
渋谷のセルリアンタワーに初めて泊る。そしてニューヨークシティバレエを見に行く。ニックはバレエが好きなので、2人で見に行く楽しみがある。
このさいだから、マチネもソワレも見ようと言う。NYCBの代表作、全作一気に見る! これって海外公演ならではよね!
シンフォニーインC(ビゼー)の素晴らしさ。そして、弦楽セレナーデのこの世のものとも思われない美しさ。
ニックが昔、お母さんから聞いた長いジョーク。
ストーククラブというレストランがマンハッタンにあるでしょ。
(今はもうない。)
一人のビジネスマンが、ある日ランチをしに来たら、店の前にお年を召した尼僧が立って、看板を見上げてたの。
「シスターどうかなさいましたか?」と聞く紳士に、シスターはこう聞き返したのよ。
「ストーク(コウノトリ)クラブとありますが、ここはもしや身寄りのない子供たちの施設でござんしょうか?」
「いやいや、シスター。ここは有名なレストランですよ。ご存知なかった⁉ ちょうど私も一人で、話し相手が欲しかったところです。もしよろしければ、ランチにご招待させて下さい。物は試しと言いますからな。」
「まあまあ!思いがけないこと。なんてご親切な方でしょう。ではお言葉に甘えて、物は試し、ですわね。」
というわけで、シスターとビジネスマンは、昼時で混み合うテーブルに着いてメニューを開いたの。そしたらシスターがまたこんなことを聞くのよ。
「ここに載ってますマルティナイという飲み物、これは一体どのようなものでござんしょう?」
「シスター! いやはやこれもご存知ないとは⁉ こりゃ私のようなビジネスマンが、ランチやディナーの前に頂く有名な飲み物ですよ。一つご一緒にいかがです?物は試しに?」
「よござんす、こうなったら何でも頂きますわ、物は試しに。」
ビジネスマンは、ウェイターを呼んで、
「こちらのシスターと僕に、マルティナイを一杯ずつ」と注文してウインクした。
ウェイターは首を傾げながら、バーテンダーのところに来て伝えた。
「マルティナイ二つ、ですってさ。何だかわかりますか?」
「ああわかるとも。またあのイカれたシスターが来てんだろうよ。」