宮城県栄養士会 食のコラム

「食と健康」についての情報発信!!

食べものの温度

2011年08月15日 | 食・レシピ

 私たちが食事をいただくときには、食べものの色彩の美しさや量、香りなど視覚や嗅覚で確認しながら口に運び、美味しさを感じています。
 その際には、冷たさやあたたかさといった食べものの温度も必ず確認していることでしょう。  真夏にはそうめんやすいか、麦茶など、よく冷えた食べものが心を和ませてくれます。
 日本には季節や気温などにあわせて食べごろの温度を大切にしてきた食文化があります。
雪が降ってとても寒かった震災の時、あたたかい食べものを口にして、心がほっとした、そんな印象的な食べものが皆さんの中にもあるのではないでしょうか。

 震災の翌日、院内で調理器具をフル回転させてあつあつのカレーを提供したとき、ある先生が食べ終わった後に「ようやく「人間」に戻った気がする」とおっしゃったのが印象に残っています。Ma_091 ライフラインが十分でなかったにしても、食べものの温度ってこんなにも人の心に響くものだったのかと改めて感じた言葉でした。

 食事で心身ともに満足するために、食べものの温度は相手を思いやる気持ちを感じとることができる、とても大切な要素の一つなのではないでしょうか。そしてそれはお互いをいたわりあうことができる、日本人の心の豊かさにつながっているのだと思います。


被災を通して思うこと(病院)

2011年08月01日 | 健康・病気

   震災から五ヶ月が経とうとしています。被災されたみなさまには、心よりお見舞い申し上げます。
   現在の病院給食は、夏本番を迎え衛生管理に十分留意しながら、治療の一環としてのおいしい食事の提供に努めております。1033
 大震災当日の夕食は献立変更を余儀なくされ、普段はエレベーターで行う配膳も、厨房スタッフの他、看護師、技師、事務の協力を得て、廊下、階段と列をなし、お膳をひとつずつ手渡ししながら、無事患者さまに食事を提供することができました。その後は、アルファ化米やレトルトのお粥、パンの缶詰、ペットボトル入りの水などの非常食に始まり、段階的なライフラインの復旧と食材流通の改善に伴い、その都度献立を変更し、不足するビタミンやミネラルを強化した食品を使用するなど、最善の食事提供を目指す日々が続きました。
 また、免疫能が低下している患者さまに安心して召し上がっていただけるよう、ディスポーザブルの食器を使用しました。震災の約一ヶ月後からは通常の患者さま個々の病態に合った食事、食欲不振や食物アレルギーをお持ちの患者さまへの細やかな個別対応が可能となりました。二ヶ月を過ぎた頃には選択メニューや行事食も以前と同様に実施してきました。

 余震が続き、毎日めまぐるしく状況が変わる中、お互いに声をかけ合うことで生まれる安心感と勇気。相手を思いやる、そんな当たり前だけれども大切なことを改めて実感する機会となりました。各職種の専門性を高めるのと同時に、情報を共有し密な連携をとることが患者さまに安全な医療を提供する基盤となります。人と人との繋がり、心と心の触れあい、いま大事にしていきたいことがはっきりしました。
これからも、目の前にいらっしゃる人に、人として、管理栄養士としてできることをしていきたいです。そして、被災された方々に心を寄せ続けていくことが必要なのではと思います。
 一日も早い復興を願って。