
前回六経弁証について講義しましたが、何故日本漢方と中医の六経弁証について説明したか
ということをもう一度お話します。
傷寒は本来、陽明一太陽一少陽の流れになっていますが、 ほとんどの場合、陽明は潜伏期です。
たまに陽明をちょっと残したまま、太陽と陽明の合病の形として発症する場合もあります。
これで何も考えないで良いのです。何故この間いろいろお話ししたかと言うと、
中医の教科書を見る方もいれば、古方の教科書を見る方もいるからです。
この前話したように陽明 一太陽一少陽という病期の順番でそのまま臓腑の場所も
みんな決まってしまうのです。 陽明は肺と大腸と脾と胃です。
太腸は心と小腸と腎と膀胱です。厥陰は肝と胆と三焦と一応心包も入ります。
ここに症状を出すので何の矛盾もないのです。全部このままで良いのです。
ところが傷寒論や素問をそのまま受けてしまった現代中医学の教科書があり、
逆に傷寒論や素問の前文なんかを無視してしまって、現象面だけを見て発達して来た古方の
表現がありますが、それぞれの誤解があったために言っていることが
本来の物と違ってしまっているということです。
それらを読んだ時、陽明一太陽一少陽の考え方が別の言葉で書かれており、
混乱してしまうのではないかと思います。
本来は陽明は潜伏期で、太陽、少陽の順なのですが、太陽と陽明が同時に発症する時に、
太陽のほうが症状が強いから、陽明が遅れるように見えてしまうのです。
その為に素問も傷寒論も、太陽一陽明一少陽と書いているのですね。
何故、間違って、太陽一陽明一少陽と書いてあると言えるかということを説明します。
傷寒7,8日とか、ぐるぐる回る病期のことをお話しましたね。例えば傷寒4日と言ったら、
一回りして、この順番ならもう一度太陽に来て5日日は陽明に来ることになります。
ところが、傷寒論なんかに出てくる条文を克明に読んでいけば分かってくるのですが、
一めぐり目は太陽一陽明一少陽と書いてあるのに、二めぐり目以後は、
実は陽明一太陽一少陽の順番になつているのです。
だから傷寒7、8日日と言ったら三めぐり目で陽明から太陽に向かっているとき、
あるいは更にそれが深くなって、太陰から少陰に向かっている時などを指しているのです。
傷寒論も素問も一めぐり目が太陽一陽明一少陽と書かれており、
陽明と太陽が逆になっているのです。
ところが、それをそのまま中医学は受けているものですから、
太陽、陽明、少陽はこの位置を指しているのです。
その付近で病気の時期と病気の場所がちょっと混乱しているのです。
古方の方は、太陽と陽明の合病として発症するのは別として、
同じことを太陽病から順番に見ていって、太陽一少陽 一陽明とします。
患者さんを素直に見ていくと本来そうなってしまいます。
ところが陽明の潜伏期一太陽の付近で陽明の症状を残していますが、
この陽明の肺や大腸などを二めぐり日の陽明の位置に入れられないものですから、
経絡を無視して、少陽の位置に入れてしまったのですね。
だから同じ少陽という言葉でありながら、古方の方は臓腑経絡を無視します。
始めから古方は臓腑経絡を無視せざるを得なくなるのはその為なのです。
古方で臓腑学説を口にするのは寺沢先生だけです。
他の古方の大家の方々で臓腑と言うのは空理空論だとまで言う人がいますが、
最初から少陽のところで混乱してしまっていますから臓腑経絡を言うと
理論が破綻してしまうのです。
寺沢先生の本には立派に臓腑学説を入れていますね。
私が「臓腑学説を入れたんですね。」と言ったら、
「いやー、臓腑を無視したら腎気丸も清肺湯も抑肝散も使えないよ。」と言っていました。
やっぱり彼は教授になるぐらいあって偉いですね。要するにこういう理由があって、
中医が言っているのは、陽明、太陽の順番が逆になっており、
病期の流れがちょっとおかしいのです。
古方の言っているのは少陽とか陽明とか言いながら指しているところが違っています。
二まわり目の陽明に少陽の一部を含めてしまったりしているのです。この話をわざわざ
した理由は、僕の話と僕のテキストだけでものを考えるときはいらないのですが、
でもやっぱり、診療をやっていく時に、この病気は他の先生はどういう考えで、
どういう処方をし、どういう治療をするのかなと思って読みたくなりますよね。
読みたくなったときに本に書かれていることが、中医の考え方で書かれているのか、
古方の考えで書かれているのか、そこをきちんと区別して読まなかったら
混乱してしまうと言うことです。その為の話ですが、
本来は陽明に始まって太陽、少陽 又陽明となります。
古典は膨大ですから読むのは大変ですが、暇のある方は読んでください。
なぞ解きみたいで結構面白いです。
第6回「札幌下田塾」講義録
♦太陰病
太陰病は三陰病の最初の段階で病態は主に脾(消化器系)の機能低下と寒証です。
身体が冷え腹満して時に痛み、消化吸収の機能が低下して下痢、嘔吐、食欲不振があります。
口渇はなく脉は沈で弱いです。太陰病は虚寒証に属するので治法は温補で、
絶対に攻下してはならない。
太陰湯は脾に病変があります。したがって胃に病変がある陽明病とは表裏の関係にあります。
しかし陽明病は実熱証、太陰病は虚寒証であるから病像は全く正反対で、
従って治法も陽明病(脇証)の攻下に対し太陰病は温補と全く異なります。
http://chinese-kampo.com/disease/sho-un/shu0005.html
太陰病は三陰病の最初の段階で病態は主に脾(消化器系)の機能低下と寒証です。
身体が冷え腹満して時に痛み、消化吸収の機能が低下して下痢、嘔吐、食欲不振があります。
口渇はなく脉は沈で弱いです。太陰病は虚寒証に属するので治法は温補で、
絶対に攻下してはならない。
太陰湯は脾に病変があります。したがって胃に病変がある陽明病とは表裏の関係にあります。
しかし陽明病は実熱証、太陰病は虚寒証であるから病像は全く正反対で、
従って治法も陽明病(脇証)の攻下に対し太陰病は温補と全く異なります。
http://chinese-kampo.com/disease/sho-un/shu0005.html