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よい子の読書感想文 

2005年から、エッセイ風に綴っています。

読書感想文251

2010-02-28 23:52:00 | 純文学
『羊をめぐる冒険(上・下)』(村上春樹 講談社文庫)

 このブログに取り上げるのは二度目。いままで二度目のものはコメント欄に書いていたが、自分で読み返すのに不便なので、新たにアップすることにした。

「君たちが六0年代の後半に行った、あるいは行おうとした意識の拡大化は、それが個に根ざしていたが故に完全な失敗に終った。つまり個の質量が変わらないのに、意識だけを拡大していけばその究極にあるのは絶望でしかない。」

「人間には欲望とプライドの中間点のようなものが必ずある。」

「世界に対して文句があるんなら子供なんて作るな。」

 やはり前回と私の感じ方は変わっている。上に引用した文章に、以前はそれほどひっかからなかったのだが。……共通するのは、語り手が“一般論の国の王様”だという印象だけだ。
 同時進行で読んでいる『モラトリアム人間の心理構造』(小此木啓吾著)は、70年代後半の若者を評して以下のようにいっている。
《誰かがつくったこのような世界に、そのままのみこまれてしまうことにはためらいと内的な抵抗があるが、かといって、自分たち世代が、それに代る新しい世界を創造してゆく意欲はない。そこで、やむなく、既存の世界の中に、あるいは現実の国家・社会の中に、客観的にはとりこまれながら、主観的には積極的な同一化はせず、できる限り自己中心志向の領域を侵害されない範囲で、表面は円満に、順調にやってゆこうとしている。》

 私が前から感じていた村上春樹に関する微かな不安のようなものは、読者のモラトリアムな在り方を、作中人物が代弁し援護してしまうかのような錯覚に由来しているようだ。
 著者のスタンスと、気楽に活字を追うだけの読者には、“宿命的”な乖離が生じているはずなのに。



読書感想文250

2010-02-11 16:25:00 | ガイドブック・ハウツー
『貸金業務取扱主任者 直前○×問題集』(東京リーガルマインド編著)

 21年度から新たな国家資格として定められた貸金業務取扱主任者。私は貸金業界の人間ではないし、金融の分野に興味があるわけでもない。ただ、初年度は一定数の合格者を出すために、合格基準が低めだという(他の国家資格もそうらしい)。それなら挑戦してみようと思ったのである。
 試験は2月下旬。思い立って一冊目の問題集を買ったのが12月下旬。しかしこれが使いにくく挫折しそうになり、2月に入るころ本書を買った。
 アマゾンのレビューには、ある程度勉強した人の仕上げには良いと書かれている。私は“ある程度”も勉強していないが、時期的に直前であるので、本書の気楽そうな編集方法に賭けてみた。
 見開き式。左に問題、右に解答と解説が付されている。これは使いやすい。前に使ったやつは解答が別冊で、面倒くさかったのだ。
 と、本書のメリットは使いやすさ、くらいであろう。おかげで1週間で4周し、なんとなくわかったような達成感をいま感じている。
 逆に苦言を呈すべき部分は多数ある。まずミスプリントがいくつか。あと、手抜き問題が多すぎる。問題が条文の丸写しで、解答は勿論○、解説もただ条文を載せるだけ、つまり見開き左右が同一文章、という問題が多数ある。あるいは条文の最後の言い回しだけを不自然に変えて、それで×とする問題。日本語の流れとして変だから、条文を知らなくても×とわかってしまう。
 まあ初めて接する貸金業法や民法なので、条文に接する良い機会になり、こうした欠点も役には立った。実戦力がついたかどうかはわからないが。