10年間支えられた裏方との別れ。
ロッテ大嶺祐太は一本立ちできるか。
12月某日、千葉ロッテでコンディショニングコーチを務める漁野祐太と酒を酌み交わす機会に恵まれた。
こんなに、はしゃいで飲んだのはいつ以来だろうと思えるくらい、その日は酒も進んで、つい悪ノリもしてしまった。
毎日でも、何度でも、こういう席を持ちたいなあと思っていた矢先、漁野から突然、改まった顔で「実は私、来月から四国の方に行くんです。マリーンズは今月で辞めます」と告げられた。
「またか……」
漁野にとっての初仕事は、大嶺祐の入団交渉だった。
実はこの年末、このような別れを、2度経験している。
ひとつは今年、千葉ロッテから戦力外通告を受けて、熊本の社会人野球チーム・鮮ど市場ゴールデンラークスに移ることになった香月良仁、そしてもうひとつが漁野だった。
これが今生の別れになるわけではないが、心を通い合わせた人物と離れ離れになるのはやっぱり切ない。
「まだ年内、時間はありますからまた集まって飲みましょうよ!」と、最後にそう約束し、その日は解散することになった。
漁野が千葉ロッテに籍をおいたのは今からちょうど10年前のことだ。
初仕事は当時、八重山商工の3年生だった大嶺祐太の入団交渉に同席することだった。
「漁野さんがいたから自分もここまで頑張れた」
まだ、右も左も分からない学生だった漁野の隣には当時、監督を務めていたボビー・バレンタインと、彼をこの世界に引き込んだ立花龍司、さらに担当スカウトと球団スタッフが一緒だった。
「浦和にある選手寮に、新人選手と年も近いトレーナーを置いて、選手育成に役立てようということで自分がチームに入ることになりました。その話の流れで石垣島に行くことになったんです」
この日の話を後日、大嶺に振ると彼もこう返した。
「よく覚えていますよ。あの日、漁野さんが来てくれて凄く嬉しかったです。自分がロッテに入るきっかけのひとつにもなりましたから……」
年も近く、同じ“ルーキー”の2人。選手とトレーナーの違いはあれど、大嶺もすぐに打ち解けることができた。
「漁野さんがいたから自分もここまで頑張れたし、自分が寮にいたころは屋上でストレッチを一緒に手伝ってくれたりもしました。本当に良い思い出ですよね」
ときに心を鬼にして指導することもあった。
若手のころはどちらかというとトレーニングが苦手だった大嶺。そんな彼に対し、漁野はときに心を鬼にして指導することもあった。
「漁野さんとは入団したときからの付き合いなんで、もう10年ですか……。自分がプロに入ったときは何も分からない状態だったので漁野さんには色々とお世話になりました。でも、最近、二木(康太)や原(嵩)、成田(翔)なんか若手を見ていると凄く羨ましく感じるときがあるんです。当時のスタッフが何もしてくれなかったわけではないんですけど、今は漁野さんが率先して色々とやってくれている。
もちろん自分たちのときもやってくれてはいましたけど、今はより厳しい言葉で伝えてくれていたり、熱心にトレーニングをさせている。そういうのを見ていると凄く羨ましいなって感じるときがあるんです。自分がそういう時期に、もう少しちゃんと取り組めていれば、今と結果も違ったんじゃないかと思うときがあったので」
プロ10年間で通算26勝はあまりにも物足りない。
もちろん、それが甘えであることは大嶺も承知の上だ。
かつての失敗を、失敗と踏まえた上で、近年はひとり黙々とグラウンドを走り、オフには厳しい言葉を投げかけるトレーナーのもとで、汗を流している。全ては甘えを断ち切るため。彼も必死だ。
入団時の期待値を考えれば、プロ10年間で通算26勝はあまりにも物足りない。
「大嶺祐太はこんなもんじゃないだろう!」は、誰もが叫びたくなることだ。
ただ、歯がゆく感じているのは私を含めた外野ばかりじゃない。その何倍も今、大嶺自身がそれを痛感している。
だからこそ、今年のオフはいつにもまして目の色が違う。
そんな大嶺を見ていると、来季こそやってくれるだろうと期待せずにはいられない。
わずか1勝、防御率6.49から立ち直るために。
2015年は8勝7敗、防御率3.17とローテーションの3本目の柱として、まずまずの結果を残した。しかし、さらなる期待がかかった2016年の今季、大嶺は周囲の期待を大きく裏切った。
勝ち星はわずか1つ。防御率は6.49と大乱調で、5月と8月には2度の登録抹消もあった。「ああ……こんなはずじゃなかった」と誰もが思ったことだろう。もちろん、本人が一番忸怩たる思いを抱えていた。
「CS前の9月くらいから、今年はもう上(一軍)には上がれないだろうなって感じていたので、来年に向けてどうやろうかを自分の中で考えていました。フェニックスに行ってからも、そこで打たれようが、抑えようが関係ない。今、自分がやりたいことをとにかくやろうって感じで……。そのことはコーチにも伝わっていたと、納会のときに言ってもらえたので、このオフはそれを継続していこうという考えでやっています」
不振の原因はコントロールを意識するあまり腕が振れなくなりそれが慢性化。球威も共に落ちていった。
一度染みついた悪癖は容易に取れなかった。
当時の状況を漁野はこう分析する。
「トレーニングと一緒で体は法則的な動きをします。これまでやってきたことを繰り返すようになる。つまりやったことしか出来なくなるんです。無理して変えようとしなければ体がそれに慣れてしまうというのはよくあります」
一度、染みついた悪癖は容易に取れるものではなかった。
現状を打破しようとシーズン中はトレーナーや二軍のピッチングコーチと共に試行錯誤を繰り返した。しかし、一向に良くならない。
夏に一軍昇格を果たしたが、周囲から聞こえてくる声は「完調手前」と言うものばかり。「なぜ? この時期に一軍昇格?」とさえ思ったが、当時のマリーンズ投手陣はブルペン陣に故障者が相次ぎ、猫の手も借りたい状態だったのだ。
どんなに厳しいメニューでも、最後まで練習を。
大嶺に話しかけてもどこか自分の状態に半信半疑。冴えない答えばかりが続いた。そんな1年を、本人はこう振り返っている。
「大雑把でも、怠けた態度でもやっているつもりはなかったんですけど、気持ちの部分で変なところがあったのかなとは今年1年を振り返ったときに思いました。オフにお世話になっているジムの先生からも今年はそういうのがあったんじゃないかと指摘されたので……」
キャンプから3月のオープン戦までは「これはやってくれるだろう」と思えるくらい、上々のスタートを切っていた。それが4月2日の対オリックス戦の勝利から、とうとう1つも勝ちを積み上げられないままだった。
だから今オフは、どんなにきつくても与えられたメニューは最後までこなしてから練習を切り上げようと心に決めた。午前中は球場に来て、長めの走り込み、ロングティー、キャッチボールなどのメニューをこなし、午後はジムへ通って体力トレーニング。オフに入っても濃密な時間を過ごしている。
股関節の柔軟性が出てきたと漁野は太鼓判を押す。
「実際、祐太の体自体は良くなってきていますよ」
この10年間、大嶺の状態を見てきた漁野も太鼓判を押す。
「入団時は下半身、特に股関節の可動域が物凄く硬かったんですけど、それが徐々に改善されてボールに角度をつけるための股関節の柔軟性というものも出てきました。期待していいと思います」(漁野)
このオフは高校時代の投球フォームを、ビデオで何度も見ながら良いときのイメージを膨らませた。
脱力でも腕が振れるような体の使い方を馴染ませる。
「別に高校のころにフォームを戻そうというのではないんです。体の作りもだいぶ変わっていますし、そこを求めるってわけでもない。あくまで今の身体に合った投げ方を模索しながら、高校時代のフォームを確認したっていうだけなんです。今シーズンは自分で腕を振っているつもりでも、周りから見たら全然振れていないって意見が多かった。
逆に自分は、腕を振っているイメージじゃないけど、振れているように見えるイメージで投げられるようにしたいんです。力を入れず7割から8割くらいの力で、ボールは来てるイメージ。そのために今、脱力でも腕が振れるような体の使い方を体に馴染ませているんです」
この秋に参加した宮崎のフェニックスリーグでは少しずつ球の勢いを取り戻した。
ボールがある程度、左右、上下に散るのは大嶺のカラーでもある。躍動感のあるフォームで、「どやっ」と投げる方がずーっと彼らしい。
投球練習後、ブルペン捕手の反応を訊いても悪くない。むしろいい。
来季から背番号は11から30に変更されることに。
来季から背番号が11から30に変更になると球団から告げられた。
球団本部長の林信平は「大嶺の奮起を促すため」とその理由を答えた。
「でも、背番号で野球をするわけではないので……。11って番号は元々好きな番号でしたけど、この世界では結果が出なかったら背番号も変わるのは当たり前。自分の立ち位置も分かっているので、しっかり自覚をもって、これからちゃんとやっていきたいなって思います」
ルーキーの佐々木千隼や酒居知史の加入だけでなく、今年ストッパーを務めた西野勇士が来年から先発に転向、さらに中継ぎの藤岡貴裕も先発復帰を希望している。大嶺にとって厳しい戦いになることは間違いないだろう。
周りの人たちにちょっとずつ恩を返していけたら。
「今は凄く良い感触があります。力を入れないで投げてもボールが来ていると思いますし、球の回転も良くなっているので……。投げる場所がどこになるかは分からないですけど、今年の反省として自分のやりたかったことを貫き通すことができなかったので。だから来年は自分がこうやるんだって意志を強く持ちながら、ぶれずに自分が目指すところをしっかりやろうと思っています」
取材時の表情はとても柔らかかった。オフという時期的なものもあるだろうが力みや角がまるでない、人としての成長も感じさせた。
来年で29歳。取材の最後に彼はこう言った。
「周りの人には恵まれている方だと思うんです。だからその人達にちょっとずつ恩を返していけたらなって思います」
チームを離れる漁野にもはなむけの言葉になると感じた。
(Number)
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ロッテチアが挑戦する「スピード感のあるダンス」、ANNA「笑顔と感動を」
忙しい日々でも「毎朝筋トレ」、ストイックな姿勢見せるチア4年目のANNA
2017年もあの大人気イベントが帰ってくる――。パ・リーグが行う新たなイベントとして大きな注目を集めた「パ・リーグダンスフェスティバル」が大阪市のオリックス劇場にて、1月8日、9日の2日間、開催される。1日のみで行われた今年よりもさらにパワーアップし、2017年は2日間に渡って最高のパフォーマンスを堪能できる。
開催まですでに1か月を切り、各球団のパフォーマンスグループは現在も時間を見つけては練習に励んでおり、本番へ向けた準備が進められている。先日、都内に集結した6球団のパフォーマンスグループへインタビューを行い、球場でのパフォーマンスのことや、私生活のこと、さらには本番への意気込みなどについて本音で語ってもらった。そのインタビューの模様を球団ごとにお届けする。第4弾は千葉ロッテのM☆Splash!!・ANNA。
――最初に所属グループ、お名前、何年目かを教えていただけますか。
「M☆Splash!! 4年目のANNAです」
――パフォーマンスを行う上で最も気を付けていること、意識していることなどはありますか?
「気を付けていること、意識しているのは常に笑顔でお客さん一人一人の目を見ながらパフォーマンスすることを心がけています」
――ビジター応援デーなどで何回か他球場に行かれているかと思うのですが、他の球場で好きな球場はありますか?
「いくつかあるのですが、1つはヤフオクドームで、照明とか天井がルーフオープンしたりする演出にすごく圧倒されたので、1つはヤフオクドームで。もう1つが札幌ドームなのですが、札幌ドームに行ったときに球場グルメがすごくおいしくて、たくさん食べたのを覚えているので(笑)」
目標は楽天チアの“レジェンド”、「私たちにとって憧れ」
――他の球団で気になるパフォーマンスチームはありますか?
「パ・リーグで言うと、ハニーズさん。ハニーズさんは今年のヤフオクドームでのオールスターに行かせていただき、交流もたくさんしているので。そうやって交流したときにたくさん刺激を受けたので、パ・リーグはハニーズさん。セ・リーグだと、私は名古屋出身なのでチアドラさん。小さいころから見ていたので」
――目標にしている人はいますか?
「楽天のAKIさん。12年もやられていて、歴も長く、パフォーマンス面なども含め私たちにとっては憧れですし、レジェンドです(笑) 」
――2回目の出場となるダンスフェスティバル、現在はどんなお気持ちですか?また、去年の感想も教えていただけますか。
「2回目ができることはすごくうれしく思っていて、去年は初めてだったので、どんな感じになるのかと不安もありました。ですが、やってみてすごく楽しくて、楽しんで踊ることができました。たくさんの人に見に来ていただいて、初めて6球団で1つのステージを作る達成感があったので、今年はそれに加えてもっともっとレベルアップして、お客さんにももう1回できたこととか、感謝の気持ちを込めて、練習を積み重ねていければいいかなと思います」
――シーズン中は連戦とかでスケジュール的にも大変だと思うのですが、体調管理とか、美の意識など気にされていることはありますか?
「私は毎朝筋トレをしています。体調管理は手洗いうがいとかですか。体調、体型維持など両面で気にしています」
目標は楽天チアの“レジェンド”、「私たちにとって憧れ」
――ダンスフェスティバルではチームのここを見てほしい。
「私たちのチームはたくさんのジャンルをチャレンジしているので、雰囲気の違ったナンバーを見てもらいたいです」
――ダンスフェスティバルでは自分のここを見てほしいというのは。
「さっきも言ったのですが、パフォーマンスを通して、お客さん、見ている人たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います」
――ちなみにダンスフェスティバルで新しくやることなどってありますか?
「今までにないスピード感のあるダンスにチャレンジしているので、そういうところに注目してほしいです」
――来年のグループの目標、個人の目標などはありますか?
「来年はよりレベルアップして、ファンの皆さんともたくさん感動をともにしていきたいです」
――あなたにとってチアリーディングとは何ですか?
「お客さんにたくさんの笑顔と感動を届けられるパフォーマンスをすることです」
――最後にダンスフェスティバルに向けての意気込みをお願いします。
「その日のために、何日も何日もみんなで遅くまで残って練習しているので、繰り返しになりますが、ダンスフェスティバルをサポートしてくれた方や、いつも応援してくれているみなさんに感謝の気持ちを届けられるように全力で頑張っていきたいと思います」
◇パ・リーグダンスフェスティバル2016-2017 イベント詳細
○日時、場所
2017年1月8日(日) 開場18:00/開演18:30 オリックス劇場(大阪市)
2017年1月9日(祝・月) 開場13:30/開演14:00 オリックス劇場(大阪市)
○出演
北海道日本ハム:ファイターズガール
楽天:東北ゴールデンエンジェルス
埼玉西武:bluelegends
千葉ロッテ:M☆Splash!!
オリックス:BsGirls
福岡ソフトバンク:ハニーズ
○特設サイト
http://app.pacificleague.jp/dancefestival2017/
「パ・リーグ インサイト」編集部●文
ロッテ大嶺祐太は一本立ちできるか。
12月某日、千葉ロッテでコンディショニングコーチを務める漁野祐太と酒を酌み交わす機会に恵まれた。
こんなに、はしゃいで飲んだのはいつ以来だろうと思えるくらい、その日は酒も進んで、つい悪ノリもしてしまった。
毎日でも、何度でも、こういう席を持ちたいなあと思っていた矢先、漁野から突然、改まった顔で「実は私、来月から四国の方に行くんです。マリーンズは今月で辞めます」と告げられた。
「またか……」
漁野にとっての初仕事は、大嶺祐の入団交渉だった。
実はこの年末、このような別れを、2度経験している。
ひとつは今年、千葉ロッテから戦力外通告を受けて、熊本の社会人野球チーム・鮮ど市場ゴールデンラークスに移ることになった香月良仁、そしてもうひとつが漁野だった。
これが今生の別れになるわけではないが、心を通い合わせた人物と離れ離れになるのはやっぱり切ない。
「まだ年内、時間はありますからまた集まって飲みましょうよ!」と、最後にそう約束し、その日は解散することになった。
漁野が千葉ロッテに籍をおいたのは今からちょうど10年前のことだ。
初仕事は当時、八重山商工の3年生だった大嶺祐太の入団交渉に同席することだった。
「漁野さんがいたから自分もここまで頑張れた」
まだ、右も左も分からない学生だった漁野の隣には当時、監督を務めていたボビー・バレンタインと、彼をこの世界に引き込んだ立花龍司、さらに担当スカウトと球団スタッフが一緒だった。
「浦和にある選手寮に、新人選手と年も近いトレーナーを置いて、選手育成に役立てようということで自分がチームに入ることになりました。その話の流れで石垣島に行くことになったんです」
この日の話を後日、大嶺に振ると彼もこう返した。
「よく覚えていますよ。あの日、漁野さんが来てくれて凄く嬉しかったです。自分がロッテに入るきっかけのひとつにもなりましたから……」
年も近く、同じ“ルーキー”の2人。選手とトレーナーの違いはあれど、大嶺もすぐに打ち解けることができた。
「漁野さんがいたから自分もここまで頑張れたし、自分が寮にいたころは屋上でストレッチを一緒に手伝ってくれたりもしました。本当に良い思い出ですよね」
ときに心を鬼にして指導することもあった。
若手のころはどちらかというとトレーニングが苦手だった大嶺。そんな彼に対し、漁野はときに心を鬼にして指導することもあった。
「漁野さんとは入団したときからの付き合いなんで、もう10年ですか……。自分がプロに入ったときは何も分からない状態だったので漁野さんには色々とお世話になりました。でも、最近、二木(康太)や原(嵩)、成田(翔)なんか若手を見ていると凄く羨ましく感じるときがあるんです。当時のスタッフが何もしてくれなかったわけではないんですけど、今は漁野さんが率先して色々とやってくれている。
もちろん自分たちのときもやってくれてはいましたけど、今はより厳しい言葉で伝えてくれていたり、熱心にトレーニングをさせている。そういうのを見ていると凄く羨ましいなって感じるときがあるんです。自分がそういう時期に、もう少しちゃんと取り組めていれば、今と結果も違ったんじゃないかと思うときがあったので」
プロ10年間で通算26勝はあまりにも物足りない。
もちろん、それが甘えであることは大嶺も承知の上だ。
かつての失敗を、失敗と踏まえた上で、近年はひとり黙々とグラウンドを走り、オフには厳しい言葉を投げかけるトレーナーのもとで、汗を流している。全ては甘えを断ち切るため。彼も必死だ。
入団時の期待値を考えれば、プロ10年間で通算26勝はあまりにも物足りない。
「大嶺祐太はこんなもんじゃないだろう!」は、誰もが叫びたくなることだ。
ただ、歯がゆく感じているのは私を含めた外野ばかりじゃない。その何倍も今、大嶺自身がそれを痛感している。
だからこそ、今年のオフはいつにもまして目の色が違う。
そんな大嶺を見ていると、来季こそやってくれるだろうと期待せずにはいられない。
わずか1勝、防御率6.49から立ち直るために。
2015年は8勝7敗、防御率3.17とローテーションの3本目の柱として、まずまずの結果を残した。しかし、さらなる期待がかかった2016年の今季、大嶺は周囲の期待を大きく裏切った。
勝ち星はわずか1つ。防御率は6.49と大乱調で、5月と8月には2度の登録抹消もあった。「ああ……こんなはずじゃなかった」と誰もが思ったことだろう。もちろん、本人が一番忸怩たる思いを抱えていた。
「CS前の9月くらいから、今年はもう上(一軍)には上がれないだろうなって感じていたので、来年に向けてどうやろうかを自分の中で考えていました。フェニックスに行ってからも、そこで打たれようが、抑えようが関係ない。今、自分がやりたいことをとにかくやろうって感じで……。そのことはコーチにも伝わっていたと、納会のときに言ってもらえたので、このオフはそれを継続していこうという考えでやっています」
不振の原因はコントロールを意識するあまり腕が振れなくなりそれが慢性化。球威も共に落ちていった。
一度染みついた悪癖は容易に取れなかった。
当時の状況を漁野はこう分析する。
「トレーニングと一緒で体は法則的な動きをします。これまでやってきたことを繰り返すようになる。つまりやったことしか出来なくなるんです。無理して変えようとしなければ体がそれに慣れてしまうというのはよくあります」
一度、染みついた悪癖は容易に取れるものではなかった。
現状を打破しようとシーズン中はトレーナーや二軍のピッチングコーチと共に試行錯誤を繰り返した。しかし、一向に良くならない。
夏に一軍昇格を果たしたが、周囲から聞こえてくる声は「完調手前」と言うものばかり。「なぜ? この時期に一軍昇格?」とさえ思ったが、当時のマリーンズ投手陣はブルペン陣に故障者が相次ぎ、猫の手も借りたい状態だったのだ。
どんなに厳しいメニューでも、最後まで練習を。
大嶺に話しかけてもどこか自分の状態に半信半疑。冴えない答えばかりが続いた。そんな1年を、本人はこう振り返っている。
「大雑把でも、怠けた態度でもやっているつもりはなかったんですけど、気持ちの部分で変なところがあったのかなとは今年1年を振り返ったときに思いました。オフにお世話になっているジムの先生からも今年はそういうのがあったんじゃないかと指摘されたので……」
キャンプから3月のオープン戦までは「これはやってくれるだろう」と思えるくらい、上々のスタートを切っていた。それが4月2日の対オリックス戦の勝利から、とうとう1つも勝ちを積み上げられないままだった。
だから今オフは、どんなにきつくても与えられたメニューは最後までこなしてから練習を切り上げようと心に決めた。午前中は球場に来て、長めの走り込み、ロングティー、キャッチボールなどのメニューをこなし、午後はジムへ通って体力トレーニング。オフに入っても濃密な時間を過ごしている。
股関節の柔軟性が出てきたと漁野は太鼓判を押す。
「実際、祐太の体自体は良くなってきていますよ」
この10年間、大嶺の状態を見てきた漁野も太鼓判を押す。
「入団時は下半身、特に股関節の可動域が物凄く硬かったんですけど、それが徐々に改善されてボールに角度をつけるための股関節の柔軟性というものも出てきました。期待していいと思います」(漁野)
このオフは高校時代の投球フォームを、ビデオで何度も見ながら良いときのイメージを膨らませた。
脱力でも腕が振れるような体の使い方を馴染ませる。
「別に高校のころにフォームを戻そうというのではないんです。体の作りもだいぶ変わっていますし、そこを求めるってわけでもない。あくまで今の身体に合った投げ方を模索しながら、高校時代のフォームを確認したっていうだけなんです。今シーズンは自分で腕を振っているつもりでも、周りから見たら全然振れていないって意見が多かった。
逆に自分は、腕を振っているイメージじゃないけど、振れているように見えるイメージで投げられるようにしたいんです。力を入れず7割から8割くらいの力で、ボールは来てるイメージ。そのために今、脱力でも腕が振れるような体の使い方を体に馴染ませているんです」
この秋に参加した宮崎のフェニックスリーグでは少しずつ球の勢いを取り戻した。
ボールがある程度、左右、上下に散るのは大嶺のカラーでもある。躍動感のあるフォームで、「どやっ」と投げる方がずーっと彼らしい。
投球練習後、ブルペン捕手の反応を訊いても悪くない。むしろいい。
来季から背番号は11から30に変更されることに。
来季から背番号が11から30に変更になると球団から告げられた。
球団本部長の林信平は「大嶺の奮起を促すため」とその理由を答えた。
「でも、背番号で野球をするわけではないので……。11って番号は元々好きな番号でしたけど、この世界では結果が出なかったら背番号も変わるのは当たり前。自分の立ち位置も分かっているので、しっかり自覚をもって、これからちゃんとやっていきたいなって思います」
ルーキーの佐々木千隼や酒居知史の加入だけでなく、今年ストッパーを務めた西野勇士が来年から先発に転向、さらに中継ぎの藤岡貴裕も先発復帰を希望している。大嶺にとって厳しい戦いになることは間違いないだろう。
周りの人たちにちょっとずつ恩を返していけたら。
「今は凄く良い感触があります。力を入れないで投げてもボールが来ていると思いますし、球の回転も良くなっているので……。投げる場所がどこになるかは分からないですけど、今年の反省として自分のやりたかったことを貫き通すことができなかったので。だから来年は自分がこうやるんだって意志を強く持ちながら、ぶれずに自分が目指すところをしっかりやろうと思っています」
取材時の表情はとても柔らかかった。オフという時期的なものもあるだろうが力みや角がまるでない、人としての成長も感じさせた。
来年で29歳。取材の最後に彼はこう言った。
「周りの人には恵まれている方だと思うんです。だからその人達にちょっとずつ恩を返していけたらなって思います」
チームを離れる漁野にもはなむけの言葉になると感じた。
(Number)
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ロッテチアが挑戦する「スピード感のあるダンス」、ANNA「笑顔と感動を」
忙しい日々でも「毎朝筋トレ」、ストイックな姿勢見せるチア4年目のANNA
2017年もあの大人気イベントが帰ってくる――。パ・リーグが行う新たなイベントとして大きな注目を集めた「パ・リーグダンスフェスティバル」が大阪市のオリックス劇場にて、1月8日、9日の2日間、開催される。1日のみで行われた今年よりもさらにパワーアップし、2017年は2日間に渡って最高のパフォーマンスを堪能できる。
開催まですでに1か月を切り、各球団のパフォーマンスグループは現在も時間を見つけては練習に励んでおり、本番へ向けた準備が進められている。先日、都内に集結した6球団のパフォーマンスグループへインタビューを行い、球場でのパフォーマンスのことや、私生活のこと、さらには本番への意気込みなどについて本音で語ってもらった。そのインタビューの模様を球団ごとにお届けする。第4弾は千葉ロッテのM☆Splash!!・ANNA。
――最初に所属グループ、お名前、何年目かを教えていただけますか。
「M☆Splash!! 4年目のANNAです」
――パフォーマンスを行う上で最も気を付けていること、意識していることなどはありますか?
「気を付けていること、意識しているのは常に笑顔でお客さん一人一人の目を見ながらパフォーマンスすることを心がけています」
――ビジター応援デーなどで何回か他球場に行かれているかと思うのですが、他の球場で好きな球場はありますか?
「いくつかあるのですが、1つはヤフオクドームで、照明とか天井がルーフオープンしたりする演出にすごく圧倒されたので、1つはヤフオクドームで。もう1つが札幌ドームなのですが、札幌ドームに行ったときに球場グルメがすごくおいしくて、たくさん食べたのを覚えているので(笑)」
目標は楽天チアの“レジェンド”、「私たちにとって憧れ」
――他の球団で気になるパフォーマンスチームはありますか?
「パ・リーグで言うと、ハニーズさん。ハニーズさんは今年のヤフオクドームでのオールスターに行かせていただき、交流もたくさんしているので。そうやって交流したときにたくさん刺激を受けたので、パ・リーグはハニーズさん。セ・リーグだと、私は名古屋出身なのでチアドラさん。小さいころから見ていたので」
――目標にしている人はいますか?
「楽天のAKIさん。12年もやられていて、歴も長く、パフォーマンス面なども含め私たちにとっては憧れですし、レジェンドです(笑) 」
――2回目の出場となるダンスフェスティバル、現在はどんなお気持ちですか?また、去年の感想も教えていただけますか。
「2回目ができることはすごくうれしく思っていて、去年は初めてだったので、どんな感じになるのかと不安もありました。ですが、やってみてすごく楽しくて、楽しんで踊ることができました。たくさんの人に見に来ていただいて、初めて6球団で1つのステージを作る達成感があったので、今年はそれに加えてもっともっとレベルアップして、お客さんにももう1回できたこととか、感謝の気持ちを込めて、練習を積み重ねていければいいかなと思います」
――シーズン中は連戦とかでスケジュール的にも大変だと思うのですが、体調管理とか、美の意識など気にされていることはありますか?
「私は毎朝筋トレをしています。体調管理は手洗いうがいとかですか。体調、体型維持など両面で気にしています」
目標は楽天チアの“レジェンド”、「私たちにとって憧れ」
――ダンスフェスティバルではチームのここを見てほしい。
「私たちのチームはたくさんのジャンルをチャレンジしているので、雰囲気の違ったナンバーを見てもらいたいです」
――ダンスフェスティバルでは自分のここを見てほしいというのは。
「さっきも言ったのですが、パフォーマンスを通して、お客さん、見ている人たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います」
――ちなみにダンスフェスティバルで新しくやることなどってありますか?
「今までにないスピード感のあるダンスにチャレンジしているので、そういうところに注目してほしいです」
――来年のグループの目標、個人の目標などはありますか?
「来年はよりレベルアップして、ファンの皆さんともたくさん感動をともにしていきたいです」
――あなたにとってチアリーディングとは何ですか?
「お客さんにたくさんの笑顔と感動を届けられるパフォーマンスをすることです」
――最後にダンスフェスティバルに向けての意気込みをお願いします。
「その日のために、何日も何日もみんなで遅くまで残って練習しているので、繰り返しになりますが、ダンスフェスティバルをサポートしてくれた方や、いつも応援してくれているみなさんに感謝の気持ちを届けられるように全力で頑張っていきたいと思います」
◇パ・リーグダンスフェスティバル2016-2017 イベント詳細
○日時、場所
2017年1月8日(日) 開場18:00/開演18:30 オリックス劇場(大阪市)
2017年1月9日(祝・月) 開場13:30/開演14:00 オリックス劇場(大阪市)
○出演
北海道日本ハム:ファイターズガール
楽天:東北ゴールデンエンジェルス
埼玉西武:bluelegends
千葉ロッテ:M☆Splash!!
オリックス:BsGirls
福岡ソフトバンク:ハニーズ
○特設サイト
http://app.pacificleague.jp/dancefestival2017/
「パ・リーグ インサイト」編集部●文
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