ドラフト5位有吉優樹、営業マンからの転身――お客様優先で、プロへの夢を切り開く【マリーンズ浦和ファーム通信#30】
営業優先の社会人野球
まだ、営業マンの時の癖が抜け切れない。ふとした瞬間にズボンのポケットにしまい込んである携帯を取りだし、電話が入っていないかチェックをしてしまう。ドラフト5位で九州自動車三菱から千葉ロッテマリーンズに指名をされ入団をすることになった有吉優樹投手は野球に打ち込む一方で、一人の営業マンとしても日々、汗を流してきた。
配属は福岡の福重店。
300人の顧客を抱えていた。ライバルの社会人チームは野球に没頭できる環境が与えられていることも多い中で基本は営業優先。試合前日でもお客様の納車が重なれば、それを優先し仕事が完了してからボールを握る。そんな日々の中からマリーンズの指名を受けた。
「お店は福岡ですから、もちろんお客様のほとんどはホークスファンです。それでもお客様からは『有吉くんが投げる時だけはマリーンズを応援するよ』と言ってくださる。これから接していただいたお客様のためにも早く一軍のマウンドで投げて、マリーンズのユニホーム姿をお見せしたいと思っています」
11月30日、福岡市内で行われたマリーンズとの契約。入団が合意に達すると、そう抱負を口にした。現在は300人いた顧客の引き継ぎ作業の途中。名刺には綺麗な字で1枚1枚に「三菱を退社することになりました。これまでありがとうございました。新しい担当の方もどうぞ宜しくお願いします」と書き添えられていた。1週間前にも軽自動車を1台売って、納車を済ませたばかりだった。
プロ入りを諦めず
元々は千葉県大網白里市出身。東金高校から東京情報大学を卒業し、野球を続ける道を模索し、福岡に渡った。ただ、そこは野球で結果を出すことだけが求められている環境ではなかった。企業の営業マンとして仕事を果たしながら、野球を続ける。営業ノルマもあり簡単ではない日々も、夢を諦めず、一生懸命に生きた。
「プロ野球入りを諦めたことはない。むしろ、年々、プロ野球に入りたいという気持ちが強くなった。仕事にも野球にも頑張れた」
慣れぬ営業。苦戦をした。
「車を売ろうと思うな。お客様との関係を築け。ちょっとした提案や、配慮を繰り返すうちにキッカケができるものだ」
上司や先輩からは、そうアドバイスされた。だから、とにかく取引先に顔を出すことを心掛けた。「車の調子はどうですか?」。「ちょっとエンジンの状態を確認しましょか?」。日々の会話を大事にした。チームでは野球の練習中も携帯電話をズボンのポケットに入れることも認められていた。お客様からなにか相談の電話があった時にすぐに対応できるようにチームの全員が持って練習をすることが当たり前に許可されていた。もちろん、すぐに気が付くようにとマナーモードではなく着信音が鳴ることも許されていた。ブルペンでも電話は鳴った。
ある時、気持ちよく投げていると、キャッチャーの携帯がなった。お客様からの電話だった。投げる予定が、投げる相手の捕手は急きょ、お客様のところに行ってしまった。それが当たり前の環境。お客様優先に動くチームは誇りであり、これからも忘れたくない大事な初心だ。
「おかげさまで4年間で30台を超える車を売ることができました。ただ、心残りはパジェロを売ることができなかったことですね。残念です」
一軍の遠征で福岡に戻ってきたい
営業での経験は野球に生きるとも言う。
お客様がなにを求めているか。どうしたらいいのか。表情やしぐさから読み取る。そういうことも、次第に覚えて行った。観察力が磨かれた。それは打席に立つ打者との駆け引きともどこか相通じる部分があった。
「最初は千葉を離れて心細かったですが、今は沢山の知り合いと思い出がここ福岡には、あります。また千葉に戻ることができて、とてもうれしいですし、ぜひ福岡で投げる姿を見せるため一軍の遠征でここに戻ってきたいと思っている。開幕一軍。いや開幕ローテを目指して頑張ります」
重い球質の速球にカットボールを操る投手。クレバーで強気の投球スタイルもマリーンズスカウトの目に早くから留まりリストアップされていた。福岡で貴重な経験と濃厚な日々を過ごし、地元・千葉に戻るルーキー右腕。そのシンデレラ・ストーリーに注目が集まる。
(ベースボールチャンネル)
営業優先の社会人野球
まだ、営業マンの時の癖が抜け切れない。ふとした瞬間にズボンのポケットにしまい込んである携帯を取りだし、電話が入っていないかチェックをしてしまう。ドラフト5位で九州自動車三菱から千葉ロッテマリーンズに指名をされ入団をすることになった有吉優樹投手は野球に打ち込む一方で、一人の営業マンとしても日々、汗を流してきた。
配属は福岡の福重店。
300人の顧客を抱えていた。ライバルの社会人チームは野球に没頭できる環境が与えられていることも多い中で基本は営業優先。試合前日でもお客様の納車が重なれば、それを優先し仕事が完了してからボールを握る。そんな日々の中からマリーンズの指名を受けた。
「お店は福岡ですから、もちろんお客様のほとんどはホークスファンです。それでもお客様からは『有吉くんが投げる時だけはマリーンズを応援するよ』と言ってくださる。これから接していただいたお客様のためにも早く一軍のマウンドで投げて、マリーンズのユニホーム姿をお見せしたいと思っています」
11月30日、福岡市内で行われたマリーンズとの契約。入団が合意に達すると、そう抱負を口にした。現在は300人いた顧客の引き継ぎ作業の途中。名刺には綺麗な字で1枚1枚に「三菱を退社することになりました。これまでありがとうございました。新しい担当の方もどうぞ宜しくお願いします」と書き添えられていた。1週間前にも軽自動車を1台売って、納車を済ませたばかりだった。
プロ入りを諦めず
元々は千葉県大網白里市出身。東金高校から東京情報大学を卒業し、野球を続ける道を模索し、福岡に渡った。ただ、そこは野球で結果を出すことだけが求められている環境ではなかった。企業の営業マンとして仕事を果たしながら、野球を続ける。営業ノルマもあり簡単ではない日々も、夢を諦めず、一生懸命に生きた。
「プロ野球入りを諦めたことはない。むしろ、年々、プロ野球に入りたいという気持ちが強くなった。仕事にも野球にも頑張れた」
慣れぬ営業。苦戦をした。
「車を売ろうと思うな。お客様との関係を築け。ちょっとした提案や、配慮を繰り返すうちにキッカケができるものだ」
上司や先輩からは、そうアドバイスされた。だから、とにかく取引先に顔を出すことを心掛けた。「車の調子はどうですか?」。「ちょっとエンジンの状態を確認しましょか?」。日々の会話を大事にした。チームでは野球の練習中も携帯電話をズボンのポケットに入れることも認められていた。お客様からなにか相談の電話があった時にすぐに対応できるようにチームの全員が持って練習をすることが当たり前に許可されていた。もちろん、すぐに気が付くようにとマナーモードではなく着信音が鳴ることも許されていた。ブルペンでも電話は鳴った。
ある時、気持ちよく投げていると、キャッチャーの携帯がなった。お客様からの電話だった。投げる予定が、投げる相手の捕手は急きょ、お客様のところに行ってしまった。それが当たり前の環境。お客様優先に動くチームは誇りであり、これからも忘れたくない大事な初心だ。
「おかげさまで4年間で30台を超える車を売ることができました。ただ、心残りはパジェロを売ることができなかったことですね。残念です」
一軍の遠征で福岡に戻ってきたい
営業での経験は野球に生きるとも言う。
お客様がなにを求めているか。どうしたらいいのか。表情やしぐさから読み取る。そういうことも、次第に覚えて行った。観察力が磨かれた。それは打席に立つ打者との駆け引きともどこか相通じる部分があった。
「最初は千葉を離れて心細かったですが、今は沢山の知り合いと思い出がここ福岡には、あります。また千葉に戻ることができて、とてもうれしいですし、ぜひ福岡で投げる姿を見せるため一軍の遠征でここに戻ってきたいと思っている。開幕一軍。いや開幕ローテを目指して頑張ります」
重い球質の速球にカットボールを操る投手。クレバーで強気の投球スタイルもマリーンズスカウトの目に早くから留まりリストアップされていた。福岡で貴重な経験と濃厚な日々を過ごし、地元・千葉に戻るルーキー右腕。そのシンデレラ・ストーリーに注目が集まる。
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