負強さ、ゴロへのチャージの遅さや、送球の乱れとか、まったく何もできていません」

 マリンの風とも“お友達”にならねばならない。オープン戦では予測落下地点から強風で20メートル以上も戻された打球に追い付けずにヒットにしてしまったこともある。
「マリンの最上部から上に出た打球は戻ってきます。一番、難しいのがライナーです。ここはとくに伸びるので、スタートのタイミングが難しい」
 でも、考えてみれば、まだ18歳なのである。
 ロッテの高卒ルーキーのスタメン出場となると、1965年の山崎裕之以来、54年ぶりとなる。何もかもパーフェクトにできているとすれば、そっちの方がおかしい。

 ――プロで貫きたいものは?
「自分の打って、守って、走るという、スタイルは変えたくない。そこを変えてしまったら終わりだし、周囲に否定され変えられるような選手になった時点でスケールの小さい選手になって終わりです。そうなってしまうと、努力をしても上へはいけません」
ーー藤原の代名詞はスピードだ。
「プレーのスピードって足だけじゃないと思う。スイングスピードもそうだし、肩もそうだろうし、それがなければ僕自身、ここまでこれていない。この小さな体で他の選手よりも抜けているところを大事にしていく。でもスピードには怪我をしやすいというリスクがあります。スピードと怪我をしない体。そこを両立しないと」
――ここまで故障せずにこれたじゃない?
 そう切り出すと藤原は「故障?プロでどこも悪くない人なんていないと思う。公にはなっていないですが…」と口ごもった。
 無理をして結果的に怪我が長期化することはチームに迷惑をかけるが、「あそこが痛い」、「ここが痛い」で、すぐ休むような選手はプロでは大成しない。元阪神の金本知憲氏や広島の田中、菊池に代表されるように成功している選手は怪我に強い。

中学時代に3年間一緒にプレーした広島の小園は開幕1軍に残り、大阪桐蔭時代に共に春夏連覇を果たした中日の“盟友”根尾は、怪我が原因で2軍スタートとなった。
 藤原は「想像通りです」と言う。
「小園と根尾ではタイプが違うんです。“小園は、いきなり150キロを普通に打ちますよ”と僕は言っていました。天才型なんです。広島で開幕1軍を勝ち取るところまでの想像はできなかったですが、打てると思っていました。でも、根尾は、いきなり打つタイプじゃない。徐々に、徐々にというタイプ。高校時代も、3年生で一気に花が咲きました。だから根尾は徐々に出てきますよ」
 根尾とは連絡をほとんどとっていない。
「お互い自分のことだけで必死でしょう」
 そこには親友でありライバルでもある微妙な心理も見え隠れしている。
 ――小園は早熟天才型。根尾は努力晩成型。では、あなたは?
「身体能力は奴らに100%負けない自信があります」
 藤原は、なぜ大阪桐蔭が、プロ養成学校と言われるほど、次から次へと有望選手をプロへ送り続けて成功しているのか、その理由について、語ってくれた。
「正直、中学で地域で一番うまい、日本で一番うまい選手が入ってきています。入学して周りを見た瞬間に日本一を取って当たり前、と思いました。中学生のトップが集まるんです。緊張もしましたし、そういう選手に囲まれると、気持ちの強い選手しか残りません」
 その選ばれた人間がさらに競争を勝ち抜きプロへいく。
「根本的な能力、素材もありますが、そこから上へいくために必要なことは努力と気持ちの2つです。中でも根尾は、だんとつでした。彼は日本一努力をしていました」
 ーーあなたよりも?
「僕が同じようなことをすれば体が潰れます。根尾が自主トレで怪我してしまったのも練習をしすぎた影響もあったんです。でも、そこが根尾の強み。人より努力できることです」
 そういう大阪桐蔭の土壌で培ってきたことが、さらなる精鋭が集まっているプロの世界でも生きている。競争を勝ち抜く気持ちの強さの重要度は、大阪桐蔭でもプロでも共通している部分。
「それはあります。本当に少しの差、紙一重だと思うんです。努力をしてうまくなる人は。でも、その努力が自信になる。結局、その自信が打たせてくれるんです」

 ーーさあ開幕。どんな結果をイメージしている?
「とにかくヒットを打ちたい。それしか考えていません」
ーーヒーローインタビューをイメージしているのでは?
「シーズンで1、2回できれば。そんなもんですよ」
 最後に聞きたい。
――プロでやれるのか?
「やれる自信はある。このプレースタイルで上を狙う。(走攻守の)3個が揃っていないと上へ上り詰められない。そこを磨き続けたい」
――今、口にできる目標は?
「怪我なくプレーすることと、1年を通じて、ずっと1軍にいたい。結果を残さないとすぐ落ちる。そこはわかっています」
  今日29日、ロッテは本拠地での開幕戦に楽天を迎える。楽天の予告先発は、昨年の最優秀防御率タイトルホルダーの岸。18歳の大物ルーキーは、きっと語り継がれるであろう、その偉大なる一歩をどんな形で踏み出すのだろうか。

(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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