サダム・フセイン前イラク大統領が、イラクの国内法廷で死刑判決を受けました。今後、上訴審に進み、そこでも同じ判決が出れば、判決は確定し、刑の執行を待つ身になるものと思われます(報道)。
私は今回の判決を、少し残念に思っています。理由は二つあります。一つは、こうした非人道的な独裁者に死刑判決を出すことが、今後国際社会の一つのトレンドになると、無慈悲な独裁者が相次いで政権を握るような多くの開発途上国、紛争国で、法の名を借りた際限のない報復合戦のようなものが、国際社会の中でも容認されるようになっていくような気がするからです。
もう一つの理由は、この判決を北朝鮮やミャンマー、スーダン等々の政治指導者たちが見ていて、政権から滑り落ちたらオシマイだと、ますます政権に固執して独裁化を進めるようになり、結果的にそうした国の国内状況と国際情勢が、さらに悪化していくような気がするからです。
実は、国際社会には、「国際刑事裁判所(ICC, The International Criminal Court)」という、国際刑事法を中立的な立場から適用する国際裁判所が2002年に設置されており、既にいくつかの事案について審理を始めています(公式サイト/解説/Wikipedia)。現時点で、いかなる国も、このICCの規程に同意すれば、いつでも事案を持ち込むことができる用意が整っています。
ただ、イラクはICCの規程に同意していませんし、審理対象がICC設立以前に起きた事案だったため、今回は国内裁判所で審理することになったのだろうと思います。ICCには、完全に中立的な司法機関としての特徴が備わっているため、理論上は、テロリスト支援国家がこれに加盟して、対テロ戦争を展開する他の加盟国の国民を訴えるようなこともできます(自らに有利な判決を導くことはできませんが、理論上、訴訟を起こすことが可能だということです)。こうした「両刃の剣」のような性質を持っているため、アメリカなどは当面参加しないようですし、この点が加盟国をあまり増やせない理由だとされています。
しかし、こうした問題点は、今後ICCが適用できる数々の国際刑事関連条約を審議・採択したり、ICCで判例を蓄積したりして、時間と手間はかかると思いますが、徐々に克服していくことは可能ではないかと思います。いろいろ問題点はありますが、今後はICCをもっと活用していくことが望まれます。ちなみにICCの最高刑は終身禁固刑です。
今回のフセイン裁判の結果は、ちょっと複雑な気持ちにさせられました。
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