私たちが食事をいただくときには、食べものの色彩の美しさや量、香りなど視覚や嗅覚で確認しながら口に運び、美味しさを感じています。
その際には、冷たさやあたたかさといった食べものの温度も必ず確認していることでしょう。 真夏にはそうめんやすいか、麦茶など、よく冷えた食べものが心を和ませてくれます。
日本には季節や気温などにあわせて食べごろの温度を大切にしてきた食文化があります。
雪が降ってとても寒かった震災の時、あたたかい食べものを口にして、心がほっとした、そんな印象的な食べものが皆さんの中にもあるのではないでしょうか。
震災の翌日、院内で調理器具をフル回転させてあつあつのカレーを提供したとき、ある先生が食べ終わった後に「ようやく「人間」に戻った気がする」とおっしゃったのが印象に残っています。 ライフラインが十分でなかったにしても、食べものの温度ってこんなにも人の心に響くものだったのかと改めて感じた言葉でした。
食事で心身ともに満足するために、食べものの温度は相手を思いやる気持ちを感じとることができる、とても大切な要素の一つなのではないでしょうか。そしてそれはお互いをいたわりあうことができる、日本人の心の豊かさにつながっているのだと思います。