『九条新党宣言』(天木直人 筆坂秀世 展望社)
天木直人氏については気になっていながら、著書を手にする機会はなかった。一過性の注目を利用する出版業界のやり方を敬遠してしまうからだ。もしかしたらそれで見逃してしまう良書も少なくないのかもしれない。
数年前、参院選に“九条ネット”という団体の一員で立候補したのを覚えている(得票数が足りず一人も当選しなかったが)。本書は“九条ネット”設立に向けた〈宣言〉だったのだろう。いまさらの感はあるが、元共産党幹部との対談という体裁も面白そうだったので手にしてみた。
二人の言論を初めて目にするゆえ、興味は維持できた。彼らの主著(『さらば外務省』『日本共産党』)を読んだ後なら、途中で飽きてしまったかもしれない。何故かといえば、コンセプトがいまいちわからない。まるで『共産党宣言』みたいな題名にしておきながら、実際にどういう党を作るとか作りたいとかいう案や宣言はほとんどない。ほぼ一貫して二人の問題意識を表明し合う内容だった。
たまに連鎖的に話が発展したり、批判的に対案を示すことはあるが、概ねはそれぞれの表明であり持論の展開に終始する。対談という形式が、読みやすさ取っつきやすさを生んでいるのかもしれないが、ときに愚痴めいてくる場合もあって、「誰と話しているんだ?」という疑問が生じた。対談というより独り言みたいなものが少なくなかったのである。
とはいえ、二人のスタンス、考えには賛同せざるを得ない。職を賭してイラク戦争に反対したのを思えば、襟を正したい気持ちにもなってくる。“我ら言葉のほかに失うものなし”という彼らにこそ、ぜひとも国政に出てもらいたいものである。民主党の誘いを蹴るくらい潔癖な天木氏が、今後どのような政治活動を行っていくのか、注目していきたい(おこがましいが、欲をいえばもう少しコミュニズムについて学習してもらいたい、という感想も持った)。

天木直人氏については気になっていながら、著書を手にする機会はなかった。一過性の注目を利用する出版業界のやり方を敬遠してしまうからだ。もしかしたらそれで見逃してしまう良書も少なくないのかもしれない。
数年前、参院選に“九条ネット”という団体の一員で立候補したのを覚えている(得票数が足りず一人も当選しなかったが)。本書は“九条ネット”設立に向けた〈宣言〉だったのだろう。いまさらの感はあるが、元共産党幹部との対談という体裁も面白そうだったので手にしてみた。
二人の言論を初めて目にするゆえ、興味は維持できた。彼らの主著(『さらば外務省』『日本共産党』)を読んだ後なら、途中で飽きてしまったかもしれない。何故かといえば、コンセプトがいまいちわからない。まるで『共産党宣言』みたいな題名にしておきながら、実際にどういう党を作るとか作りたいとかいう案や宣言はほとんどない。ほぼ一貫して二人の問題意識を表明し合う内容だった。
たまに連鎖的に話が発展したり、批判的に対案を示すことはあるが、概ねはそれぞれの表明であり持論の展開に終始する。対談という形式が、読みやすさ取っつきやすさを生んでいるのかもしれないが、ときに愚痴めいてくる場合もあって、「誰と話しているんだ?」という疑問が生じた。対談というより独り言みたいなものが少なくなかったのである。
とはいえ、二人のスタンス、考えには賛同せざるを得ない。職を賭してイラク戦争に反対したのを思えば、襟を正したい気持ちにもなってくる。“我ら言葉のほかに失うものなし”という彼らにこそ、ぜひとも国政に出てもらいたいものである。民主党の誘いを蹴るくらい潔癖な天木氏が、今後どのような政治活動を行っていくのか、注目していきたい(おこがましいが、欲をいえばもう少しコミュニズムについて学習してもらいたい、という感想も持った)。
